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「あなたたちは、そこで待ちなさい」
修道女は部屋には入らず、扉の前で待つ様だった。
わたしが大司教に続いて部屋に入ろうとすると、あの修道女が顔を上げた。
何かを訴える様に、わたしを見つめてくる。
気になりながらも、わたしは「後でね」と小さく言い、部屋に入った。
お茶と菓子が運ばれ、メイドが部屋を出ると、わたしは姿勢を正した。
「何度もお聞きして申し訳ないのですが、姉、グレースの事です。
姉の愛する者が誰か分かったのですが、その方は《高貴な方》とは言えず…
姉がどうして、大司教様に《高貴な方》と申したのかが分からなくて…」
「《高貴な方》ではありません、《とても高貴な方》です、
きっと、口に出すのも畏れ多いと思ったのでしょう」
大司教は目を細めて微笑む。
だが、わたしは少し違和感を持った。
《高貴な方》《とても高貴な方》、わたしにはあまり違いが無かったが、
大司教には拘りがある様だ。
それに、《とても高貴な方》ならば、益々誰の事を言っているのか分からない。
「ですが、姉の相手は彼しか考えられません、姉は一途ですから」
「その通りです、グレース様は大変に信仰心が篤く、全てを神に捧げ、
修道女となる事を決心なさっていました___」
「ええ!?」
思わぬ事に、わたしはつい声を上げていた。
「姉がそんな事を!?とても信じられません…」
修道女になれば、ランメルトとの結婚は避けられるが、責任感の強い姉が、
そんな風に全てを放り出すとは思えなかった。
それに、ランメルトと結婚すれば、想いは叶わないまでもクレモンの傍にいられるが、
修道女となり神殿に入るとなれば、会う事も出来なくなる。
姉の様子からは、とても信じられなかった。
「信じられなくとも、神は全てをご存じです。
神に全てを捧げると誓ったものの、迷いが生じたのでしょう、
彼女は神の怒りを買い、遂には正気を失ってしまった…
神よ、憐れなグレースにご加護を___」
大司教は十字を切り、神妙に祈った。
そんな事で神の怒りが?それでは、あまりに厳し過ぎる。
陵辱の話をしても、神の怒りと言うだろうか?
混乱する頭の中を整理する中、わたしは《それ》に気付いた。
「待って下さい、姉が修道女になろうとしていたと言うのであれば、
《とても高貴な方》というのは…」
「神と等しい者の事でしょう」
大司教がゆったりと笑う。
一見、善人にも見えるその笑みだが、わたしはぞっとした。
「姉は、その《とても高貴な方》に、身を捧げたのですか?」
「はい、そう聞いています、彼女は神に純潔を捧げ、
清浄の乙女となられる事を誓ったのです___」
瞬間、頭の中で、バラバラだった欠片が重なった。
「あなたが、お姉様を陵辱したのね!!」
わたしは叫び、立ち上がった。
目の前の大司教は全く動じていない。
「陵辱などではありません、グレース自ら、その美しい体を差し出したのです」
「嘘だわ!!お姉様には愛する人がいたのよ!そんな事をする筈がないわ!!」
酷い!!絶対に許さない___!!
叫んだ時、バン!!と大きく扉が開かれ、ランメルトと数人の衛兵が入って来た。
わたしは驚き、一瞬固まっていた。
だが、大司教は違った、彼はこの機を逃さなかった。
「ああ!!お止め下さい!王子妃様――!!」
長ソファに崩れ落ち、喚き出した。
まるで、わたしが何かをしたかの様に…
「大司教、どうなさったのですか!?王子妃様が何か…」
「王子妃様が、このナイフで私を…」
大司教は、血の付いた小型のナイフをテーブルに投げた。
大司教の左手の甲には、赤い血が一筋走っている。
わたしは状況を察し、青くなった。
「私は神に仕える身、この様な事をなされば、必ずや天罰が下るでしょう!」
皆が疑惑の目でわたしを見た。
「ち…、違います!わたしは何もしていません!
これは、大司教様がご自分でなさった事です…」
わたしは必死で否定し、ランメルトに目で訴えた。
だが、ランメルトは冷ややかに一瞥しただけで、わたしから顔を反らすと、
「王子妃を牢へ連れて行け!」と命じたのだった。
そんな!!
「ランメルト様___!!」
わたしの叫びは無視された。
恰幅の良い衛兵たちに腕を掴まれ、わたしは抵抗も出来ず、
引き摺られる様にして部屋を出されたのだった。
◇
わたしは弁明の機会すら与えられず、地下牢に入れられた。
ランプの灯りはあるものの、薄暗く、酷く静かだ。
王子妃という事で、手荒な真似はされず、十分な食事が運ばれ、寝台も布団もあった。
だが、それが何の慰めになるというのだろう?
わたしは大司教の命を狙った極悪人にされてしまったのだ!
大司教はわたしの事を、「悪魔に取り憑かれている」とか、
「処刑でしか救われない」とか、好き勝手に言っているらしい。
大司教こそ、悪魔であり、極悪人に違いないというのに!!
わたしは自分がどうなろうと構わないが、大司教の罪だけは明らかにしたい___!
強く願いながらも、それをする事は出来ないと気付いた。
大司教を糾弾する事は、姉の不名誉が世間に晒される事でもあるからだ。
そうなれば、姉は二度も辱められるのだ!
それに、愛するクレモンに知られたら…
「お姉様はわたしを許してくれないわ…」
わたしは、ただ、暗殺未遂を否定するしかなかった。
「お姉様…ごめんなさい…」
何も出来ず、大司教に陥れられた自分が不甲斐なかった。
一瞬、確かに、大司教に対し、殺意を持った。
殺してやりたい程に憎かった。
もし、ナイフを持っていたら、そうしていたかもしれない。
いや、こうなるのであれば、そうしていれば良かったのだ___!
「許せる筈がないもの…!!」
愛する姉を陵辱し、幸せを奪ったのだ!!
姉は何も悪い事はしていないのに___
「ランメルト様…」
無意識に、その名を呼んでいた。
彼は信じてくれなかったというのに…
自分でも愚かしいと思う。
それでも、わたしには彼だけだった。
◇◇
地下牢に入って二日目の夜、衛兵たちが現れ、それを告げた。
「王子妃シャルリーヌ!大司教暗殺未遂により、王子妃を剥奪!
ランメルト殿下とは離縁とし、追放とする!」
離縁!?追放!?そんな___!!
わたしは覚悟していた事だというのに、それを前にし、愕然となった。
わたしが立ち尽くしている間にも衛兵たちは動き、
わたしを牢から引っ張り出すと、地下牢から地上へと連れて行った。
外は夜の静寂に包まれている、月や星明かりも普段と変わらない。
直ぐ近くに、王宮のものとは思えない、簡素な馬車が停まっていた。
御者席には衛兵が二人座っている。
「早く乗れ!」
わたしは追い立てられる様にして、馬車に乗った。
これで、最後___!
そう思うと、わたしは堪らなくなり、カーテンを引き、外を見た。
暗い中に聳える宮殿を見ると、想いは溢れた。
ランメルト様___!!
この時になっても、わたしの頭にあるのは、ただ一人、彼の姿だった。
あの頃の優しいランメルト。
姉が転落してからは人が変わってしまったけど、どれだけ冷たく、邪険にされても、
わたしは彼を嫌う事は出来なかった。
姉の代わりでも、抱かれている時は幸せだった。
わたしで達する彼が、愛おしくて…
まさか、こんな風に別れが来るとは思っていなかった。
漸く、少しだが、歩み寄ってくれていたのに、こんな事になるなんて…
もっと、彼の為にしてあげられる事があったのではないか?
もっと、もっと、一緒に居たかった___!
馬車はもう一両の馬車と合流し、王宮を出た。
静まり返った夜の王都を駆ける。
追放先が何処なのか、わたしには見当も付かなかったが、何処でも一緒の様な気がした。
ランメルト様も、家族も、誰もいない場所なんて___
想像していたよりも早くに、馬車が歩みを止めた。
夜も深いからだろうか?
不思議に思い、カーテンの隙間から覗くと、
薄暗いながらも、何処か見覚えのある場所だと気付いた。
扉が開けられ、わたしは馬車を降りる。
そして、目の前に聳える館を見て、わたしは息を飲んだ。
ここは、王室所有の、別邸だ___!
いつか、嘗ての侍女、ジェーンを訪ねて来た事がある。
どうして、別邸に?
夜中だから、かしら?
それなら、朝に出発すれば良かったのにとも思ったが、
朝に王宮を出れば、王都の者たちの見世物になり、噂の的になる事は避けられないだろう。
それを避ける為に強行したのだろうか?
合流した馬車には、わたしの見張りが乗っているのかと思っていたが、
御者をしていた衛兵の一人を置き、他は誰も降りては来ず、
二両の馬車はそのまま敷地の奥へと向かった。
「こちらです」
御者をしていた衛兵が、わたしを館に促した。
王宮を出た時とは違い、物腰が柔らかく、わたしは困惑した。
だが、それだけではなかった…
「シャルリーヌ様、お待ちしておりました」
執事が迎えてくれ、館の中に入ると、使用人たちがズラリと並び、頭を下げていた。
修道女は部屋には入らず、扉の前で待つ様だった。
わたしが大司教に続いて部屋に入ろうとすると、あの修道女が顔を上げた。
何かを訴える様に、わたしを見つめてくる。
気になりながらも、わたしは「後でね」と小さく言い、部屋に入った。
お茶と菓子が運ばれ、メイドが部屋を出ると、わたしは姿勢を正した。
「何度もお聞きして申し訳ないのですが、姉、グレースの事です。
姉の愛する者が誰か分かったのですが、その方は《高貴な方》とは言えず…
姉がどうして、大司教様に《高貴な方》と申したのかが分からなくて…」
「《高貴な方》ではありません、《とても高貴な方》です、
きっと、口に出すのも畏れ多いと思ったのでしょう」
大司教は目を細めて微笑む。
だが、わたしは少し違和感を持った。
《高貴な方》《とても高貴な方》、わたしにはあまり違いが無かったが、
大司教には拘りがある様だ。
それに、《とても高貴な方》ならば、益々誰の事を言っているのか分からない。
「ですが、姉の相手は彼しか考えられません、姉は一途ですから」
「その通りです、グレース様は大変に信仰心が篤く、全てを神に捧げ、
修道女となる事を決心なさっていました___」
「ええ!?」
思わぬ事に、わたしはつい声を上げていた。
「姉がそんな事を!?とても信じられません…」
修道女になれば、ランメルトとの結婚は避けられるが、責任感の強い姉が、
そんな風に全てを放り出すとは思えなかった。
それに、ランメルトと結婚すれば、想いは叶わないまでもクレモンの傍にいられるが、
修道女となり神殿に入るとなれば、会う事も出来なくなる。
姉の様子からは、とても信じられなかった。
「信じられなくとも、神は全てをご存じです。
神に全てを捧げると誓ったものの、迷いが生じたのでしょう、
彼女は神の怒りを買い、遂には正気を失ってしまった…
神よ、憐れなグレースにご加護を___」
大司教は十字を切り、神妙に祈った。
そんな事で神の怒りが?それでは、あまりに厳し過ぎる。
陵辱の話をしても、神の怒りと言うだろうか?
混乱する頭の中を整理する中、わたしは《それ》に気付いた。
「待って下さい、姉が修道女になろうとしていたと言うのであれば、
《とても高貴な方》というのは…」
「神と等しい者の事でしょう」
大司教がゆったりと笑う。
一見、善人にも見えるその笑みだが、わたしはぞっとした。
「姉は、その《とても高貴な方》に、身を捧げたのですか?」
「はい、そう聞いています、彼女は神に純潔を捧げ、
清浄の乙女となられる事を誓ったのです___」
瞬間、頭の中で、バラバラだった欠片が重なった。
「あなたが、お姉様を陵辱したのね!!」
わたしは叫び、立ち上がった。
目の前の大司教は全く動じていない。
「陵辱などではありません、グレース自ら、その美しい体を差し出したのです」
「嘘だわ!!お姉様には愛する人がいたのよ!そんな事をする筈がないわ!!」
酷い!!絶対に許さない___!!
叫んだ時、バン!!と大きく扉が開かれ、ランメルトと数人の衛兵が入って来た。
わたしは驚き、一瞬固まっていた。
だが、大司教は違った、彼はこの機を逃さなかった。
「ああ!!お止め下さい!王子妃様――!!」
長ソファに崩れ落ち、喚き出した。
まるで、わたしが何かをしたかの様に…
「大司教、どうなさったのですか!?王子妃様が何か…」
「王子妃様が、このナイフで私を…」
大司教は、血の付いた小型のナイフをテーブルに投げた。
大司教の左手の甲には、赤い血が一筋走っている。
わたしは状況を察し、青くなった。
「私は神に仕える身、この様な事をなされば、必ずや天罰が下るでしょう!」
皆が疑惑の目でわたしを見た。
「ち…、違います!わたしは何もしていません!
これは、大司教様がご自分でなさった事です…」
わたしは必死で否定し、ランメルトに目で訴えた。
だが、ランメルトは冷ややかに一瞥しただけで、わたしから顔を反らすと、
「王子妃を牢へ連れて行け!」と命じたのだった。
そんな!!
「ランメルト様___!!」
わたしの叫びは無視された。
恰幅の良い衛兵たちに腕を掴まれ、わたしは抵抗も出来ず、
引き摺られる様にして部屋を出されたのだった。
◇
わたしは弁明の機会すら与えられず、地下牢に入れられた。
ランプの灯りはあるものの、薄暗く、酷く静かだ。
王子妃という事で、手荒な真似はされず、十分な食事が運ばれ、寝台も布団もあった。
だが、それが何の慰めになるというのだろう?
わたしは大司教の命を狙った極悪人にされてしまったのだ!
大司教はわたしの事を、「悪魔に取り憑かれている」とか、
「処刑でしか救われない」とか、好き勝手に言っているらしい。
大司教こそ、悪魔であり、極悪人に違いないというのに!!
わたしは自分がどうなろうと構わないが、大司教の罪だけは明らかにしたい___!
強く願いながらも、それをする事は出来ないと気付いた。
大司教を糾弾する事は、姉の不名誉が世間に晒される事でもあるからだ。
そうなれば、姉は二度も辱められるのだ!
それに、愛するクレモンに知られたら…
「お姉様はわたしを許してくれないわ…」
わたしは、ただ、暗殺未遂を否定するしかなかった。
「お姉様…ごめんなさい…」
何も出来ず、大司教に陥れられた自分が不甲斐なかった。
一瞬、確かに、大司教に対し、殺意を持った。
殺してやりたい程に憎かった。
もし、ナイフを持っていたら、そうしていたかもしれない。
いや、こうなるのであれば、そうしていれば良かったのだ___!
「許せる筈がないもの…!!」
愛する姉を陵辱し、幸せを奪ったのだ!!
姉は何も悪い事はしていないのに___
「ランメルト様…」
無意識に、その名を呼んでいた。
彼は信じてくれなかったというのに…
自分でも愚かしいと思う。
それでも、わたしには彼だけだった。
◇◇
地下牢に入って二日目の夜、衛兵たちが現れ、それを告げた。
「王子妃シャルリーヌ!大司教暗殺未遂により、王子妃を剥奪!
ランメルト殿下とは離縁とし、追放とする!」
離縁!?追放!?そんな___!!
わたしは覚悟していた事だというのに、それを前にし、愕然となった。
わたしが立ち尽くしている間にも衛兵たちは動き、
わたしを牢から引っ張り出すと、地下牢から地上へと連れて行った。
外は夜の静寂に包まれている、月や星明かりも普段と変わらない。
直ぐ近くに、王宮のものとは思えない、簡素な馬車が停まっていた。
御者席には衛兵が二人座っている。
「早く乗れ!」
わたしは追い立てられる様にして、馬車に乗った。
これで、最後___!
そう思うと、わたしは堪らなくなり、カーテンを引き、外を見た。
暗い中に聳える宮殿を見ると、想いは溢れた。
ランメルト様___!!
この時になっても、わたしの頭にあるのは、ただ一人、彼の姿だった。
あの頃の優しいランメルト。
姉が転落してからは人が変わってしまったけど、どれだけ冷たく、邪険にされても、
わたしは彼を嫌う事は出来なかった。
姉の代わりでも、抱かれている時は幸せだった。
わたしで達する彼が、愛おしくて…
まさか、こんな風に別れが来るとは思っていなかった。
漸く、少しだが、歩み寄ってくれていたのに、こんな事になるなんて…
もっと、彼の為にしてあげられる事があったのではないか?
もっと、もっと、一緒に居たかった___!
馬車はもう一両の馬車と合流し、王宮を出た。
静まり返った夜の王都を駆ける。
追放先が何処なのか、わたしには見当も付かなかったが、何処でも一緒の様な気がした。
ランメルト様も、家族も、誰もいない場所なんて___
想像していたよりも早くに、馬車が歩みを止めた。
夜も深いからだろうか?
不思議に思い、カーテンの隙間から覗くと、
薄暗いながらも、何処か見覚えのある場所だと気付いた。
扉が開けられ、わたしは馬車を降りる。
そして、目の前に聳える館を見て、わたしは息を飲んだ。
ここは、王室所有の、別邸だ___!
いつか、嘗ての侍女、ジェーンを訪ねて来た事がある。
どうして、別邸に?
夜中だから、かしら?
それなら、朝に出発すれば良かったのにとも思ったが、
朝に王宮を出れば、王都の者たちの見世物になり、噂の的になる事は避けられないだろう。
それを避ける為に強行したのだろうか?
合流した馬車には、わたしの見張りが乗っているのかと思っていたが、
御者をしていた衛兵の一人を置き、他は誰も降りては来ず、
二両の馬車はそのまま敷地の奥へと向かった。
「こちらです」
御者をしていた衛兵が、わたしを館に促した。
王宮を出た時とは違い、物腰が柔らかく、わたしは困惑した。
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