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カイ困惑
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「なんか、すっげー派手な男前がカイさんに面会来てるんですけど。心当たりあります?」
騎士団の事務職員から呼ばれた。
心当たり、ない。
が、もしリナに関係することで派手な男前なら会わないわけにいかない。
リナはマリア嬢のところに泊まったあと、娼館にいるらしい。
待合室に行けば、確かに派手な男がいた。
赤い髪、がっしりした身体。銀色の目は視線が引き付けられる。何より見られることに慣れている。
その堂々とした姿に、リナと関係のある男だと嫌だなと思った。椅子から立ち上がって礼をするのも、礼儀に則っている。
でかいな。
180cm以上はありそうだ。
用件を聞くと、人探しだという。女を探している。
多分惚れたんだろう。自分も東の大陸に行った時はリナを忘れようとして精神的にも疲れていた。ミクには世話になったし、一族は受けた恩をなるべく返す義理がある。
まあ、今はリナのことを優先するが、知り合いのいないところへ来る勇気は応援してやりたい。
この辺りにはあまり龍の一族は定住していないので、探してやれるかもしれない。
と思っていた。
具体的に特徴を聞くまでは。
メモを取りながら、内心震えた。
待て。
この男がキラキラした目で語っているのは。
俺だ。
あの日、舟ですれ違うのにぶつかりそうだったから立ち上がって傾けた。
それは優雅な舞などではなく、船底を蹴ったのだが。
扇は船頭に
いいかげんにしろよ?
という軽い脅しのために突き出した。
なんでそれが
絶世の美女が舟の上で舞を踊っていたのに一目惚れした
という、話になるんだ。
桜花が視界を遮っていたのか、髪を下ろしていたからか、こいつが酷く酔っていたのか。
それより、俺だと気付かれていないのなら黙っておこう。
その女は、お前の脳内にしか居ない。
だから、絶対に見つかるわけがない。
ここで俺みたいな奴が名乗っても可哀想だ。
気が済んだら諦めて帰るだろう。
そう思っていたのに、シュラクと名乗ったそいつが何度も接触してくる。
女装していた訳じゃない。
偵察に必要だったから着飾っていたが、断じて色仕掛けを狙ったわけではない。
たまたま、男娼と遊ぶのが好きな奴だったので請われて舟遊びに付き合ってやっただけだ。
そのお陰で任務は成功したが、危険もあった。
もう忘れたい時期のことだ。
「カイさん、やっと見つかりそうなんですよ!龍の女が!」
は?何言ってんだこいつ。
「ミクから手紙が来て、ほら、見てください!
その女は『成』っていう名前だそうです」
「どうせ偽名だろ」
「はい、ミクもそう言ってました。でも、龍の一族は本名の音を一つ残したりひっくり返すことが多いそうで。」
なんでこいつにそんなことまで教えるねん!?
『成』セイというのがその時のカイの偽名だった。
「で、龍の女がいるってきいて、探してたんです。『成』ナリって名前で誰か」
なんで、
「そしたら、居たんです! リナっていう子が!龍の番って噂されてました」
待て、それは
「だから、何とかして会いたいんですが、カイさんどうにかなりませんか」
「そいつは、お前の探してる女じゃない……」
絞り出すように、そう言った。
「カイさん!何か隠してるでしょ!」
顔のいい奴の圧力!
絶対に
ぜったいにリナに、会わせない。
「その娘は、3ヶ月先まで常連が予約を入れている」
「ええー!」
「俺だ」
は?という顔をしていた。
それでも男前で腹立つなコイツ、と思った。
騎士団の事務職員から呼ばれた。
心当たり、ない。
が、もしリナに関係することで派手な男前なら会わないわけにいかない。
リナはマリア嬢のところに泊まったあと、娼館にいるらしい。
待合室に行けば、確かに派手な男がいた。
赤い髪、がっしりした身体。銀色の目は視線が引き付けられる。何より見られることに慣れている。
その堂々とした姿に、リナと関係のある男だと嫌だなと思った。椅子から立ち上がって礼をするのも、礼儀に則っている。
でかいな。
180cm以上はありそうだ。
用件を聞くと、人探しだという。女を探している。
多分惚れたんだろう。自分も東の大陸に行った時はリナを忘れようとして精神的にも疲れていた。ミクには世話になったし、一族は受けた恩をなるべく返す義理がある。
まあ、今はリナのことを優先するが、知り合いのいないところへ来る勇気は応援してやりたい。
この辺りにはあまり龍の一族は定住していないので、探してやれるかもしれない。
と思っていた。
具体的に特徴を聞くまでは。
メモを取りながら、内心震えた。
待て。
この男がキラキラした目で語っているのは。
俺だ。
あの日、舟ですれ違うのにぶつかりそうだったから立ち上がって傾けた。
それは優雅な舞などではなく、船底を蹴ったのだが。
扇は船頭に
いいかげんにしろよ?
という軽い脅しのために突き出した。
なんでそれが
絶世の美女が舟の上で舞を踊っていたのに一目惚れした
という、話になるんだ。
桜花が視界を遮っていたのか、髪を下ろしていたからか、こいつが酷く酔っていたのか。
それより、俺だと気付かれていないのなら黙っておこう。
その女は、お前の脳内にしか居ない。
だから、絶対に見つかるわけがない。
ここで俺みたいな奴が名乗っても可哀想だ。
気が済んだら諦めて帰るだろう。
そう思っていたのに、シュラクと名乗ったそいつが何度も接触してくる。
女装していた訳じゃない。
偵察に必要だったから着飾っていたが、断じて色仕掛けを狙ったわけではない。
たまたま、男娼と遊ぶのが好きな奴だったので請われて舟遊びに付き合ってやっただけだ。
そのお陰で任務は成功したが、危険もあった。
もう忘れたい時期のことだ。
「カイさん、やっと見つかりそうなんですよ!龍の女が!」
は?何言ってんだこいつ。
「ミクから手紙が来て、ほら、見てください!
その女は『成』っていう名前だそうです」
「どうせ偽名だろ」
「はい、ミクもそう言ってました。でも、龍の一族は本名の音を一つ残したりひっくり返すことが多いそうで。」
なんでこいつにそんなことまで教えるねん!?
『成』セイというのがその時のカイの偽名だった。
「で、龍の女がいるってきいて、探してたんです。『成』ナリって名前で誰か」
なんで、
「そしたら、居たんです! リナっていう子が!龍の番って噂されてました」
待て、それは
「だから、何とかして会いたいんですが、カイさんどうにかなりませんか」
「そいつは、お前の探してる女じゃない……」
絞り出すように、そう言った。
「カイさん!何か隠してるでしょ!」
顔のいい奴の圧力!
絶対に
ぜったいにリナに、会わせない。
「その娘は、3ヶ月先まで常連が予約を入れている」
「ええー!」
「俺だ」
は?という顔をしていた。
それでも男前で腹立つなコイツ、と思った。
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