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うっかり者の娼婦見習いは眠れる龍を起こす~カイとヒューゴ
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(6話 娼館を去った1ヶ月後)
カイは夜間巡回のシフトを増やしていた。
騎士団員のシフトも替わって、かなりきつい任務をしている。
「おい、大丈夫か?最近詰めすぎじゃねえ?」
ヒューゴが気遣ってくれる。
「働いてる方が気が紛れるから。どうせ、夜に家にいても寝付けない。」
「昼の勤務も入れてるだろ。」
「俺はお前らと違って体力使わねえし諜報なんか一週間詰めっぱなしとかもザラだから慣れてる」
「なんかあったのか、って聞いて言うような奴だとは思ってないけどよ」
少し言い淀んで、肩に手を置く。
「たまには飲みに行かねえか」
夕食を兼ねて酒場に行く。
女性のいるような店には二人とも足が向かず、むさ苦しい親父のいる煮込み料理屋にした。
頑固親父の出す煮込み料理、おしゃれなサラダなどなく茶色いメニューと脂しかない。
「はは、こういう店には女連れでは来れないな」
カイが言うとヒューゴが早く入ろうと背中を小突いた。
カイは酒に強いし、酔っても乱れない。
それが。
机に突っ伏している。
「お前寝てなかったのか?酔いが回りすぎだろ」
「もう、女なんかわけわからんわ……なんであの流れで……なんで?俺が何したって言うんだよ、いや、確かに調子にのったかもしれへんけどな、なんやねんあいつ……」
グダグダである。
「フラれた、のか?」
「フラれてへんわ!」
さっぱりわからない。
「お前もみっともなく凹んでたやろ。マリアさんに逃げられた時。あれフラれてたんか?」
「フラれてねーよ!好きって言われたし、」
「言い逃げで逃げられたんや、逃げ、」
更に酒を飲む。突っ伏す。
「なんで自分で言って自分でダメージ受けてんだ?」
「もうしばらく女はええわ。」
「そうだな。恋愛はうまく行かないこともあるから。いざとなったら娼館にお世話になれば」
「誰が二度と行くか!!
アホーーーー!!しかもお前なんで恋愛上級者みたいな、言い方すんねん」
慰めたらキレられた!なにこれ!理不尽!
「もしかして娼婦にガチ惚れ……」
「言うな」
「え、マジか」
「惚れてへんわ!」
「お前動揺したらイントネーション変わるよな」
「惚れてナンカナイヨ」
ーーーーーーー
「なあ、参考までに、一応。
友達の話なんやけど娼婦に惚れるってアホやと思うか」
「いや、そういうのは思いがけなく、なんというか。恋、とか。本人もわからないもんだと思うし」
男二人でしかもこいつと恋の話とか気持ち悪い、
と二人同時に思ったらしく、しばらく無言で手酌で飲んだ。
「オレの、友達……にも届かない貴族令嬢に、惚れちまったやつがいるから、そういうのは何だからおかしいとかは思わない」
照れ臭いのごまかすように二人とも更に酒をあおる。
二人とも同じことを考えていた
(お前俺以外に友達いないくせに……)
カイは夜間巡回のシフトを増やしていた。
騎士団員のシフトも替わって、かなりきつい任務をしている。
「おい、大丈夫か?最近詰めすぎじゃねえ?」
ヒューゴが気遣ってくれる。
「働いてる方が気が紛れるから。どうせ、夜に家にいても寝付けない。」
「昼の勤務も入れてるだろ。」
「俺はお前らと違って体力使わねえし諜報なんか一週間詰めっぱなしとかもザラだから慣れてる」
「なんかあったのか、って聞いて言うような奴だとは思ってないけどよ」
少し言い淀んで、肩に手を置く。
「たまには飲みに行かねえか」
夕食を兼ねて酒場に行く。
女性のいるような店には二人とも足が向かず、むさ苦しい親父のいる煮込み料理屋にした。
頑固親父の出す煮込み料理、おしゃれなサラダなどなく茶色いメニューと脂しかない。
「はは、こういう店には女連れでは来れないな」
カイが言うとヒューゴが早く入ろうと背中を小突いた。
カイは酒に強いし、酔っても乱れない。
それが。
机に突っ伏している。
「お前寝てなかったのか?酔いが回りすぎだろ」
「もう、女なんかわけわからんわ……なんであの流れで……なんで?俺が何したって言うんだよ、いや、確かに調子にのったかもしれへんけどな、なんやねんあいつ……」
グダグダである。
「フラれた、のか?」
「フラれてへんわ!」
さっぱりわからない。
「お前もみっともなく凹んでたやろ。マリアさんに逃げられた時。あれフラれてたんか?」
「フラれてねーよ!好きって言われたし、」
「言い逃げで逃げられたんや、逃げ、」
更に酒を飲む。突っ伏す。
「なんで自分で言って自分でダメージ受けてんだ?」
「もうしばらく女はええわ。」
「そうだな。恋愛はうまく行かないこともあるから。いざとなったら娼館にお世話になれば」
「誰が二度と行くか!!
アホーーーー!!しかもお前なんで恋愛上級者みたいな、言い方すんねん」
慰めたらキレられた!なにこれ!理不尽!
「もしかして娼婦にガチ惚れ……」
「言うな」
「え、マジか」
「惚れてへんわ!」
「お前動揺したらイントネーション変わるよな」
「惚れてナンカナイヨ」
ーーーーーーー
「なあ、参考までに、一応。
友達の話なんやけど娼婦に惚れるってアホやと思うか」
「いや、そういうのは思いがけなく、なんというか。恋、とか。本人もわからないもんだと思うし」
男二人でしかもこいつと恋の話とか気持ち悪い、
と二人同時に思ったらしく、しばらく無言で手酌で飲んだ。
「オレの、友達……にも届かない貴族令嬢に、惚れちまったやつがいるから、そういうのは何だからおかしいとかは思わない」
照れ臭いのごまかすように二人とも更に酒をあおる。
二人とも同じことを考えていた
(お前俺以外に友達いないくせに……)
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