【完結】婚約者はお譲りします!転生悪役令嬢は世界を救いたい!

白雨 音

文字の大きさ
24 / 43

24

しおりを挟む

その後、相手チームの攻撃は、わたしに集中したが、その分、攻撃が読め、
難なく防御出来た。その上、他の子たちが狙われる事が無く、
試合は硬直したまま、前半戦は6対5で《百花繚乱美しき薔薇》チームが取った。

「気にする事無いよ、良くある事だから、元気出して」
「失敗は誰にでもあるからね、君の情熱でボールも熱くなったのかな?」

パトリックとジェロームが励ましてくれ、他の子たちも、「そうですよ」と頷いていた。

「さぁ、時間は短いんだし、しっかり補給しておこう!」
「食料買って来ました!」

応援の子たちが、試合の合間に食料を買って来てくれていた。
それに加え、小さな薬の小瓶を7本取り出した。

「それから、我がファンダムより、回復薬の差し入れです!」

気の利いた差し入れに、皆が沸いた。

「回復薬はうれしいよ」
「これがあれば、疲れも取れるわ!」
「流石、僕のファンダムだね☆ありがとう」

わたしは必要無かったが、気持ちがうれしかったので、受け取った。
回復薬とサンドイッチを持ち、クララの側に座った。

「クララ、しっかり食べておいてね!」

だが、クララの顔は暗かった。
神妙な面持ちで、わたしを見た。

「私の所為です!私、もう、試合には出られません…」

「あなたの所為じゃないわよ、あんな威力魔法掛けられないでしょう?」

「でも!それしか考えられません…アラベラ様は、途中で魔法を加えたりしていませんよね?
私、近くに居たから分かるんです…私が間違えたんだわ…
それなのに、アラベラ様の所為にして!自分が恥ずかしいです!」

クララが「わっ」と泣き出した。

「クララ!?ドレイパー、君、クララに何をしたのさ!」

パトリックが迷い無く、わたしを責める___わたしの信用など、無いも同然だ。
分かってはいた事だが、こんな状況もあり、胸にどす黒いものが沸き上がってきた。
堪らず言い返そうとした所、クララが遮った。

「違うの!アラベラ様を責めたりしないで!私が悪いの…」

その一言で、わたしの内にあったどす黒いものは掻き消えたが、
パトリックの方は納得出来ないのか、尚も怖い顔でわたしに詰め寄った。

「ドレイパー、説明してくれるよね?」

わたしは嘆息し、心を落ち着け、話した。

「あの時の事で、クララが勘違いしてるのよ…
クララの魔法で、ボールに威力を増す事は出来ない、
それは、パトリックにも良く分かっているわよね?
クララがどう間違ったとしても、あんな風にはならないの、
だから、クララの所為じゃないわ、そうよね、パトリック?」

パトリックは「ああ」と、それを思い出した様だ。
パトリックはクララの隣に座ると、そっと、その肩を撫でた。

「クララ、自分の所為だと思ってたの?
ボールの容量を超えるなんて、君には無理だよ、馬鹿程魔力がなきゃ」

馬鹿?他に言い方は無いのかしら?

「でも、アラベラ様じゃないんです!私じゃなかったら、誰にそんな事が出来るの?」

パトリックが怪訝な顔で、わたしを見た。

「君じゃないの?ドレイパー」

「分からないの…でも、危険だと分かったから、もうフュージョンシュートは使わない事にしましょう!」

わたしは明るく解決策を言った。
パトリックも、「ああ、そうだね、問題解決だね」と頷いた。
クララはまだ引き摺っていたので、後半戦は外す事にした。
本来ならば、わたしも外れるのが正しいだろう。
だが、わたしはチームの主力でもあるので、チームとして「勝ちたい」という思いが強かった。

その判断が間違いだった事に、わたしたちは直ぐに気付く事になった___


後半戦が始まり、相手チームもわたしだけでなく、他の子を狙い始めた。
序盤は上手くいっていたのだが、わたしにボールが回り、それは起こった。
わたしが投げたボールは、わたしの意志に反し、急激なカーブを見せると、
恐ろしい威力でエリーを狙った。

前半戦の時と同じだ___

「キャ!!」

パン!!

エリーに当たる寸前に、ボールが破裂し、避けようとしていたエリーは地面に倒れた。
相手チームのメンバーたちは、エリーの元に駆けつけた。

「大丈夫か?エリー!」
「ったく、酷い事するよな!」
「おい!おまえ、いい加減にしろよ!」
「危険球だぞ!」
「明らかに悪意を感じる!退場にするべきだ!」

相手チームが訴え、わたしは審判から警告を受けた。

「次に同じ事をした場合、退場して貰います」

わたしの魔法ではない。
誰かが途中で魔法を掛けたのだ…
だけど、近くにいなければ、そんな事は出来ない…

一体、誰が?

わたしはそれとなく、周囲を伺った。
だが、それが出来る者は、限られている。
ジェロームか、パトリックしかいない…

まさか!

二人がやったとはとても思えない。
そもそも、こんな事をしても、何の得にもならない。

「アラベラ、攻撃は僕たちに任せて、君は防御に徹してくれるかい」

ジェロームの指示に、わたしは「分かったわ」と返した。

わたしは防御に徹し、取ったボールもジェロームやパトリックに回した。
それ以降は、何も起こらなかったが、
攻撃は単調になり、後半は3対6で、《炎の連隊》が取り、
前半戦と合わせても、《炎の連隊》の圧勝だった。

《炎の連隊》チームは喜びに沸き、観客席からは大きく歓声が上がった。

その一方で、わたしたち《百花繚乱美しき薔薇》チームは、
観客を敵に回してしまっていた。

「何が、《百花繚乱美しき薔薇》だよ!」
「あいつらに、大会に出る資格なんかねーよ!」
「汚い手使いやがって!」
「競技だってのに、そこまでするか?」
「あいつらが勝たなくて良かったぜ!」

わたしたちに向けられたのは、ブーイングで、メンバーたちは気まずく顔を伏せた。

「大会になんて出るんじゃなかったわ…」

ドロシアの呟きに、わたしは反射的に彼女を見た。
ドロシアは「はっ」としたが、手に拳を握り、わたしを睨んだ。

「ジェローム様を巻き込むなんて、耐えられませんわ!」
「そうよ!ジェローム様の評判を落とすなんて!酷いですわ!」
「ジェローム様は正々堂々と戦っていらっしゃったのに…」

『あなたが!』と、皆の目がわたしを責める。

「皆、この程度の事で憎しみ合わないでくれよ、僕は十分に楽しめたよ。
それに、彼女は良くやっていたよ、僕たちがここまで勝ち残れたのは、
アラベラが居てこそ、彼女は僕たちの女神さ___」

ジェロームがわたしの肩を抱き、いつもの調子で言ってくれたが、
「でも…」と、ファンダムの子たちは不満そうに顔を見合わせていた。

「アラベラ様がやったんじゃありません!」

普段、小さな声しか出さないクララが、意を決したかの様に、大きな声を上げた。

「私、ずっと見ていたんです、だから、分かります、
あれは、誰か違う方の魔法です!」

皆、探る様に互いを見た。

「私じゃありませんわよ!」
「私も、そんな事出来ませんわ!」
「アラベラ、君は何か気付かなかったかい?」

ジェロームから聞かれ、わたしは頭を振った。

「わたしの魔法じゃない事は確かだけど、誰も思いつかないわ…」

わたしの無実を証明出来るものは何も無い。

「人に罪を着せるなんて、酷いな!それこそ、憎むべき行いだね!」

「だけど、証明出来ないもの、どうしようもないわ…」

どうせ、信じては貰えない。
わたしは《悪役令嬢》だもの…

「でも、クララが信じてくれたから、それでいいわ!」

わたしはクララの肩を抱いた。
「アラベラ様…」と、クララが顔を赤くする。

「クララだけじゃないよ、僕も君を信じるよ、ドレイパー」

パトリックがクララの隣から顔を覗かせ、わたしに頷いた。

「ありがとう、パトリック…あなたが信じてくれるとは思わなかったわ…」

攻略対象者が、悪役令嬢の味方なんて、しないでしょう?
だが、瞬間、パトリックは不機嫌そうに頬を膨らませ、子犬の如く吠えた。

「僕だって、直ぐ側に居たんだから、君が追加で魔法を掛けていない事位、分かったよ!
言っておくけど、僕は二年生の次席だよ?君よりずっと、勉強もしているんだからね!」

それは、重々承知しております。
わたしは、「ふっ」と笑い、パトリックに手を差し出した。

「ごめんなさい、それから、ありがとう、パトリック!」
「分かったなら、いいよ、けど、あまり僕を見縊らないでよね、ドレイパー!」

パトリックは高飛車に言い、わたしの手を握った。
そこにジェロームも加わった。

「勿論、僕も君を信じるよ、アラベラ。
君は大技は得意だけど、技術的な事はクララ任せだったよね?
今思えば、あれは君らしくない、君の投げるボールはもっと純粋で邪気が無い」

その感覚は分からないけど…

「信じて下さって、ありがとございます、ジェローム様」
「君の汚名を晴らせない事が、残念だけどね…」

ジェロームは頭を振った。
様子を伺っていた、ドロシアとジャネット、及びファンダムの子たちも、考えを改めた。

「アラベラ様、申し訳ありませんでした…」
「私たちの思い違いでした…」
「どうか、お許し下さい…」

完全には信じていない気もしたが、
それでも、謝ってくれたのだから、わたしは快く受け入れる事にした。

「いいのよ、仕方ないわ、わたしの所為で優勝も逃してしまったし…
折角、大会に出てくれたのに、嫌な思いをさせてしまって、ごめんなさい…
埋め合わせに、皆で《打ち上げ》をしない?
応援してくれた子たちもよ!
準優勝のお祝いに、わたしが奢るわ!ああ、ジェロームとクララは強制参加よ!」

この二人が来れば、皆来るだろう。
その狙いは当たり、ファンダムの子たちは、「キャー!」と奇声を上げた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

その破滅エンド、ボツにします!~転生ヒロインはやり直し令嬢をハッピーエンドにしたい~

福留しゅん
恋愛
自分がシナリオを書いた乙女ゲームの世界に転生したメインヒロインはゲーム開始直後に前世を思い出す。一方の悪役令嬢は何度も断罪と破滅を繰り返しては人生をやり直していた。そうして創造主の知識を持つヒロインと強くてニューゲームな悪役令嬢の奇妙な交友が始まる――。 ※小説家になろう様にも投稿しています。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。

木山楽斗
恋愛
悪役令嬢ラナトゥーリ・ウェルリグルに転生した私は、無事にゲームのエンディングである魔法学校の卒業式の日を迎えていた。 本来であれば、ラナトゥーリはこの時点で断罪されており、良くて国外追放になっているのだが、私は大人しく生活を送ったおかげでそれを回避することができていた。 しかしながら、思い返してみると私の今までの人生というものは、それ程面白いものではなかったように感じられる。 特に友達も作らず勉強ばかりしてきたこの人生は、悪いとは言えないが少々彩りに欠けているような気がしたのだ。 せっかく掴んだ二度目の人生を、このまま終わらせていいはずはない。 そう思った私は、これからの人生を楽しいものにすることを決意した。 幸いにも、私はそれ程貴族としてのしがらみに縛られている訳でもない。多少のわがままも許してもらえるはずだ。 こうして私は、改めてゲームの世界で新たな人生を送る決意をするのだった。 ※一部キャラクターの名前を変更しました。(リウェルド→リベルト)

転生したら、乙女ゲームの悪役令嬢だったので現実逃避を始めます

山見月あいまゆ
恋愛
私が前世を思い出したのは前世のことに興味を持った時だった 「えっ!前世って前の人生のことなの。私の前の人生はなんだろう?早く思い出したい」 そう思った時すべてを思い出した。 ここは乙女ゲームの世界 そして私は悪役令嬢セリーナ・グランチェスタ 私の人生の結末はハーッピーエンドなんて喜ばしいものじゃない バットエンド処刑されて終わりなのだ こんなことを思い出すなら前世を思い出したくなかった さっき言ったこととは真逆のことを思うのだった…

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~

浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。 「これってゲームの強制力?!」 周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。 ※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

気づいたら悪役令嬢でしたが、破滅フラグは全力で避けます!

腐ったバナナ
恋愛
目を覚ますと、乙女ゲームの世界で悪役令嬢として転生していた私――リリナ・フォン・ヴァルデン。 ゲームでは、王子への婚約破棄やヒロインへの嫌がらせが原因で破滅する役回り。 でも、私はもう一度人生をやり直せる! フラグを確認し、全力で回避して、自由に、そして自分らしく生きると決めた。 「嫌なイベントは全部避けます。無理に人を傷つけない、そして……自分も傷つかない!」 だけど、自由奔放に行動する私のせいで、王子もヒロインも周囲も大混乱。 気づけば、破滅するはずの悪役令嬢が、いつの間にか一目置かれる存在になってしまった!?

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

処理中です...