【完結】『神童』に求婚される話~妬まれて出世コースから外れてたんじゃないんですか?

仙冬可律

文字の大きさ
1 / 13

イケメンとの再会

しおりを挟む
食堂に監査の人が来るからと、皆がバタバタしていた。
帳簿を開いて困っているようなので、お茶を差し入れした。

「そんなに大変なんですか?」

「うちは王宮の食堂だろ?出入り業者も限られてるから、別に後ろ暗いところはないんだよ。ただ、たまたま足りない食材を別のルートで仕入れて、それをいつもより高く買っちゃったりとか。

前の監査の人は細かくて。下っ端の若造だったから暇だったのかな。ネチネチ言ってきたよ」

「そんなことがあったんですね」

ライラは昨年のことは知らなかった。働き始めて半年を越えた。日々の仕事には慣れてもまだまだ、知らないことだらけ。

「あのー、私、計算は遅いのですが清書ならお役に立てるかもしれません。」

中等学校しか出ていないけれど、昔から字は誉められていた。

「わ、ライラちゃんすごく上手じゃない。こんなにきれいだと帳簿がそこだけ不自然になってしまうよ。
メニュー書くのをお願いしようかな」

「うう、何か皆さんのお役に立ちたいのに」

「じゃあ、お役人さんが来たらお茶出してあげて。
なーんか、あのピリピリした空気が苦手なんだよね。向こうも仕事だってのはわかるんだけどさ。こっちまで緊張しちまうのよ。ライラちゃんがいるだけで和むわー」

「わかりました!とびっきりのお茶をお出ししますね」

後にベテランのスーラさんは言った。
『あのとき、ライラちゃんちょっと張り切りすぎって思ったのよね』

やって来た役人を見て、ライラは驚いた。

「あの人、倒れてたイケメンさんじゃない」

ライラが働きはじめてすぐの頃に食堂の前で倒れていた人だった。

あんなに空腹になるまで働いていて

しかも、
下っ端でイライラしているだなんて可哀想。
ネチネチ言うのかしら。
言いそうだわ。
青白い顔、黒い髪、深い緑の瞳。

ろくにご飯も食べてないんじゃないかしら。
あ、眉間にシワが寄っている。
いろいろ調べるにしても、お腹がすいていては集中できないでしょう。

ライラは、オムライスを作って持っていった。

「は?これは」

「どーぞ」

「いや。私は帳簿の監査に来たので」

「食べないんですか?
今日はお腹すいてません?」

スプーンを差し出す。

「敵わないな、君には。
いただこう」

スプーンを受け取って食べはじめてくれた。
ライラはにこにこしているが、周りの部下はひきつっている。
氷の鬼上司が、監査の途中で女の子とオムライスを食べている。

「私を恐れず話ができる女性は君だけだ。」

「あのあと、ちゃんと食事をされているか心配していました。見かけないので奥様がお食事を用意されてるのかな、とか」

「そうか」

食べ進めたエドガーは最後の一口を飲み込み、水を飲む。

この人、すごくきれいに食べるのね

ライラは嬉しくなった。

「なんで笑ってるんだ」

「美味しそうに食べてくれたのと、健康そうなのと既婚者じゃないのが嬉しいです」

「私が飢えてないか心配していたのに、世話をしてくれる妻がいないのが嬉しいのか」

「あれ?矛盾してますね。おかしいですね、私」

「おかしいのは私もだ」

少し笑って
そう言って立ち上がった。

部下は、スプーンを落とした。

「笑ってる、エドガー様が、わらって」


そのあと、会計のときに
「私はわからないものをそのままにできない性質なので、近いうちに君に会いに来る」

と言われた。
ライラは、
今日はイケメンさんが笑ってるところを見られて目の保養だったわー、とポヤポヤ思っていた。

「あれ、完全にライラちゃんロックオンしてるわよね」

食堂のベテラン、スーラさんと残された部下たちは震えていた。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛

三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。 ​「……ここは?」 ​か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。 ​顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。 ​私は一体、誰なのだろう?

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。 2/26 番外編を投稿しました。 読んでいただけると嬉しいです。 思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。 とてもとてもありがとうございます!!   

忘れ去られた婚約者

かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』 甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。 レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。 恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。 サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!? ※他のサイトにも掲載しています。 毎日更新です。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。

処理中です...