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大団円
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宿に戻ると客が来たらしい。
近くの店で待っていると伝言があった。
あわてて行くと、ミクだった。
三日ぶりにみる。
言いたいことがたくさんあったはずなのに出てこない。役者なんだからすらすら言えないとカッコ悪いのに。
ミクに抱きついて本物だと確認すると、幸せな気分になって何も言えなかった。
「シュラク、逃げて悪かった」
「いや俺の方こそ急ぎ過ぎた」
席に座ってお茶を飲んでいた。店内の注目を集めてミクは居心地が悪そうだった。目が合うけれど改めて話をするのはちょっと、と思っているのかもしれないと思った。
ミクが見つかったら気持ちが止まらなくなるかと思ったけど意外と落ち着いている部分もあった。ミクが目の前に居てくれるだけで、安心する。
顔が弛むと、ミクは赤くなった。
「何をしていたのかとか、どこにいたのか聞かないのか」
「いろいろ考えたし心配もしたけど、今こうやってミクが無事に戻ってきてくれて俺のとこに会いに来てくれて。これ以上に望んだらいけない気がする。離れてわかることもあるんだな」
お茶を何度か口に運び、視線を何度も上下して、決意したように息を吸って。
ミクは数分たってから
「私も、わかったことがある。友達が出来た。彼女たちは正直で強く可愛い。
そんな彼女たちでさえ恋人と気持ちのすれ違いを経験していた。
言葉や態度に表すことを惜しんでいてはいけないんだな。だから、その」
「ミク、ちょっと待って」
「いや、聞いてくれ。今じゃないとダメだと思う。
私も少しお前に素直になろうと思う。」
「ミクはいつも正直で素直だ。嘘は言わない。俺はそういうミクが好きだ」
ミクは、赤くなった。
「……ありがとう」
「今日は俺の部屋に泊まるよな」
「いやそれは断る」
ーーーーーーー
シュラクの劇団の公演をマリアとリナが見に行った。
「かっこよかったねえ」
「シュラクさんの黒髪も似合ってたね」
観劇から帰ってきてから二人がそんな様子なので彼氏達は少し飽きていたが、楽しそうに話す二人の顔を少し離れたところから眺めて酒を飲んでいた。
「ミクさんも綺麗だったし強かった。かっこよかった」
「アイツは裏方なんじゃないのか?」
「シュラクさんがミクちゃん相手じゃないとラブシーンしないってゴネたらしいよ?」
「なっ!そんなこと言ってんのか。子供か!」
「なかなか濃厚で勉強になりました。ヒューゴさんとも見に行きたいです」
「俺以外の男を誉めてるの見るのは嫌だから行かない」
プイッと顔をそらしたヒューゴをマリアがキラキラした目で見ている。
(拗ねた犬みたいでかわいいわ!)
「シュラクさん、殺陣をかなり鍛えたそうです。カイさんやヒューゴさんを参考にしてミクさんが鍛えたそうですよ」
「それは少し興味あるな」
カイは基本的に嫁が喜んでいればそれでいいらしい。
千秋楽のあと、ミクとシュラクが別れの挨拶に来てくれた。
シュラクの黒髪は伸びてきた根本が赤色で、
より派手だった。
それもまた似合っている。
「本当にお世話になりました。」
「お前、身体変わったな」
カイがシュラクの腕や胸を触る
「かなり鍛えてやった」
ミクが得意気に言っている。
「短期間でよく仕上がってる」
「見た目だけだから、動きは無理だぞ」
「ミクが、『使える身体にしてから口説け』って言うからさ、頑張りました」
大男が頬を染めている。
「次は頭を鍛えるか」
回し蹴りで倒されている。
「かっこいいー!」
マリアとリナが頬を染めて拍手している。
倒れたシュラクも、キラキラした目で見ている。
「また東の大陸に遊びに来てくれ。温泉もたくさんあるから。」
ミクがシュラクを引っ張って、何度も手を振って帰っていった。
温泉……?
マリアとリナがキョトンとしている。
「カイさん、温泉ってなに?」
「ああ、でかい風呂……?自然に暑い湯が湧き出していて。えーっと、こっちの大陸にもあるはずだが、向こうでは古くからの宿や食べ物屋なんかが多くて。外の風呂もある」
「お風呂が人気なの?こっちでもプールとか大浴場はあるけど。」
「何て言ったらいいのかな。女性は肌が美しくなるとか、腰痛が治るとかそういう目的を持って楽しむ人が多い印象だ。こっちでは保養地とか避暑の別荘みたいな感覚かな」
「楽しそう!調べてみるね!」
ミクとシュラクにまた会える日を楽しみに、それぞれは最愛の人の手をとった。
【完】
近くの店で待っていると伝言があった。
あわてて行くと、ミクだった。
三日ぶりにみる。
言いたいことがたくさんあったはずなのに出てこない。役者なんだからすらすら言えないとカッコ悪いのに。
ミクに抱きついて本物だと確認すると、幸せな気分になって何も言えなかった。
「シュラク、逃げて悪かった」
「いや俺の方こそ急ぎ過ぎた」
席に座ってお茶を飲んでいた。店内の注目を集めてミクは居心地が悪そうだった。目が合うけれど改めて話をするのはちょっと、と思っているのかもしれないと思った。
ミクが見つかったら気持ちが止まらなくなるかと思ったけど意外と落ち着いている部分もあった。ミクが目の前に居てくれるだけで、安心する。
顔が弛むと、ミクは赤くなった。
「何をしていたのかとか、どこにいたのか聞かないのか」
「いろいろ考えたし心配もしたけど、今こうやってミクが無事に戻ってきてくれて俺のとこに会いに来てくれて。これ以上に望んだらいけない気がする。離れてわかることもあるんだな」
お茶を何度か口に運び、視線を何度も上下して、決意したように息を吸って。
ミクは数分たってから
「私も、わかったことがある。友達が出来た。彼女たちは正直で強く可愛い。
そんな彼女たちでさえ恋人と気持ちのすれ違いを経験していた。
言葉や態度に表すことを惜しんでいてはいけないんだな。だから、その」
「ミク、ちょっと待って」
「いや、聞いてくれ。今じゃないとダメだと思う。
私も少しお前に素直になろうと思う。」
「ミクはいつも正直で素直だ。嘘は言わない。俺はそういうミクが好きだ」
ミクは、赤くなった。
「……ありがとう」
「今日は俺の部屋に泊まるよな」
「いやそれは断る」
ーーーーーーー
シュラクの劇団の公演をマリアとリナが見に行った。
「かっこよかったねえ」
「シュラクさんの黒髪も似合ってたね」
観劇から帰ってきてから二人がそんな様子なので彼氏達は少し飽きていたが、楽しそうに話す二人の顔を少し離れたところから眺めて酒を飲んでいた。
「ミクさんも綺麗だったし強かった。かっこよかった」
「アイツは裏方なんじゃないのか?」
「シュラクさんがミクちゃん相手じゃないとラブシーンしないってゴネたらしいよ?」
「なっ!そんなこと言ってんのか。子供か!」
「なかなか濃厚で勉強になりました。ヒューゴさんとも見に行きたいです」
「俺以外の男を誉めてるの見るのは嫌だから行かない」
プイッと顔をそらしたヒューゴをマリアがキラキラした目で見ている。
(拗ねた犬みたいでかわいいわ!)
「シュラクさん、殺陣をかなり鍛えたそうです。カイさんやヒューゴさんを参考にしてミクさんが鍛えたそうですよ」
「それは少し興味あるな」
カイは基本的に嫁が喜んでいればそれでいいらしい。
千秋楽のあと、ミクとシュラクが別れの挨拶に来てくれた。
シュラクの黒髪は伸びてきた根本が赤色で、
より派手だった。
それもまた似合っている。
「本当にお世話になりました。」
「お前、身体変わったな」
カイがシュラクの腕や胸を触る
「かなり鍛えてやった」
ミクが得意気に言っている。
「短期間でよく仕上がってる」
「見た目だけだから、動きは無理だぞ」
「ミクが、『使える身体にしてから口説け』って言うからさ、頑張りました」
大男が頬を染めている。
「次は頭を鍛えるか」
回し蹴りで倒されている。
「かっこいいー!」
マリアとリナが頬を染めて拍手している。
倒れたシュラクも、キラキラした目で見ている。
「また東の大陸に遊びに来てくれ。温泉もたくさんあるから。」
ミクがシュラクを引っ張って、何度も手を振って帰っていった。
温泉……?
マリアとリナがキョトンとしている。
「カイさん、温泉ってなに?」
「ああ、でかい風呂……?自然に暑い湯が湧き出していて。えーっと、こっちの大陸にもあるはずだが、向こうでは古くからの宿や食べ物屋なんかが多くて。外の風呂もある」
「お風呂が人気なの?こっちでもプールとか大浴場はあるけど。」
「何て言ったらいいのかな。女性は肌が美しくなるとか、腰痛が治るとかそういう目的を持って楽しむ人が多い印象だ。こっちでは保養地とか避暑の別荘みたいな感覚かな」
「楽しそう!調べてみるね!」
ミクとシュラクにまた会える日を楽しみに、それぞれは最愛の人の手をとった。
【完】
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