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シーカー家は没落寸前だった
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シーカー子爵は悪人ではない。ただ、人が良すぎるのだった。
領地は執事に任せて王都で植物の研究をしていた。
ある日スリにあって、邸まで歩いていたところ修道院の前で倒れてしまった。
女の子が寄ってきて、瞼を上げたり手首や首の後ろを触ったりした。
そのあと大人を呼んでくれた。
疲労と空腹だろうということで、シスターは一室を貸してくれた。
女性ばかりのところに休ませてもらうのは気が引けた。
夕方に配達の業者が来るので、屋敷まで送るように頼みましょうと言ってくれた。
邸につけば報酬も払えるので、言葉に甘えた。
辻馬車では信用がなければ後払いは出来ない。ありがたかった。
その命の恩人である修道院に寄付をしたりバザーに協力しているうちに、アイリスと親しくなった。
シーカー子爵は独身で、32才の男性が12才のアイリスを養女にするというのに院長は初め危惧していた。
アイリスは平民で、親はいたけれど事情があって自らの意思で孤児院に来た子供だった。
幸せになってほしいと厳しく礼儀作法を叩き込んだ。
決して小児性愛者の愛人にするためではない。
もし、手順を踏んで求婚するのであれば年の差や身分はどうあれ賛成していただろう。
「院長、私は邪な考えからあの子を養女にほしいと言ってるのではないですよ」
「あの子は大人びているから、もしかして本当に恋愛感情を?」
「そうではなくてですね、私はあと十年ほど勤めたら、親戚の誰かを迎えて後継ぎにしようと思っていました。子爵位は誰の手に移っても未練はありません。
でも、アイリスにとってはどうでしょうか。私にとって価値のない弱小貴族でも、あの子にとっては子爵令嬢という肩書きで王都の学園に入学できます。
楽しみで仕方ない。とても良い種を見つけた気分です。日当たりと土壌を与えたいだけです」
独特の例えだったけれど院長は安心してこの人なら任せられると思った。数年間修道院に出入りしてても、誰一人シスターといい感じにすらならなかった人なので。
「お父様……?子爵? なんとお呼びすればいいのでしょう」
「兄でもいいんだけど、兄よりは父だよねえ。まあ何でもいいよ、アイリスの好きに呼べばいい」
「それでは、人前ではお父様、それ以外は先生と呼びたいです。
」
子爵は孤児院の畑を指導したり、植物について教えていた。
この修道院と孤児院のバザーで売られるポプリやハーブ入りのクッキーは人気だった。
「わかった。数年間よろしくねアイリス。」
王都に小さな邸があるけれど、子爵は職場の寮から通っているしアイリスも学園の寮に入る。休暇くらいしか一緒の邸に暮らさないだろう。
子爵は、アイリスに投資ではなく純粋に人助けのつもりだった。
しかし、助けられたのは子爵の方だ。
執事の仕事をアイリスが手伝い、領地の経理がおかしいと指摘した。
かなり、不審な点が見つかった。
執事は子爵よりアイリスを頼っている。
じわじわと領地の経営を立て直していた。
「うっうっ、うちの若様は人を見る目があるのに甲斐性がないばっかりに。アイリス様が奥様になってくださったら良いのに。むしろ若様はいらないので」
執事の本音を聞いて、子爵は落ち込む。使用人もみんなアイリス大好き。
「あのね、あんな賢くて気立てのいい子なら絶対良い男が認めてくれるから、この家から幸せな花嫁姿で旅立つのを願おうね」
執事の涙腺は壊れた。
よし、良いことを言ったぞと思ったが、
「若様が不憫で」
と更に泣かれた。
領地は執事に任せて王都で植物の研究をしていた。
ある日スリにあって、邸まで歩いていたところ修道院の前で倒れてしまった。
女の子が寄ってきて、瞼を上げたり手首や首の後ろを触ったりした。
そのあと大人を呼んでくれた。
疲労と空腹だろうということで、シスターは一室を貸してくれた。
女性ばかりのところに休ませてもらうのは気が引けた。
夕方に配達の業者が来るので、屋敷まで送るように頼みましょうと言ってくれた。
邸につけば報酬も払えるので、言葉に甘えた。
辻馬車では信用がなければ後払いは出来ない。ありがたかった。
その命の恩人である修道院に寄付をしたりバザーに協力しているうちに、アイリスと親しくなった。
シーカー子爵は独身で、32才の男性が12才のアイリスを養女にするというのに院長は初め危惧していた。
アイリスは平民で、親はいたけれど事情があって自らの意思で孤児院に来た子供だった。
幸せになってほしいと厳しく礼儀作法を叩き込んだ。
決して小児性愛者の愛人にするためではない。
もし、手順を踏んで求婚するのであれば年の差や身分はどうあれ賛成していただろう。
「院長、私は邪な考えからあの子を養女にほしいと言ってるのではないですよ」
「あの子は大人びているから、もしかして本当に恋愛感情を?」
「そうではなくてですね、私はあと十年ほど勤めたら、親戚の誰かを迎えて後継ぎにしようと思っていました。子爵位は誰の手に移っても未練はありません。
でも、アイリスにとってはどうでしょうか。私にとって価値のない弱小貴族でも、あの子にとっては子爵令嬢という肩書きで王都の学園に入学できます。
楽しみで仕方ない。とても良い種を見つけた気分です。日当たりと土壌を与えたいだけです」
独特の例えだったけれど院長は安心してこの人なら任せられると思った。数年間修道院に出入りしてても、誰一人シスターといい感じにすらならなかった人なので。
「お父様……?子爵? なんとお呼びすればいいのでしょう」
「兄でもいいんだけど、兄よりは父だよねえ。まあ何でもいいよ、アイリスの好きに呼べばいい」
「それでは、人前ではお父様、それ以外は先生と呼びたいです。
」
子爵は孤児院の畑を指導したり、植物について教えていた。
この修道院と孤児院のバザーで売られるポプリやハーブ入りのクッキーは人気だった。
「わかった。数年間よろしくねアイリス。」
王都に小さな邸があるけれど、子爵は職場の寮から通っているしアイリスも学園の寮に入る。休暇くらいしか一緒の邸に暮らさないだろう。
子爵は、アイリスに投資ではなく純粋に人助けのつもりだった。
しかし、助けられたのは子爵の方だ。
執事の仕事をアイリスが手伝い、領地の経理がおかしいと指摘した。
かなり、不審な点が見つかった。
執事は子爵よりアイリスを頼っている。
じわじわと領地の経営を立て直していた。
「うっうっ、うちの若様は人を見る目があるのに甲斐性がないばっかりに。アイリス様が奥様になってくださったら良いのに。むしろ若様はいらないので」
執事の本音を聞いて、子爵は落ち込む。使用人もみんなアイリス大好き。
「あのね、あんな賢くて気立てのいい子なら絶対良い男が認めてくれるから、この家から幸せな花嫁姿で旅立つのを願おうね」
執事の涙腺は壊れた。
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「若様が不憫で」
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