【完結】バッドエンドの落ちこぼれ令嬢、巻き戻りの人生は好きにさせて貰います!

白雨 音

文字の大きさ
33 / 38
第二章

12


「《次》って、予定が決まっているの?」

「はい!クレイブとルシンダが考えてくれています、こちらです!」

ウィルは小さな用紙を取り出し、わたしに向けた。
恐らく、それは、二人から口止めされていたのではないか?
それをすんなり忘れてしまえるのが、ウィルらしい…

「ええと…観劇《愛しのルイーズ》、これは今の芝居ね。
その後は、フローレンスにて昼食、ジェム・ホリーにて贈り物?
噴水広場で休憩、オースグリーン館に戻りお茶…ここまで決まってるの?」

お姉様ってば!気を遣ってくれるのはいいけど、お膳立てし過ぎだわ!
それに、これって、わたしの気持ちに気付いているって事かしら?
クレイブも??

わたしは顔を顰めた。

姉とクレイブは上手くいっているから良いが、わたしは、ただの片恋だ。
それなのに、勝手にこんな計画を押し付けられ、
無理矢理デートさせられているウィルを思うと、気の毒になった。

「気に入りませんでしたか?」

「気に入らないわ!だって、あなたの意志ではないんでしょう?
そんなの悪いし、楽しめないわ…」

贈り物だって、姉とクレイブが決めた物を貰ってもうれしくはない。

「それは誤解ですよ!僕はこういった事が苦手なので、二人に意見を求めた所、
こうして、素晴らしい案を出してくれました!
でも、それにOKを出したのは僕です!」

「OK」しただけだというのに、大仕事をしたかの様に胸を張るウィルに、
わたしは唖然とし、そして、吹き出してしまった。

「分かったわよ!だけど、苦手でもいいから、わたしはウィルに選んで欲しかったわ。
あなたはわたしを何処へ連れて行きたいの?」

「ピクニック…ああ、でも、誕生日らしくはありませんよね?
僕はどうも、こういった事は苦手で…」

「ピクニック、いいじゃない!それじゃ、何処かでサンドイッチを買って、
ピクニックに行きましょう!丁度馬車もあるから、直ぐに行けるわ!」

「それなら、良い店を知っています、持ち帰り様に作って貰えるんです…」

ウィルに案内され、店で持ち帰り用にサンドイッチと紅茶を詰めて貰った。
バスケットと紅茶を入れた水筒、それから敷物は、後日返したので良いと言われた。

「お二人でピクニックですか?今日は良く晴れていますし、丁度いいですね」

「はい、今日はエレノアの誕生日なんですよ!」

「エレノア様の!?それは、おめでとうございます、
誕生日にウチの店に来て頂けるなんて、光栄ですよ!」

そんなに光栄な事かしら??
不思議だったが、店主が「お祝いに」とカップケーキを付けてくれたので、考えない事にした。

これは後日の話だが、わたしたちが買ったサンドイッチと紅茶、貰ったカップケーキは、
《エレノア様お誕生日ピクニックセット》として、売りに出され、
町の人たちがこぞって買って行ったそうだ___

そんな事になるなど知らないわたしたちは、呑気にピクニックに出かけた。
ウィルが案内してくれた場所は、丘の上の草原で、見晴らしが良く、
気持ちの良い場所だった。

「ああ、素敵だわ!」

わたしは両手を広げ、その解放感を味わった。

「良い所でしょう?幼い頃に、両親とクレイブと来ていた所です。
まだ少し早い様ですが、ここは一面に、小さな桃色の花が咲くんですよ…」

ウィルが草原を懐かしそうに眺める。

いつか、曾祖母が見せてくれた事がある。
草原を花畑に変えた…
わたしにも出来るかしら?
《精霊の家》のある土地だもの、相続人のわたしなら、出来るかも___

ウィルが見た景色を、わたしにも見せて___

目を閉じ祈った時、強い風が吹き抜けた。
そして、次の瞬間…

「エレノア!?花が咲いています!一面に!!」

ウィルの驚く声でわたしは目を開けた。
草原だった場所一面が、小さな桃色の花で埋まっていた。

「これですよ!僕があなたに見せたかった景色です!
どうです?素敵でしょう?ああ、懐かしいな…」

ウィルははしゃいでいたが、不意にそれを思い出したのか、
わたしを振り返り、眼鏡の向こうの青灰色の目を大きくして、覗き込んできた。

「もしかすると、これは、あなたの力ですか?」

「精霊にお願いしたの、きっと、届いたんだわ…」

「流石、オースグリーン館の主ですね!」

ウィルは屈託なく笑う。
わたしも笑みを返した。

「さぁ!昼食にしましょう!」

わたしたちは最高の景色の中、サンドイッチとカップケーキを食べた。
それから、敷物の上に仰向けになった。

「ウィル、眠ったの?」

返事が無い、どうやら眠っているらしい。
わたしはそっと、手を伸ばし、ウィルの手に触れた。
反射的になのか、ギュっと握り込まれ、わたしはドキリとした。

少し、ウィルの方ににじり寄る…

寝ていると思うと、大胆になれた。

「ウィル、素敵な誕生日をありがとう___」

わたしはそっと、その頬にキスをした。





丘を降り、町に戻り、バスケットと水筒、敷物を返した。
それから、噴水広場を歩き、オースグリーン館に戻り、お茶にした。
その頃になり、ウィルはそれを思い出した。

「ああ!僕とした事が!あなたへの誕生日の贈り物を、買っていませんでした!」

ウィルが一大事の様に大袈裟に言うので、わたしは笑ってしまった。

「贈り物はいいわよ、今日は最高の日だったもの!」

「そうですか?でも、僕は…」

「ウィルも楽しかったわよね?」

「勿論です!そう、正に、最高の日でした…」

「それなら、贈り物なんて必要無いわ!」


だが、その後、ウィルに誘われ、コルボーンの館の晩餐に出席した折、姉からは呆れられた。

「贈り物を貰わなかったの?」

「ええ、必要無いもの!」

わたしはキッパリと言ったが、姉は『やれやれ』という様に頭を振った。
この時は、姉たちのお膳立てを無視した事に、呆れているのだと思っていた。

マックスがわたしの為にケーキを焼いてくれ、皆から誕生日を祝福して貰え、
わたしは幸せだった。

正に、これ以上無い程に、最高の誕生日だった。

ウィルがオースグリーン館まで送ってくれた時も、わたしはまだ夢見心地だった。

「ウィル、今日はありがとう!とっても楽しかったし、料理もケーキも美味しかったわ!
プリシラ様やマックスさんたちにも伝えておいてね!」

玄関まで来て、わたしはクルリと向きを変え、ウィルに言った。
ウィルは「その…えっと…」と、何やら困った様に頭を掻き、
跳ねた髪を益々跳ね散らかしていた。

「どうしたの?何か問題があった?」

「いえ、その、本当は贈り物を買ってからにするべきだという事は、
重々承知の上なのですが…」

「また贈り物の話?」

いい加減に忘れてくれたらいいのに…

「それに、先に伝えるべきは、ご両親にではないかとも思うのですが…
その、大抵の事は父がしてくれていたものですから、いざ、僕一人でやろうとすると、
何から手を付ければいいのか…」

「何の話?」

何故、両親まで出て来るのか?
わたしは「ご両親」と聞いただけで、反射的に顔を顰めていた。

「ああ、怒らないで下さいね!僕は本当に、至らない男ですよね…
それで、その、妻にも愛想を尽かされましたし…」

「怒ってなんていないわ!そんな事で、愛想を尽かしたりもしない」

そんな女と一緒にしないで!
元奥さんの事なんて、さっさと忘れちゃえばいいのに!!

これまでウィルが、元妻の事を話したのは、一度だけだった。
あんな風に傷付けられたのだ、そう簡単には忘れられないだろうが…
それでも、引き摺っていると思うと、良い気はしなかった。

「そうですか?それなら、良かったです!」

ウィルは安堵の息を吐いた。
結局、言いたい事は何だったのだろう?
内心で頭を傾げつつ、わたしがお別れの挨拶を口にしようとした時だ…

「エレノア!」

ウィルの表情が真剣な色に変わった。
眼鏡の向こうで、青灰色の目が強い光を持ち、わたしを見つめる。
初めて見る表情に、息を飲む…

「僕と結婚して下さい!」

一瞬、何を言われたのか分からなかった。
あまりに、突然だったからだ___

あなたにおすすめの小説

婚約破棄を突き付けてきた貴方なんか助けたくないのですが

夢呼
恋愛
エリーゼ・ミレー侯爵令嬢はこの国の第三王子レオナルドと婚約関係にあったが、当の二人は犬猿の仲。 ある日、とうとうエリーゼはレオナルドから婚約破棄を突き付けられる。 「婚約破棄上等!」 エリーゼは喜んで受け入れるが、その翌日、レオナルドは行方をくらました! 殿下は一体どこに?! ・・・どういうわけか、レオナルドはエリーゼのもとにいた。なぜか二歳児の姿で。 王宮の権力争いに巻き込まれ、謎の薬を飲まされてしまい、幼児になってしまったレオナルドを、既に他人になったはずのエリーゼが保護する羽目になってしまった。 殿下、どうして私があなたなんか助けなきゃいけないんですか? 本当に迷惑なんですけど。 拗らせ王子と毒舌令嬢のお話です。 ※世界観は非常×2にゆるいです。     文字数が多くなりましたので、短編から長編へ変更しました。申し訳ありません。  カクヨム様にも投稿しております。 レオナルド目線の回は*を付けました。

【完結】ご安心を、2度とその手を求める事はありません

ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・ それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。

夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。 辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。 側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。 ※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。

俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。

ミミリン
恋愛
ある世界の貴族である俺。婚約者のアリスはいつもボサボサの髪の毛とぶかぶかの制服を着ていて陰気な女だ。幼馴染のアンジェリカからは良くない話も聞いている。 俺と婚約していても話は続かないし、婚約者としての役目も担う気はないようだ。 そんな婚約者のアリスがある日、俺のメイドがふるまった紅茶を俺の目の前でわざとこぼし続けた。 こんな女とは婚約解消だ。 この日から俺とアリスの関係が少しずつ変わっていく。

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

【完結】真実の愛に目覚めたと婚約解消になったので私は永遠の愛に生きることにします!

ユウ
恋愛
侯爵令嬢のアリスティアは婚約者に真実の愛を見つけたと告白され婚約を解消を求められる。 恋する相手は平民であり、正反対の可憐な美少女だった。 アリスティアには拒否権など無く、了承するのだが。 側近を婚約者に命じ、あげくの果てにはその少女を侯爵家の養女にするとまで言われてしまい、大切な家族まで侮辱され耐え切れずに修道院に入る事を決意したのだが…。 「ならば俺と永遠の愛を誓ってくれ」 意外な人物に結婚を申し込まれてしまう。 一方真実の愛を見つけた婚約者のティエゴだったが、思い込みの激しさからとんでもない誤解をしてしまうのだった。