【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!

白雨 音

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「彼女、大国グランピュロス王国の王女だったんだってさ!」
「生まれて間もなく攫われたんだよ!」
「ずっと探していたらしいな…」
「こんな所にいるなんて、誰も思わないよなー」
「けど、大国の王女かー、いいよなー」
「やっぱ、違うなー、気品があると思ってたんだよー」

アンジェリーヌ=ロベールが、大国グランピュロス王国の王女だという話は、直ぐに学院中に広まった。
学院生たちは好意的に受け取り、沸いていた。
教師たちも好意的だが、実際にアンジェリーヌに関わる教師はやり難そうにしている。

戻って来たアンジェリーヌは、下級貴族、平民向け寮から、上級貴族寮の一番良い部屋に移った。
学院では何処にいても、皆から羨望の眼差しで見つめられ、称賛されている。
アンジェリーヌは待遇の変化も臆する事無く受け入れている。
寧ろ、得意満面にさえ見えた。


アンジェリーヌの態度は兎も角、展開は【溺愛のアンジェリーヌ】の通りに進んでいる。
わたしは危機を感じ、ドロレスの動向を気に掛けていた。
ユーグ、エミリアン、ジェシーには断りを入れ、
登校、昼休憩、放課後、時間の許す限り、ドロレスと一緒にいる様にした。

ドロレスは驚きながらも、断る気力は無い様で、「好きになさい」と零した。
いつも彼女は自信に満ちていたが、今やその面影はない。
表情は暗く、消えてしまいそうに見えた。

「ドロレス様、ちゃんと食べていますか?お肌が荒れていますよ!
はい!しっかり食べて下さいね!」

「今日の髪型は少し複雑なんです、いかがですか?」

「ドロレス様は胸が大きいから、こういうドレスが似合うと思うんですけどー」

わたしはドロレスが余計な事を考えない様、気を紛らわせようと努めた。
だが、ドロレスから返ってくるのは生返事ばかりで、「ええ」、「そうね」、「ふぅん…」を繰り返している。

学院内では、
「アンジェリーヌ様が大国の王女なら、レオン様は婚約破棄をなさるんじゃない?」
「元々、レオン様はドロレス様よりも、アンジェリーヌ様と仲が良かったし」
「ドロレス様は我が国の公爵令嬢、大国の王女の方が魅力的よね!」
「賭けてもいいけど、一月後には、婚約者は代わってると思うわ!」
等々、無責任な噂も飛び交い始めた。
それはドロレスの自尊心を傷つけているに違いない___

「こんなの、良く無いわよね…」

わたしは意を決し、もう一度ドロレスと話してみる事にした。
寮の部屋で二人きりになった時、わたしは早速それを聞いた。

「ドロレス様は、レオン様との婚約が駄目になるのを、恐れているのでしょう?
その理由は何ですか?公爵家に悪評が付くのを心配しているのですか?」

ドロレスは視線を下げ、紅茶を飲んだ。

「それなら、レオン様に交渉するのは、いかがですか?
婚約破棄を飲む代わりに、公爵家を守って貰うんです!」

我ながら良い考えだと思ったのだが、ドロレスには溜息を吐かれた。

「あなたみたいに、お節介な娘は初めてよ、エリザ。
でも、その根性に免じて、お話しましょう…但し、エミリアンには絶対に言ってはいけませんよ」

少し引っ掛かりはあったが、今は聞き出す事が大事なので、そこは流す事にした。

「エミリアンには言わないと約束します。
だから、何を悩まれているか、教えて下さい!」

ドロレスは頷いた。

「私の父、カントルーブ公爵との取り決めなの。
公爵は病弱なエミリアンを認めず、継承権を剥奪し、一族の内、優秀な者を養子に迎える気でいました。
丁度、レオン様との縁談が持ち上がった頃で…
私はエミリアンを後継ぎにする事を条件に、縁談を受けたの」

「!?」

「婚約破棄となれば、両親は家名を穢されたと怒り、約束を反故するでしょう…
エミリアンに学院を辞めさせ、療養だと言い、遠方にやるかもしれない…
そんな事は、私が許さない!!」

「でも、実の息子なのに?」

普通ならば、実の子に継がせたいと思うのではないだろうか?
だが、ドロレスは顔を顰めた。

「実の子であっても、価値が無いと判断したら切り捨てる様な人たちよ!
あの人たちにとって大事なのは、公爵家だけよ!」

ドロレスが感情を爆発させる。
そうか…
ドロレスが護りたかったのは、王子妃の《権力》ではなくて、《エミリアン》だったのね…

「分かったわ、それなら、レオン様に話してみましょう!
レオン様は第三王子だもの、彼が『エミリアンを後継ぎにしろ!』って言えば、公爵だって逆らえないわよ!」

「それは無理よ、王子が権力を振り翳せば、貴族たちは黙っていない…
レオン様は失脚させられてしまうわ…」

「それでも、話してみましょう、レオン様は分からず屋じゃないし、利害が一致すれば、力になろうとしてくれるわよ!
他に良い案がみつかるかもしれないし!
三人寄れば文殊の知恵って言うでしょう?」

「聞いた事ありませんけど…」

「いいから!明日の放課後、義兄にレオン様を連れ出して貰うわ、
何処か空き教室で会いましょう。当たって砕けろ!よ!!」


◇◇


翌日の放課後、わたしはユーグにレオンを連れて来て貰い、ドロレスと四人で会う事にした。
空き教室に入って来たレオンは、ドロレスの事は聞かされていなかったのだろう、彼女を見て目を見開き、鋭く息を飲んだ。

「これは、どういう事だ!」

レオンの声は厳しい。
レオンはドロレスに対してだけ、キツイのだ。
まるで、敵とでも思っているみたい…

ドロレスに代わり、わたしがそれを話した。

「レオン様にお尋ねしたい事があります。
レオン様がドロレス様との婚約を破棄し、アンジェリーヌ様と婚約されるという噂を聞きましたが、それは本当ですか?」

「噂を本気にするとは、浅はかだな、だが、そういう話もあるにはあるらしい」

ふと、違和感を持った。
レオンの言葉は、あまりに他人事に聞こえる。

「レオン様は、その話に乗り気ではないのですか?」

寧ろ、【溺愛のアンジェリーヌ】では、レオンは王室にドロレスの悪事を伝え、
アンジェリーヌとの結婚がいかに国の為になるかを進言した筈だ。
それなのに、目の前のレオンは何処か投げやりに見える。

「王子の結婚は王室が決める事だ、私の意思など関係無い」

「もし、意見を求められたら、どうお答えするつもりですか?」

レオンが僅かに顔を顰めた。

「分からない、その時にならなければ…」

「それなら!」と、わたしはズイと進み出た。

「このまま、ドロレス様との婚約を破棄なさらずにいて頂けないでしょうか?」

レオンの目がスッと細くなった。
その表情には軽蔑が浮かぶ。

「それが、その女の考えか?
フン、浅ましいな、そこまでして、おまえは《王子妃》になりたいのか?
おまえの様な女に《王子妃》が務まるとは思えぬが…」

「レオン様は誤解なさっています!
ドロレス様は立派な《王子妃》になろうと、日々懸命に努力されています!
ドロレス様の態度に文句があるのでしたら、それは教育係に申されるべきでしょう!」

「全ては教育係の所為か?おまえが平民の娘を虐めた事もか?
同じ学院で学ぶ者を、貶し、罵り、挙句、手を上げるなど、
我が王室付の教育係が教えたと申すのか?」

「ドロレス様はその様な事はなさっていません!
婚約している身で、婚約者を奪おうとする者に対し、忠告をしただけです。
他の事は全部、取り巻きがした事よ!」

「フン、取り巻きはおまえに指示されたと言うだろうな?
どちらが真実か分からぬなら、好きに言える」

「それなら、今一度、《密偵》を雇い、ドロレス様と取り巻きたちを見張らせて下さい!
どちらが真実か、直ぐに分かります!」

「ああ、そうしよう、大国の王女に何かあれば、婚約破棄所では済まぬからな」

レオンの言葉に、わたしはギクリとした。

「話はそれだけか?」

「いいえ、ここからが本番です。
レオン様、どうかドロレス様の事情をお聞き下さい___」

わたしはドロレスがレオンとの縁談を受ける代わりに、エミリアンを後継ぎにすると、公爵に約束させた事を話した。

「成程、それで、婚約破棄を避けたいというのだな?
だが、それならば、自分で頼むのだな、エリザに言わせたのでは真意は測れん。
おまえが私に頭を下げられるなら、考えてやってもいい___」

レオンの言葉が終わらない内に、ドロレスがスッと進み出て、その場に跪いた。
美しい黒髪が床を擦るのも構わずに、その頭を深く下げた。

「レオン殿下、どうか、私との婚約を破棄なさらぬよう、お願い致します。
アンジェリーヌ様に、レオン様の婚約者だと名乗り出て、近付かない様忠告した事は認め、謝ります。
機会を頂けましたら、アンジェリーヌ様にも謝罪致します。
私に至らぬ所がありましたら、これからより一層、努力致します。
どうか、私とエミリアンを御助け下さい___」

レオンは茫然とドロレスを見ていた。
ややあって、漸く我に返ったのか…

「わ、分かった、この事は考えてやる、おまえたちに悪い様にはしない。
だから、いい加減に顔を上げろ!汚れるではないか!
この様な事は、二度とするな!おまえが本気で《王子妃》になりたいのならな___」

レオンがドロレスの手を掴み、彼女を立たせた。
怒った様な顔なのに、どことなく、赤い…

「私は《王子妃》など、過ぎた望みは持っていません。
エミリアンが学院を卒業すれば、公爵も認めるのではないかと…
私との婚約は、その時までで構いません…」

「馬鹿を言うな!エミリアンが卒業する頃には、私は二十四歳ではないか!
私は学院卒業と同時に結婚したい!子供は沢山欲しい!
だが、愛妾は持つ気はないぞ!」

レオンが赤い顔で将来設計を語るのを、ドロレスはポカンと見ている。

「そうでしたか、殿下の御考えも知らず、勝手を申しました。
無理にはお願い出来ません…」

「いや、だから、私とおまえが結婚すれば何も問題は無い!
まともな教育係を付ける様に言っておく、それで良いな!」

「殿下、感謝致します」

「殿下は止めろ、レオンで良い…ドロレス」

ドロレスが笑みを見せる。
それは、何処かエミリアンに似ていた。
レオンはまた、ぼうっと見惚れている様だった。

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