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万年樹の森のモンスターと仲よくしよう!
サカモト一派
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サカモトは特訓が済むといつも通り自室に女を連れ込む。
「全く、この世界の奴らは屑ばかりだ。弱音ばかりで、守られることしか考えていない」
事が済むとお気に入りの女たちに愚痴る。
「あなたが居て私たちはとても嬉しいです」
女たちは貴族の娘ばかりで器量良し。それが数人集まれば花畑のような鮮やかさを彩る。
「お前たちは安心しろ。この俺が守ってやる」
サカモトは遠慮の無い手つきで娘たちの肌を触る。娘たちの顔が曇るところなど見もしない。
「もう一度抱いてやる。並べ」
サカモトはまるで王のごとく女たちに命じる。
「はい」
女たちは精いっぱいの笑顔で答えた。
サカモト一派はイーストに与えられた宿を抜けて、貴族の屋敷に身を移した。
これはサカモトとミサカズが互いに嫌い合っていることと、傲慢な性格が宿に雑魚寝することを許さなかったためである。
「俺は真の勇者だ。この意味が分かるな?」
サカモト一派は困惑する貴族たちを追い出した。もちろん、器量の良い娘は手元に置く。
「安心しろ。俺が守る」
サカモトは不安に震える女を押し倒し、泣き出すと何度も殴った。
「俺が抱いてやっているのになぜ泣く! 俺はお前たちを守る勇者だぞ!」
横暴な行為は仲間たちにも伝染する。
仲間たちはサカモトに逆らえない民たちを見て、馬鹿にした。
「あいつらは俺らが居ないとダメだ。屑な奴らだぜ」
平然と悪口を言う。
「イーストもダメだな。ミサカズなんて屑を始末できないなんて」
「おかげでムカついて堪らねえよ」
サカモト一派はイーストも馬鹿にするようになった。
横暴な態度は収まらない。
「お前らは俺たちが鍛えてやる! 屑なお前らでも少しは役に立たせる!」
彼らは騎士や冒険者を鍛えるという名目で虐めを行うようになった。
特訓の内容は自分たちとの組手のみ、相手が倒れても無理やり起こして戦わせる。
「弱い弱い! 泣いてんじゃねえよ! 泣けば助けてくれると思ってんのか!」
倒れた相手に罵声を浴びせる。
サカモト一派はモンスターと戦うことを止めていた。町で女を物色し、飯を食い、人を殴る。
それを毎日繰り返す。
それに文句を言う者は居ない。
「弱すぎる。俺たちが居ないとこいつらはダメだな」
撲殺された死体に唾を吐きかける。人々は何も言わず、耐えるしかなかった。
サカモト一派はいつも通りそれぞれの部屋で女を抱く。娯楽など探せばいくらでもあるが、今の彼らにはそれらすべてが下らない物に見える。結果、女を抱くことでしか暇を潰せない。
「曲者が近づいている?」
サカモトは女を抱いて満足に熟睡していたが、勇者の勘という奴で目を覚ます。
「お前ら! 起きろ!」
「起きてるよ!」
部屋を出て叫ぶと、仲間たちはパッチリした目で呼びかけに答える。
「俺たちに敵意を持つ奴が近づいている」
「ミサカズたちか?」
「あいつらは俺たちに喧嘩する度胸は無い」
「それにダンジョンの方へ遠回りしている。この屋敷の裏に回るつもりだ」
サカモトたちは眉を顰める。
「こっちが打って出れば分かる。ここを荒らされたくないから、すぐに装備を整えろ」
「分かった」
サカモト含めて約十人の勇者が完全武装で外に飛び出る。
「近づくのを止めたぞ? 俺たちに気づいたか?」
「殺しに行くぞ! 走れ!」
勇者たちは獣よりも速く走り出す。
「離れていく!」
「逃がすな!」
勇者たちは身の毛がよだつほどの脚力で山を登る。
「見つけた!」
勇者たちは十人前後の黒いフードを被った者と遭遇する。
「暗殺者か?」
「捕まえて問い詰めてやる!」
勇者たちは逃げる背中を獣のような目で追う。
「追い詰めた!」
そして山の中腹付近で追いつく。
「久しぶりだな。サカモト」
イーストがフードを取ってサカモトたちに顔を見せる。
「イースト? なぜここに?」
サカモトは暗殺者のような服装のイーストを睨む。
「呼び捨てか。もう構わんが」
イーストが剣を抜くと、他の隠密も剣を抜く。
「何の真似だ?」
サカモトはこめかみに青筋を立てる。
「お前たちはやり過ぎた。死んでもらう」
「は! 弱いお前らを守ってやろうとしたのに文句か! 救いようのない馬鹿だ!」
サカモトたちも剣を抜く。
「お前に領主の資格は無い! 俺が民を導いてやる!」
サカモトたちは目にも止まらぬ速さでイーストたちの前に立つと、閃光のごとき縦切りを放つ。
約十本の剣がへし折れ、刀身が月明かりを乱反射させながら地面に落ちる。
イーストたちは左肩から腹にかけて、血を噴出させて倒れた。
サカモトたちは目を開いたままのイーストたちに唾を吐く。
「弱い奴に生きる価値は無い。俺がこの世界を救う」
サカモトは仲間に目を向ける。
「帰るぞ」
サカモトの胸を鎧ごとイーストの抜き手が貫く。
仲間たちの喉や腹にも指が突き刺さる。
「え?」
サカモトは目をパチパチさせる。
「お前は人を舐めすぎだ」
イーストは無表情で淡々と立ち上がる。傷口は音を立てて塞がっていく。
「な、なんで?」
「森の秘薬と超人薬の効果と言っても、お前には分からんな」
イーストはサカモトの腹を蹴って、腕を引き抜く。
「み、みんな?」
仲間たちは声を上げることも許されず、首を引きちぎられた。
「最後に、人生の先輩として忠告しよう」
イーストはサカモトの頭を掴む。
「ま、まっで! だずげで! おれ、いーずどざんのだめに」
「永遠に強い奴は居ない。弱き者を虐げる奴は、必ず弱ったときに殺される!」
サカモトの頭がくちゃりと音を立てた。
「弱き者に生きる資格は無い。お前の望み通りの結末だ。満足するがいい」
イーストは月明かりの中、手を振って血を払う。
血の雫がキラキラとルビーのような玉になって、地面に弾けた。
「全く、この世界の奴らは屑ばかりだ。弱音ばかりで、守られることしか考えていない」
事が済むとお気に入りの女たちに愚痴る。
「あなたが居て私たちはとても嬉しいです」
女たちは貴族の娘ばかりで器量良し。それが数人集まれば花畑のような鮮やかさを彩る。
「お前たちは安心しろ。この俺が守ってやる」
サカモトは遠慮の無い手つきで娘たちの肌を触る。娘たちの顔が曇るところなど見もしない。
「もう一度抱いてやる。並べ」
サカモトはまるで王のごとく女たちに命じる。
「はい」
女たちは精いっぱいの笑顔で答えた。
サカモト一派はイーストに与えられた宿を抜けて、貴族の屋敷に身を移した。
これはサカモトとミサカズが互いに嫌い合っていることと、傲慢な性格が宿に雑魚寝することを許さなかったためである。
「俺は真の勇者だ。この意味が分かるな?」
サカモト一派は困惑する貴族たちを追い出した。もちろん、器量の良い娘は手元に置く。
「安心しろ。俺が守る」
サカモトは不安に震える女を押し倒し、泣き出すと何度も殴った。
「俺が抱いてやっているのになぜ泣く! 俺はお前たちを守る勇者だぞ!」
横暴な行為は仲間たちにも伝染する。
仲間たちはサカモトに逆らえない民たちを見て、馬鹿にした。
「あいつらは俺らが居ないとダメだ。屑な奴らだぜ」
平然と悪口を言う。
「イーストもダメだな。ミサカズなんて屑を始末できないなんて」
「おかげでムカついて堪らねえよ」
サカモト一派はイーストも馬鹿にするようになった。
横暴な態度は収まらない。
「お前らは俺たちが鍛えてやる! 屑なお前らでも少しは役に立たせる!」
彼らは騎士や冒険者を鍛えるという名目で虐めを行うようになった。
特訓の内容は自分たちとの組手のみ、相手が倒れても無理やり起こして戦わせる。
「弱い弱い! 泣いてんじゃねえよ! 泣けば助けてくれると思ってんのか!」
倒れた相手に罵声を浴びせる。
サカモト一派はモンスターと戦うことを止めていた。町で女を物色し、飯を食い、人を殴る。
それを毎日繰り返す。
それに文句を言う者は居ない。
「弱すぎる。俺たちが居ないとこいつらはダメだな」
撲殺された死体に唾を吐きかける。人々は何も言わず、耐えるしかなかった。
サカモト一派はいつも通りそれぞれの部屋で女を抱く。娯楽など探せばいくらでもあるが、今の彼らにはそれらすべてが下らない物に見える。結果、女を抱くことでしか暇を潰せない。
「曲者が近づいている?」
サカモトは女を抱いて満足に熟睡していたが、勇者の勘という奴で目を覚ます。
「お前ら! 起きろ!」
「起きてるよ!」
部屋を出て叫ぶと、仲間たちはパッチリした目で呼びかけに答える。
「俺たちに敵意を持つ奴が近づいている」
「ミサカズたちか?」
「あいつらは俺たちに喧嘩する度胸は無い」
「それにダンジョンの方へ遠回りしている。この屋敷の裏に回るつもりだ」
サカモトたちは眉を顰める。
「こっちが打って出れば分かる。ここを荒らされたくないから、すぐに装備を整えろ」
「分かった」
サカモト含めて約十人の勇者が完全武装で外に飛び出る。
「近づくのを止めたぞ? 俺たちに気づいたか?」
「殺しに行くぞ! 走れ!」
勇者たちは獣よりも速く走り出す。
「離れていく!」
「逃がすな!」
勇者たちは身の毛がよだつほどの脚力で山を登る。
「見つけた!」
勇者たちは十人前後の黒いフードを被った者と遭遇する。
「暗殺者か?」
「捕まえて問い詰めてやる!」
勇者たちは逃げる背中を獣のような目で追う。
「追い詰めた!」
そして山の中腹付近で追いつく。
「久しぶりだな。サカモト」
イーストがフードを取ってサカモトたちに顔を見せる。
「イースト? なぜここに?」
サカモトは暗殺者のような服装のイーストを睨む。
「呼び捨てか。もう構わんが」
イーストが剣を抜くと、他の隠密も剣を抜く。
「何の真似だ?」
サカモトはこめかみに青筋を立てる。
「お前たちはやり過ぎた。死んでもらう」
「は! 弱いお前らを守ってやろうとしたのに文句か! 救いようのない馬鹿だ!」
サカモトたちも剣を抜く。
「お前に領主の資格は無い! 俺が民を導いてやる!」
サカモトたちは目にも止まらぬ速さでイーストたちの前に立つと、閃光のごとき縦切りを放つ。
約十本の剣がへし折れ、刀身が月明かりを乱反射させながら地面に落ちる。
イーストたちは左肩から腹にかけて、血を噴出させて倒れた。
サカモトたちは目を開いたままのイーストたちに唾を吐く。
「弱い奴に生きる価値は無い。俺がこの世界を救う」
サカモトは仲間に目を向ける。
「帰るぞ」
サカモトの胸を鎧ごとイーストの抜き手が貫く。
仲間たちの喉や腹にも指が突き刺さる。
「え?」
サカモトは目をパチパチさせる。
「お前は人を舐めすぎだ」
イーストは無表情で淡々と立ち上がる。傷口は音を立てて塞がっていく。
「な、なんで?」
「森の秘薬と超人薬の効果と言っても、お前には分からんな」
イーストはサカモトの腹を蹴って、腕を引き抜く。
「み、みんな?」
仲間たちは声を上げることも許されず、首を引きちぎられた。
「最後に、人生の先輩として忠告しよう」
イーストはサカモトの頭を掴む。
「ま、まっで! だずげで! おれ、いーずどざんのだめに」
「永遠に強い奴は居ない。弱き者を虐げる奴は、必ず弱ったときに殺される!」
サカモトの頭がくちゃりと音を立てた。
「弱き者に生きる資格は無い。お前の望み通りの結末だ。満足するがいい」
イーストは月明かりの中、手を振って血を払う。
血の雫がキラキラとルビーのような玉になって、地面に弾けた。
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