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第四話 障
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放課後になりスマホを起動してみると、真白が早退していた事がわかった。
発熱があったらしい。急いで帰宅すると、父も慌てた様子で階段を駆け下りてきた。
「おかえり青っ。すまない行って来る!」
「うんっ。いってらっしゃいっ」
仕事に戻らないといけないからだ。家を出る父と入れ替わるように、私は玄関に上がった。
手洗いを済ませた後、2階へと向かい、息を整え寝室の扉をそっと開けると、真白が私に気付いて、目をこすりながら身体を起こしたのだった。
「青ねーちゃん……? わぁい。青ねーちゃんだぁ……」
「真白。ごめん、起こしちゃったね。どこか痛いところはない?」
「ううん。ちょっと頭がフラフラするだけ……。でも、お腹空いた……給食の途中で帰っちゃったから……」
「そっか。じゃあ、軽く食べられるもの作ってくるね」
お粥よりも短時間で出来る、雑炊を作ろう。ご飯はお弁当用に冷凍しておいたものがあるし、卵とネギもある。
「青ねーちゃん、行っちゃうの……?」
「すぐ出来るよ。アクアスエット、ここに置いておくね。えっと、ゾウさんは……落ちちゃってる。それじゃあ真白くん、ゾウさんと一緒に待つぱおんっ」
「うんっ」
私は5分ほど時間をもらい、たまご雑炊と種を除いたスイカをひと口大に切って用意した。
お盆を持って寝室に戻ると、真白はゾウのぬいぐるみと横になったままタブレットをぼーっと眺めていた。退屈そうだけれど、そう感じられる余裕があるなら良かったと思った。
「ごちそうさまでした。はぁ~美味しかったぁ」
「わぁっ。全部食べちゃうなんて偉いねぇ、真白」
「えへへ。ねぇ青ねーちゃん……ここに居てね……?」
「うん、わかった。居るね」
お腹が満たされた真白は、再びぬいぐるみを抱きしめ布団に潜り込んだ。
父の連絡の通り咳も出ていないし、こうしてご飯も問題なく食べられているなら、お腹の調子も大丈夫そう。
うん。体温も平熱に戻ってきてるし、思ったより心配ないかも。
「私、寝ちゃってたんだ……」
読んでいたはずの小説が、うつ伏せになって寝ていた。ページが折れていないかと、咄嗟に手を伸ばして取るけれど、良かった。寝癖はどこにも付いていなかった。
「ええっと……私、30分も居眠りしちゃってたんだ」
「う、うぅ」
「真白? どこか苦し――……え。何、これ……」
私は目を疑った。魘される真白の全身を、黒い靄が覆っていたからだ。
「やめてっ。真白にまで……っ、本当にやめてっ!」
うねうねと蠢きながら真白の腹部の上で留まる靄は、球体に無数の足の生えた、まるでプラズマボールに流れる静電気のような姿だった。
そのもやもやしたものが、全身へと靄を広げているように見えた私は、真白の腹部に乗ったそれをまず退かさなければと急いた。
「……っ、離れて。真白から離れて!」
中に手を入れると、靄で出来たうねうねが私の腕に絡め付いてくる。その感触は、コートやセーターを脱いだ時に発生する静電気の膜のようだった。
私は手を繰り返し振った。両手を使って、真白の身体から靄を一生懸命振り払った。
「……青ねーちゃん? 青ねーちゃんっ」
「真白っ」
真白が抱き付いてきた。何度も私を呼んで、震えている。
靄はなくなっていた。私は震えるその背中を擦りながら、自分自身も真白に縋っていた気がした。
「僕、怖い夢を見たんだ……」
「そっかそっか。もう大丈夫だよ真白……。けど、そんなに怖い夢だったの?」
「うん……。黒い何かが追いかけて、僕、必死で逃げたんだけど、青ねーちゃんが」
「え? 私?」
真白は顔を上げる。揺れる瞳の中に、頼りない表情の私が映った。
「うん……。青ねーちゃんが捕まっちゃって、青ねーちゃんが黒く固まったまま動かなくなっちゃったんだ……」
発熱があったらしい。急いで帰宅すると、父も慌てた様子で階段を駆け下りてきた。
「おかえり青っ。すまない行って来る!」
「うんっ。いってらっしゃいっ」
仕事に戻らないといけないからだ。家を出る父と入れ替わるように、私は玄関に上がった。
手洗いを済ませた後、2階へと向かい、息を整え寝室の扉をそっと開けると、真白が私に気付いて、目をこすりながら身体を起こしたのだった。
「青ねーちゃん……? わぁい。青ねーちゃんだぁ……」
「真白。ごめん、起こしちゃったね。どこか痛いところはない?」
「ううん。ちょっと頭がフラフラするだけ……。でも、お腹空いた……給食の途中で帰っちゃったから……」
「そっか。じゃあ、軽く食べられるもの作ってくるね」
お粥よりも短時間で出来る、雑炊を作ろう。ご飯はお弁当用に冷凍しておいたものがあるし、卵とネギもある。
「青ねーちゃん、行っちゃうの……?」
「すぐ出来るよ。アクアスエット、ここに置いておくね。えっと、ゾウさんは……落ちちゃってる。それじゃあ真白くん、ゾウさんと一緒に待つぱおんっ」
「うんっ」
私は5分ほど時間をもらい、たまご雑炊と種を除いたスイカをひと口大に切って用意した。
お盆を持って寝室に戻ると、真白はゾウのぬいぐるみと横になったままタブレットをぼーっと眺めていた。退屈そうだけれど、そう感じられる余裕があるなら良かったと思った。
「ごちそうさまでした。はぁ~美味しかったぁ」
「わぁっ。全部食べちゃうなんて偉いねぇ、真白」
「えへへ。ねぇ青ねーちゃん……ここに居てね……?」
「うん、わかった。居るね」
お腹が満たされた真白は、再びぬいぐるみを抱きしめ布団に潜り込んだ。
父の連絡の通り咳も出ていないし、こうしてご飯も問題なく食べられているなら、お腹の調子も大丈夫そう。
うん。体温も平熱に戻ってきてるし、思ったより心配ないかも。
「私、寝ちゃってたんだ……」
読んでいたはずの小説が、うつ伏せになって寝ていた。ページが折れていないかと、咄嗟に手を伸ばして取るけれど、良かった。寝癖はどこにも付いていなかった。
「ええっと……私、30分も居眠りしちゃってたんだ」
「う、うぅ」
「真白? どこか苦し――……え。何、これ……」
私は目を疑った。魘される真白の全身を、黒い靄が覆っていたからだ。
「やめてっ。真白にまで……っ、本当にやめてっ!」
うねうねと蠢きながら真白の腹部の上で留まる靄は、球体に無数の足の生えた、まるでプラズマボールに流れる静電気のような姿だった。
そのもやもやしたものが、全身へと靄を広げているように見えた私は、真白の腹部に乗ったそれをまず退かさなければと急いた。
「……っ、離れて。真白から離れて!」
中に手を入れると、靄で出来たうねうねが私の腕に絡め付いてくる。その感触は、コートやセーターを脱いだ時に発生する静電気の膜のようだった。
私は手を繰り返し振った。両手を使って、真白の身体から靄を一生懸命振り払った。
「……青ねーちゃん? 青ねーちゃんっ」
「真白っ」
真白が抱き付いてきた。何度も私を呼んで、震えている。
靄はなくなっていた。私は震えるその背中を擦りながら、自分自身も真白に縋っていた気がした。
「僕、怖い夢を見たんだ……」
「そっかそっか。もう大丈夫だよ真白……。けど、そんなに怖い夢だったの?」
「うん……。黒い何かが追いかけて、僕、必死で逃げたんだけど、青ねーちゃんが」
「え? 私?」
真白は顔を上げる。揺れる瞳の中に、頼りない表情の私が映った。
「うん……。青ねーちゃんが捕まっちゃって、青ねーちゃんが黒く固まったまま動かなくなっちゃったんだ……」
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