俺たちの幕間(注:かっこいい人はいません)

仙桜可律

文字の大きさ
3 / 16

リナとマリアの出会い

しおりを挟む
(ヒューゴの実家の商会で店員のアルバイトをしているリナと客として来たマリアの出会い)

「あら、いらっしゃい、マリアちゃん!」

「こんにちは」

すっかり馴染みとなったヒューゴの姉と挨拶をする。

「いらっしゃいませ」

可愛い小柄な店員さんがいた。
「あ、彼女はリナちゃん。時々手伝ってもらってるの。こちらはマリアちゃん。弟の彼女なの」

「弟、さんって、あの、ヒューゴさん?の彼女さん!?
うわあ、お噂はかねがね」

ペコペコするリナ。
つられてマリアも頭を下げる。

(どんな噂なんだろう)

リナもリナで、

カイさんから友達の名前はヒューゴさんしか聞かないから、きっと親友。親友の彼女さんに失礼があってはカイさんの株を落としてしまうかもしれない……!

お互いに、妙な緊張感が漂っていた。
マリアはマリアで。

かわいいわ、もしかしてヒューゴさんのことが……?
お姉さんたちに聞いてもいいかしら。いや、そんなの彼女として自信がないって言ってるようなものだわ。

でも

気になる。

リナさんも、気にしてる。

どうしたらいいのかしら。

(ちょっとお話したいけど何を話していいのかわからない)

お互いがチラチラ見てるのを、ヒューゴ姉は楽しんでみていた。

「ねえ、リナちゃんもう上がっていいわよ。もうすぐ迎えが来るでしょ。お茶入れるわ!マリアちゃんもどうぞ!」

「は、はい!」

二人とも緊張している。

バックヤードで、お茶を入れた。

「マリアちゃんはパン屋さんで働いているの。リナちゃんはお料理を最近頑張っているのよ。」

リナはマリアの凛とした佇まいとお茶を飲む優雅な仕草に見とれた。
(マリアさん、すごく洗練されているわ。平民じゃないみたい。お肌も髪もつやつやで健康的で。もしかして貴族だったのかな)

マリアもリナの可憐な仕草にはっとしていた。

(なんだかリナさん、つい見てしまうわ。お顔の雰囲気は幼いのに、ほのかな色気というのかしら。ほっておけないような)

お互いに、感じていた

(男の人ってこういう女の人が好きなんじゃない?)

(でもいきなり容姿を褒めるのは失礼かもしれない)

(ど、どうしよう。)

(仲良くしたいのに!)

「なんか二人並ぶと良いわね。」
ヒュー姉2がやってきた。

「やっぱり?そう思う?」

「うん、対照的なメイクをしたくなるわねえ。」

姉2は化粧品、美容グッズ担当です。

「ショーに出て欲しいわね」

「いやでもヒューが許さないでしょ」

「リナちゃんもね。番犬と蛇に睨まれては無理か」

「露出度が高くなければいいんじゃない?こういうのはどう?」

二人で内緒話をしている。
紙にデッサンを書いて、電卓を叩いている。

それ、もう、内緒話違いますね。会議です。

「リナさんも恋人がいらっしゃるんですか?」

「ええ、その、恋人というか、はい。」

赤くなるリナが可愛くて、もっと聞き出したくなった。

「どんな方なんですか?」

「素敵な人です!」

か、かわいい。

「騎士で、優しくて、強くてかっこいいんです!」

「わ か る」

「騎士といえば大柄で力で相手を倒す方々が多いんですが、私の好きな人はそうじゃなくて、ヒューッてシュッてしてザッなんです!」

「私の好きな騎士さまも、ヒューッてザンッてドーン!なんです!」

「かっこいいですよねー!訓練のときはクールなんです!でも普段は違うので、ギャップがたまりません!」

手を握りあっている。

「可愛い女子が可愛い会話をしている。お店開いてよかった……!ああ、次はカフェ開きたい!」

「お母様!また商売拡げる気ですかーーー!?」


「リナー、迎えに、」

リナの後ろから抱きついたのは、


「え?」

「え?なんで?」

「カイさん!」

リナが腕を抱き締めて、後ろに首を伸ばしてカイの頬にキスをする。

「ま、待ってリナ、
マリア嬢、これは、その、ちゃうねん、いや、」

「カイさん、リナちゃんの彼氏がカイさんだったんですか」

「あの、さっきのはヒューゴに黙っててください」

「さっきの、とは」

「さっきの、俺の態度です」

「何のことでしょうか」

「ちょっとデレデレしてた、というか」

「ちょっと?」


「かなり、ものすごく」

「ですね」

「うう、君案外、ええ性格してるやん」

「ありがとうございます」

にっこりと優雅に微笑むマリア。
「改めて、リナは俺の嫁でして。仲良くしてくれたら嬉しいです。よろしく。

ただし、
男同士は色々あるので、ヒューゴには黙っててください。お願いします」


「嫁」

マリアが、ぽかんとする。

「はい。」
「そうなんです」
リナが頬を染める。

「よ、め。
人妻、リナさん、だから可愛いのに色っぽいんですね!

ちょっと、詳しく聞きたいことが!」

「マリアさん、やめてやめて。勢いこわいって」

「私もマリアちゃんともっとお話したいんだけど、ダメ?」

リナの上目遣いに弱いとわかっていて、わざと。

「おまえ、それ絶対わかってやってるだろ、仕方ないな。

一時間ほど飲んでくるから、どっかで飯食ってくれば。」

「ありがとう!愛してる!」


「すごいわ!完全にあのドSを操ってるわね」

ヒュー姉が感心している。

「ん?マリアちゃんどうしたの」

「メモとってます。後学のために」

ーーーーーー

「いや~、でもカイくんも少し束縛落ち着いたのかな?リナちゃんに行っておいでって意外だったな」

ヒューゴ兄がお茶を貰いに来ました。
「いやいや、迎えに来る時点で束縛でしょ」

姉たちはブンブン手を振って否定する。

「尾行してどこの店入るか見届けてから、同じ店か近くで酒をのんで時間潰すつもりよ。男が近づかないように」

「それ仕事とやってること同じじゃない」

「なんなら、ヒューゴも連れていったりしてね」

「やだ、まさかそこまで過保護なわけ」

ありうるわ。

「まあ、世間知らずのあの二人なら心配なのわかるけど」

「あの二人?大丈夫よ。世間知らずっていっても弱いわけじゃないわ。
貴族の女と娼婦なんて、女の戦場じゃない。そこらの男より肝が据わってるわよ」

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

駄犬の話

毒島醜女
恋愛
駄犬がいた。 不幸な場所から拾って愛情を与えたのに裏切った畜生が。 もう思い出すことはない二匹の事を、令嬢は語る。 ※かわいそうな過去を持った不幸な人間がみんな善人というわけじゃないし、何でも許されるわけじゃねえぞという話。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

【完結】俺のかっこいい彼女(付き合ってます)

仙桜可律
恋愛
黒の騎士と呼ばれるヒューゴと、元貴族令嬢のマリアは両思いとなった。平民の暮らしに慣れようとするマリアと、奮闘する彼女を見守るヒューゴ。 その二人を焦れったいと思いながらも応援する周囲の人々。 「私のいとしい騎士様」「俺のゆるせないお嬢様」「私のかわいい騎士さま」の続編です。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

処理中です...