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第二章
13
「結婚?」
「はい!」
「わたしと?」
「はい、僕とあなたですよ、エレノア」
そんな素振り、一度も見せなかったのに。
わたしは信じられず、無意識に頭を振っていた。
ウィルはそれを見て、誤解した様だ、その表情が陰った。
「やはり、僕ではあなたの夫は務まりませんか…
正直、僕の様な男は頼りなく、魅力も無いのでしょうね…
妻もその様な事を言っていました。
ですが、僕は諦めませんよ!ご両親にもお話し、あなたを説得して頂きます!」
「止めて!」
思わずわたしは叫んでいた。
「それも、駄目ですか…僕はどうしたら、あなたに結婚して頂けますか?」
ウィルは途方に暮れ、子犬の様に、縋る目でわたしを見つめた。
いつものウィルに戻った様で、わたしは笑ってしまった。
「両親より先にわたしに話してくれて正解よ、ウィル!
それに、指輪は二人で買いに行きましょう!」
「あの…?」
今度はわたしが先走ってしまい、ウィルに伝わらなかった様だ。
わたしは深呼吸をし、ウィルを見つめた。
「ウィル、あなたは何故、わたしと結婚したいの?」
「僕はあなたと一緒に居たいんです…あなたといると楽しい、
あなたは、あの花畑の様な人ですからね!
あなたが居ないと物足りない、冬の夜の様に寂しくて、彷徨ってしまう…
そう、僕はあなたを愛しているんですよ、エレノア」
うっとりと聞き惚れてしまう。
こんな素敵な告白は初めてだ___
「いつから?」
「いつからでしょうか?もう、随分前の事なので、分かりませんが…
恐らく、初めてお会いした時から、惹かれていました。
あなたは、とても輝いていましたから…」
自然と口元が緩んでいた。
「それなら、もっと早くに言ってくれたら良かったのに!」
「僕の気持ちは、伝えていたつもりですが?」
そうなの!?全然、気付かなかったわ!!
「ウィル、わたしもあなたを愛しているわ!」
いつからか分からないけど、愛してしまっていた。
少しズレてるし、変な人だけど、そんな所も面白くて好きだし、
頼りない様で、意外と頼りになるし、頼りない所は、わたしが支えてあげればいいもの!
何より、正直で、素直で、優しくて…
わたしを愛してくれている!!
「でも、結婚はして頂けない、と…」
「結婚しないなんて言っていないわ!
でも、そうね、あなた以外の人とは結婚しないと誓うわ!」
「それでは、僕とは結婚して下さる…??」
「そうよ!」
わたしはウィルに飛びつき、その唇を奪った。
ウィルは驚いていたが、わたしを抱きしめ、キスを返してくれた。
◇◇
「僕とエレノアは結婚します!
本当は直ぐにでも結婚したいのですが、エレノアのご両親にも許しを得なければいけませんので、
クレイブとルシンダの結婚式に来られた際に、話すつもりです!」
翌日の晩餐の際に、ウィルがそれを伝えると、皆喜んでくれた。
特に母親であるプリシラは、涙を流し、喜んでいた。
「ああ、良かったわ!ウィルの求婚を受けて下さって、ありがとう、エレノア!
この子は結婚で一度失敗しているでしょう?二度と結婚はしないと思っていましたよ…
あれからずっと、女性を怖がって、避けていましたからね…
それが、あなたと出会って、見違える様に活き活きして!男らしくなったわ…
あなたのお陰よ、エレノア、ウィルをお願いしますね」
クレイブも姉も、ウィルがわたしに求婚する事を知っていた様で、
驚くよりも喜んでいた。
「ああ、良かった!誕生日の計画が上手くいかなかったみたいだったから、
失敗したとばかり思っていたよ!」
「私は絶対に上手く行くと思っていたわよ、ウィルが求婚さえすればね?」
姉がわたしにウィンクをした。
やはり姉は、わたしの気持ちに気付いていたのだ!
どうして気付かれたのかしら?隠していたのに!
「クレイブとルシンダの結婚を機に、爵位をクレイブに譲ろうと思っています」
ウィルが言い、華やいでいた空気がピタリと止んだ。
「急にどうしたの?今まで通りで構わないよ、兄さん。
僕は裏方が得意だし、兄さんは領地の皆から愛されてる、僕には無理だよ…」
「辺境伯の仕事はこれまでもクレイブに任せていたし、おまえなら僕より上手くやれるよ。
ルシンダも手伝ってくれる。
僕はエレノアの傍にいて、作曲の仕事やエレノアの手伝いをするよ。
エレノアの手伝いをして領地を豊かにする方が、僕には合っている気がする」
クレイブは困った様に母親を見た。
プリシラ夫人に止めて貰いたかったのだろう。
だが、プリシラ夫人はすんなりと頷いた。
「ウィル、あなたはこれまで良くやってくれたわ、ライリーや私の為に、
辺境伯を継いでくれたのよね、ありがとう。
あなたはいつも、周囲の期待に応えようとしてくれたわ、
あなたが自分の道を見つけたというなら、その道を進みなさい。
大丈夫、あなたもクレイブも、その力は十分にあるわ」
ウィルは頷き返した。
クレイブは嘆息し、「分かったよ」と零した。
「エレノアの手伝いは僕には出来ないし、
僕は僕に出来る事をして、二人をしっかり支えるよ。
皆でこの地をもっと豊かに、栄えさせていこう___」
話が纏まっていたのだが、この時になり、姉が口を開いた。
「待って下さい、私は認めません」
「お姉様!?」
姉はキッと顔を上げ、ウィルに向かって言った。
「エレノアと結婚するまでは、ウィルには辺境伯でいて頂きます」
「そんなの、どっちでもいいでしょう?」
結婚するまで、結婚した後、何が違うのか?
ウィルが決心したというのに、何が気に入らないのか?
わたしは不満気に姉を見た。
姉は厳しい目をわたしに向ける。
「両親にとっては、大きく違うわ。
私は離縁された身だから、良縁が望めないと思い、
相手が貴族というだけで、両親も結婚を許してくれたのよ。
あなたの結婚相手が爵位を持っていなければ、両親は絶対に認めないわ!」
「それならそれでいいわよ、家を出された身だもの、勝手にさせて貰うわ」
「あなたが意地を張っていたら、関係は修復出来ないわよ。
両親にも悪い所はあるけど、いつでも会いに行けて、お茶が出来る関係には
しておきなさい。この先、子が生まれても、両親に会わせないつもり?」
「会わせたって、どうせ子供の容姿を貶すだけよ」
自分の子を『出来損ない』など言われたら、それこそ、関係は破綻するだろう。
「確かに、あり得るわね、ノークス伯爵家では金髪に碧眼が神だもの!
それに、ジェイソンと私の出来が良かったから、あなたにも期待し過ぎてしまったのよ。
あなたは貴族令嬢としては、落第生だったけど、あなたにはあなたの良さがあったわ。
才だってある!
両親は古風で頑固だから、それを素直に認められなかったのよ…」
「わたしの事なんて、一生認めないわよ…」
「だけど、このままの関係で、もし、両親が亡くなったら?
後悔するのはあなたよ、エレノア」
わたしは口を噤み、視線を落とした。
確かに、それでは寝覚めも悪いだろう…
「話は分かりました」
ウィルが言ったので、わたしは顔を上げた。
「そういう事であれば、ルシンダに従いましょう。
僕は喜んで、エレノアとご両親の懸け橋になりますよ!」
姉とプリシラ夫人は、ウィルの力強い宣言に安堵し、感動すらしていた。
だが、わたしとクレイブは、一抹の不安を抱いた。
「そんなに気負う必要は無いのよ、ウィル…」
「そうだよ、兄さんは何もしなくていいからね?」
「大丈夫ですよ、僕に任せて下さい!」
わたしたちの言葉が、ウィルに正しく届いたかは疑問だったが…
まぁ、なるようにしかならないわよね?
わたしは肩を竦めた。
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