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グラン・カフェ開店

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ヒューゴの母の一声で開店したカフェ。
可愛いものに溢れていて、食べ物も美味しく見映えがいい。
女子が吸い込まれて居着く空間であり、ここでリナとマリアが話している間はヒューゴ達は邪魔できない。

そう、リナとマリアはすっかり仲良くなっていた。
会話の内容は自分の好きな人がどれだけかっこいいか、に尽きる。
この手の会話はアイドルや2次元のキャラクターでもよく繰り広げられるらしいが、重要なのは。

双方が同じくらいの熱量を持っていること。

対象は同じでなくていい。むしろ違っている方がいい。

熱量は同等で、お互いの好みに関しては批評しない。

二人とも同年代の友人が居なかったので、他愛もないお喋りを渇望していたというのもある。

ヒューゴの姉たちは、そんな二人を微笑ましく眺めていた。
しかし母は。

「可愛い女子が可愛い場所でお喋りをしている、ああカフェ開いて良かった!

この可愛い女子たちが更にお金を生むためには向かいにハイブランドの男性ビジネススーツの店を入れようかしら、見栄をはって買う人がいるわね。
それとも美容系かしら。自分磨きをする大人女子も素敵だし」

「お母さま、もう商売を拡げるのはやめて本業を!」

ーーーーーーー
その頃、マリアとリナは。
カフェの前を通る人に
『わあー、あの子達かわいい!スイーツとかお洋服の話してるんだろうな』

とか囁かれたり

カップルの男性が見とれて彼女に引っ張られたりしていたが、二人は気付かず。
会話に夢中だ。

「ねえねえ、マリアちゃんが今までで一番ときめいた台詞は?」

「えー、なんだったかしら」

「忘れたの?」

「多くて選べないの!かっこよすぎて目眩がして鼻血出したことあるんだけど、それは記憶が曖昧というか……

こう、ガシッと肩を掴んで
『悪いお嬢様だな、ぜったい許さない』」

きゃーっ、と照れているマリア。
リナは想像した。

(それマリアちゃんが荒い息の狼に食べられてる図しか浮かばないわ)

「マリアちゃんが幸せなら良っか☆」

「リナちゃんは?」

「うーん、時々出る東方のイントネーションにはグッと来るけど、あれはカイさん無意識らしいから、いつも気が抜けないのよね。
口数がもともと多くないし


「え?リナちゃんにデレデレだったけど」

「口数が増えると言うより声のトーンが変わって、あとはスキンシップが増えるだけで」

「なるほど」

「あ、でも頭撫でられるの好き。『ん、ええ子や』って言われるの、ヤバいです」

悶えている。

マリアは想像した

(リナちゃんが陰湿な大蛇に味見されて今から食べられる図しか浮かばないけど)

「まあリナちゃんが幸せなら良いわね☆」


ーーーーー
「じゃあ、一番好きな身体のパーツは?」

「リナちゃん、その質問はちょっと……」

「えっと、やっぱりはしたないかな?」
(娼館にいたから感覚がズレてるのかもしれないわ)

「いえ、そんなこと語り出したら朝までかかるわ。でも私はヒューゴ様の全てを知らないから現時点で不確かなことは言えないのが歯がゆくて」

「そんなキリッと言われても。私も別にヒューゴさんの体にちっとも興味は無いのよ。語るマリアちゃんが見たいだけで」

「まあ内心はヒューゴ様って骨格レベルでエロくない?て思ってますけど」

「マリアちゃん!?どこでそんな言葉覚えたの?
それ、内心にしまっといてね?」

「いろいろ平民になってから勉強したんです。で、あの体型は神が作ったバランスだなと思って。」

「マリアちゃん、骨を愛でる前に恋人なんだからもっと二人でできることがあるはずだよ!頑張って!」

「隣で歩いてると全身を見られないから、最近ちょっと離れてじっくり見たいなー、とか思う」

「それヒューゴさん泣いちゃうからやめてあげて」

「冗談よ。全身好きだけど、一番なら手かな。大きくてかっこいいの」

「そう!そういうのが正解よマリアちゃん」

「指もエロ長いし関節も剣だこもかっこいいし、もっとなんとかたくさん触れる理由が欲しいんですけどね」

「待って、マリアちゃんまた出てきてるよ?しまってね」

「リナちゃんは?好きな部分」

「うーん、全部好きだけど、首もとを隠す服が多いんだけど、首とか鎖骨もきれいだし、でも好きなのは

あ、髪!
髪ほどいたところを見るのは私だけって思うと嬉しいしゾクッとする。」

「あー、それはわかる!自分だけっていいわね!」

「髪を手入れしてあげてる時が無防備で可愛いの。普段はずっと気を張ってるから」

「ブラシはどんなの使ってる?」

「私の櫛を使ってるけど、時間がかかるの」

「髪の質が違うと使い分けるって聞いたことが……」


マリアは考え込むそぶりをした。

「リナちゃん、ちょっと急用を思い出したから今日は帰るわね。ごめんなさい!」

「うん、またね!」

残されたリナは、商会を一人でブラブラと見ていた。

今日は、マリアへのプレゼントを決めたかった。
クリスマスには親しい友人でプレゼントを贈り合うと聞いたので、初めてできた友人のマリアの好みを探りたかったのだ。

でも、結局いつものように大好きな人の話で終わってしまった。私ばっかり楽しくて。

でも、マリアちゃんが一番笑顔になるのはヒューゴさんのことを言ってる時だし。

今日も手が……

並べられた商品のなかで一点のものに目が留まった。

ハンドクリーム

マッサージ?

これ、マリアちゃんがヒューゴさんにしてあげれば喜ぶんじゃない?

いや、でも友達の彼氏に使うものを渡すなんて


でも、触れる時間をマリアちゃんにプレゼントするって考えれば

ちょっとこれは、お姐さんに相談しよう。

ーーーーーー
マリアは走っていた。

「これは昔のツテを使ってでも入手してみせなければ」

乗り合い馬車を捕まえて
タレッソ伯爵邸へ。

執事に取次を頼む
元両親も歓迎してくれた。
「領地から取り寄せていたブラシの製造元はわかるかしら?一つ注文したいのだけれど」

きびきびとした様子は昔のマリアのようで。

久しぶりにゆっくりとお茶をのみ、夕食もご馳走になった。

リナちゃんにお礼をしたいと思っていたけれど、溺愛している旦那様のせいで、リナちゃんには物欲がない。愛されている自信もあるので、何かに不安だとか困っている様子もない。

何をプレゼントすればいいのかわからなかった。

カイさんの髪を手入れするのが好きなリナちゃんに、良いブラシを贈ろう。
リナちゃんの小さい手にもちょうどいいものを。

カイさんの使うものを私がプレゼントするのは変だからヒューゴさんから渡してもらおう。

ーーーーーーー

数日後。騎士団の更衣室にて。
「なあ、ちょっとあとで話があるんだが」

苦い顔でヒューゴがカイに話しかける

「飲みは無理だぞ。」

「渡すものがあって」

帰り際に渡されたのは、可愛い包み。

「マリアから」

「リナに?」

「いや、お前にだそうだ」

「は?なんで」

「俺もわからん。ただ、お前の使うものだけどリナさんへのプレゼントだそうだ。」

「お前の彼女変わってんな。よくわからんがリナと開けたらわかるかもな。一応ありがとう。」

翌日。

「ヒューゴ、マリア嬢に礼を言っといてくれ。リナが喜んでたって。」

「なんだったんだ?」

「ブラシ。」

「なんか高級品らしい。ブラシ。その、俺も感謝してると伝えてくれ」

「念のため聞くが、いかがわしい使い方ではないんだな?ふつうのブラシだよな」

「当たり前だろ!リナに髪をといてもらうのが最高なんだよ」


「機嫌のいいカイ気持ち悪い」

ヒューゴに紙袋が押し付けられた。
「これ。リナもマリア嬢にクリスマスプレゼントを用意していたらしい。」

「マリアに渡せばいいんだな」

「いや?それもお前が使うものって言ってた。」

「お前の嫁さんも変わってんじゃねえか」

「まあな。だから気が合うんだろ」


翌日。

「カイーー!」

ヒューゴが抱きついている。

「やめろ苦しい。」

「ありがとうありがとう。リナさんありがとう。最高だった!お前の嫁最高!」

「なんだったんだ?中身は」

「ハンドクリームと、爪切りとヤスリと、そういうマッサージセットだった。マリアが手をずっと触って世話してくれた」


(あー、それで。お姐さんたちに会ってきたって言ってたのはそういうことか)

「自分でも手入れした方がいいな、これからも」

「そうだな。ガサガサの手でマリアに触れるわけにいかないな」
幸せそうなヒューゴの背後で
他の団員たちはドン引きしていた。

「お前ら、どういう、?」

「プレゼント交換?」

「野郎どうしで?
最高だった?」

カイの殺気が増した

「違うからな?」



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