【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!

白雨 音

文字の大きさ
24 / 33

24 アンジェリーヌ

しおりを挟む

◆◆ アンジェリーヌ ◆◆

その日、アンジェリーヌは学院の応接室に呼ばれた。
学院に豪華賢覧な馬車が、騎士団の護衛を従え現れた時から、アンジェリーヌの胸は小躍りしていた。

「とうとう、この時が来たのね!」

前世を思い出してから、ずっと指折り、この時を待ち望んで来たのだ。
緩んでしまう口元を引き締め、アンジェリーヌは背をピンと伸ばして学院の廊下を歩く。
まだ、この事は誰も知らない___
その優越感に浸りながら、アンジェリーヌは開かれた扉の向こうに足を踏み入れた。

重厚なソファには、王子服を纏った若い男、高位貴族の装いをした初老の男、
騎士団の装いの中年の男、そして、初老の学院長が座っていた。

「お呼びと伺いました、アンジェリーヌ=ロベールです」

その場にいる皆が息を飲んだ。

「確かに、髪色、瞳の色が同じだ、それに、顔立ちが王妃様に似ている…」
「だが、他人の空似という事もあります」
「最後の確認をしなければいけません…」

三人は小声で話し合うと、騎士団の装いをした男が立ち上がった。

「アンジェリーヌ、左肩を見せて貰えるか?」

「男性の前で衣を脱ぐ事は出来ません」

アンジェリーヌは自身を護る様に、腕を体に巻きつけた。
尤も、本気で恥ずかしがっているのではなく、前世の記憶から、
【溺愛のアンジェリーヌ】に合わせた演技だった。

「確かに、その通りだ、王家の者が肌を晒す事は許されぬ、侍女を呼べ!」

程なく、女性たちが現れ、大きな布でアンジェリーヌの体を覆い、上着を脱がせた。
そして、布から左肩だけを出して見せた。
左肩のハートの痣を見た彼等は、声を上げた。

「この娘で間違いない!」

「彼女こそ、我がグランピュロス王国、第三王女レティシア様である!」

皆が一様に驚く中、アンジェリーヌは誇らしげな笑みを浮かべたのだった。


アンジェリーヌ、それから立場上レオンは、迎えの馬車に乗り、急遽王宮に向かう事になった。
事の次第を聞いたレオンは驚いていた。

「君が、グランピュロス王国の王女だったとは…不思議な事もあるのだな」

「ええ、あたしも驚いています、これまで自分が王女だなんて、考えた事も無かったもの…
突然、こんな事になって、レオン様、あたし不安だわ…」

アンジェリーヌは縋る様にレオンを見た。
レオンは薄く微笑み返した。

「大丈夫だ、王女ならば悪い様にはしないだろう、それに、ただの王女ではない、
グランピュロス王国は大国だ、誰も君に危害を加える者はいない」

アンジェリーヌは、『あら?』と思った。
【溺愛のアンジェリーヌ】ならば、レオンはうっとりとアンジェリーヌを見つめ、甘い言葉を囁いていた所だ。

『安心しろ、私がついている!君の事は、何があっても、私が守る___』

そんな風に言ってくれるのを期待していたアンジェリーヌは、少々肩透かしを食らった。

きっと、今は驚いているからね…

アンジェリーヌは小さく息を吐き、隣のレオンに擦り寄り、その肩に頭を乗せた。

「アンジェリーヌ?」

「不安なの、少しだけ、こうしていて…」

レオンは何も言わなかったが、拒んだりもしなかった。

本当は、うれしい癖に!

普段は学院で、誰が見ているかもしれないので、接触は出来なかった。
レオンが接触するのは、ドロレスたちからの嫌がらせで泣いている時位だ。
馬車内は二人きりで、誰の目を憚る事もなかったが、レオンが触れて来る事は無かった。

大国グランピュロス王国の王女という事で、ビビってるのかしら?

アンジェリーヌは内心で嘲笑し、その肩に頭を擦りつけた。


王宮に着き、一同が謁見の間に集まった。
エマラージュ国王、王妃、王太子、第三王子レオン。
そして、グランピュロス王国からは、レティシアの兄第二王子ガブリエル、叔父の宰相、騎士団長だった。

事の経緯が説明されたが、【溺愛のアンジェリーヌ】で知っていたアンジェリーヌは、聞き流していた。
アンジェリーヌの出番は、その後、アンジェリーヌをレティシアと認め、国に連れ帰ると告げられる場面だ。

「___この上は直ちに、レティシアをグランピュロス王国に迎えたい」

「お待ち下さい!あたしはこの国で育って来ました、名はアンジェリーヌです!
家族、友達、学校、あたしの愛する全てがここにあります!
これを捨て、グランピュロス王国に行く事は出来ません、どうか、あたしの事は忘れ、国へお帰り下さい」

グランピュロス王国の者たちは、ショックを受けていた。

「こんな国にいて、何になると言うんだ!
君は大国グランピュロス王国の王女なんだぞ?
国に返れば裕福に暮らせるというのに___」

何とか、アンジェリーヌを説得しようと試みたが、アンジェリーヌは頷かなかった。
そして、頃合いを見て、取引を仕掛けた。

「それでは、せめて、学院を卒業するまでは、この国にいる事をお許し下さい!」

「王や王妃は、この十七年、あなたの身を案じて来たのですぞ?
一緒に帰らなければ、さぞ気落ちされるでしょう…」

「それでは、あたしから手紙を書きます、それを持って、一度国にお帰り下さい」

アンジェリーヌが厳として言うと、諦めたのか、手紙を持ち、一度国に帰る事になった。
アンジェリーヌは小説の通りに事が運び、ほくそ笑んでいた。

自分が大国グランピュロス王国の王女である事は、直ぐに学院中に伝えられる。
王女となれば、滅多な事があってはいけないからだ。
学院には護衛も増やされる。

そして、《アンジェリーヌ》は全学院生、いや、教師たちからも、羨望の眼差しで見られ、崇められるのだ!

アンジェリーヌはそれを想像し、胸を躍らせていた。

この先に待ち受けるのは、それだけではない。

ドロレス=カントルーブ公爵令嬢の破滅!

「悪役令嬢はどんな風に退場してくれるかしら?」

さぞかし、惨めったらしいだろう!
あの女、気が狂うかもしれないわね!
日頃王子妃然としているドロレスが、どんな醜態を晒してくれるか、想像するだけでも楽しい。

一目見た時から、ドロレスの事が嫌いだった。
『自分は特別だ』と自信に満ちた彼女を、どうにかして壊してやりたかった。
踏み躙り、許しを乞う姿が見たかった。

「ヒロインの性かしら?」

ヒロインと悪役令嬢の宿命よね___

「ああ、楽しみだわ!」


◆◆◆
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。 華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。 そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!? 「……なぜ私なんですか?」 「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」 ーーそんなこと言われても困ります! 目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。 しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!? 「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」 逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~

浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。 「これってゲームの強制力?!」 周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。 ※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ

汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。 ※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。

本の虫令嬢ですが「君が番だ! 間違いない」と、竜騎士様が迫ってきます

氷雨そら
恋愛
 本の虫として社交界に出ることもなく、婚約者もいないミリア。 「君が番だ! 間違いない」 (番とは……!)  今日も読書にいそしむミリアの前に現れたのは、王都にたった一人の竜騎士様。  本好き令嬢が、強引な竜騎士様に振り回される竜人の番ラブコメ。 小説家になろう様にも投稿しています。

転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【だって、私はただのモブですから】 10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした―― ※他サイトでも投稿中

「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)

透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。 有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。 「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」 そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて―― しかも、彼との“政略結婚”が目前!? 婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。 “報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

処理中です...