こんな私が恋に落ちるまでの物語

悠日里

文字の大きさ
6 / 11
第二話 縁

3

しおりを挟む
「いってらっしゃいっ」

 私が手を振ると、奈菜はありがとうと言いながらも謝るように手を合わせて、西日が差し込む教室を出て行った。
 気にしなくてもいいのにな。でも彼氏になった先輩が、今日も部活を見に来てくれるらしい。奈菜の足取りに、自分の心も軽くなったのだった。

 さぁ、真白が待っている。急ごう。

 初等部は中等部よりも終業が一時間ほど早い。登下校には電車を利用するが、真白には近所に住む友達が居るので一緒に帰ってもらってもいいのだけれど、誰も居ない家に帰るのが怖いと言い張り、私を待っていてくれている。

「お待たせ真白。その本、もう少し読んでいく?」
「青ねーちゃん……っ」

 待ち合わせ場所にしている学院の図書館へ入ると、真白は本を眺めていた顔を上げた。館内にはテーブル付きだったりと色んなタイプの座席があるが、真白はこのふかふかソファー。出入り口横がいつもの定位置で、今日は星座でも惑星でもなく、動物の生態について書かれた本を数冊借りて読んでいたようだ。

「ううん。今日もりょうくんたちと遊ぶから」
「わ。そうだったんだ、いいね。じゃあ帰ろう」
「うん……っ」

 そう頷いてぎゅっと繋いでくる手を、私は優しく握り返した。

 それから私たちは、いつものようにカウンターへ声を掛け、エントランスホールに出ると見知った顔に出会った。

「居た!」

 と言っても、私にとってだ。しかも見知ったのは、今日である。

「良かった……あっ、いや、ごめんっ。お昼、行けなくてごめん!」
「……青ねーちゃん、誰この人。知ってるの?」
「うん、知ってるよ。えっと……サッカーボール先輩?」

「何それ?」と言って、真白は頭を下げている先輩に眉根を寄せる。私も正直、どう説明したらいいのかわからない。

「名前、青ちゃんって言うんだね。青ちゃん、今日はごめんね。待ったよね?」
「待っててと仰っていたので」

 先輩は私の言葉に、ぎくりと反応した。棘を含んだつもりではないが、意地悪だったかな?
 ぐいぐいと繋いでいる手を引っ張り出した真白に、私は微笑んでうなずいた。

「でも謝らないでください。来られない事情があったと思っていましたから。では急いでいますので、また」

「失礼します」と私は何か言いたげにしている先輩に会釈をして、真白を連れ、図書館を後にした。

 だけれど何で私、先輩に“また”と言ってしまったのだろう……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...