こんな私が恋に落ちるまでの物語

悠日里

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第四話 障

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「青ちゃんっ、今日もいいお天気だねっ?」

 翌日も図書館でお昼を食べていたら、先輩がやって来た。
 私を覗き込む、この朗らかな顔を見るのも、もう3回目である。

「……先輩、今日も来たんですね」
「ちょっと、何その呆れた言い方。ま、いっか。それよりもこれ、青ちゃんに」
「え?」

 先輩が私に差し出したのは、ナポリタンパンだった。今日も麗しい見た目をしている……。

「青ちゃん、これ食べたかったでしょ?」
「なっ。た、食べたいって、私にはお弁当がありますから……っ」
「うんっ。だから取り替えっこ。青ちゃんのお弁当は、この俺が頂戴するから大丈夫! 問題な~い」
「問題ないって……、ちょっとそれっ」

 先輩は私からお弁当をさらうと、ミートボールをパクっと食べた。

「うっっま! 青ちゃん料理上手だね! うめぇぇ~っ」
「よく他人が口にしている最中の物を食べられますね……」
「何、青ちゃん。軽蔑した?」
「はい」
「はっきり言うじゃん。あははっ」
「何が可笑しいんです?」
「いや。それでいいって思うから、俺は」

 小首を傾げる私に、先輩は優しく目を細めて続けた。

「青ちゃんってさ、優しいよね。思いやりがあるって言うか。いつも周りが過ごしやすいように、環境を整える事に精一杯って感じで」
「……何が言いたいんです? 全然褒められている気がしません」
「うーん、ごめん。青ちゃんがすっごく優しいのは、がちなんだって俺は思ってるから。それを前提に聞いて欲しいんだけど……俺はね、もっと青ちゃんが自分を優先にしていいと思ってる」
「私が優先?」

 先輩は黙ってうなずく。

「昨日、俺が前から青ちゃんの事を知ってるって言ったよね?」
「急に何の話ですか? 興味ありません」
「まぁまぁ、聞いてって。青ちゃんと一緒で俺にもね、弟が居るんだけどさ。母さんに頼まれて、桜草公園まで迎えに行った事があるんだ。去年の10月くらいだっけな……そこで初めて、青ちゃんを見た」
「えっ。その桜草公園って」

 家の近所だ。

「うん。で、その時も青ちゃんしてた。買い物から帰った所なんだと思うけど、おっきい荷物背負ってた。サンタクロースかってくらいに。しかも、転んで泣いてる真白くんの相手までしてた」

 真白が転ぶ事はあまりないから、いつの話をしているのかすぐにわかった。

「その時も、学院で見かける時も遠巻きに見てだけどさ、思ったんだ俺。いつもこの子って、自分の事を二の次にするんだなって」

 痛い所を突かれた気がした。それで気付いたら私は、まるで弁解するみたいに早口になって喋っていた。

「び、貧乏くじ引いてるって思われるかもしれませんが、自分ではっ」
「そうであってもだよ、青ちゃん? 他人の問題ものまで背負わなくてもいいよ。家族分の、おっきい荷物も」

「本人のなんだからね」という先輩の言葉を聞いて、私ははっとした。肩や背中に圧し掛かる痛みを想起した。

 そっか……私が頑なに守り通しているのは、自己犠牲。自分のエゴでしかないんだ。
 なら、私が背負うべきなのは、きっとこのエゴだ。

「先輩……私、どうしたら……」
「単純明快だよ、青ちゃんっ。そうやって、今みたいに他人ひとに頼る事っ。それからね――」
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