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エドガーは本気を出した
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「礼には及ばない。私は君に好かれたくて媚びているだけだ」
あまりにも堂々と言うので、ライラはそのまま聞き流しそうになった。
「え?媚び、ですか。エドガー様が?私に?」
「そうだ。気づいてなかったのか?」
「だって、いつも冷静で紳士的で親切で、変わりなく見えます」
「考えてみろ。君に求婚中なんだぞ?この距離で平気なわけがない。今だって下心しかない」
この距離、と言われてみれば、確かにソファに並んで座るのは未婚の男女としてはふさわしくない。
飛び上がるように立ち上がろうとしたライラの腕をエドガーが捕まえた。
「ひゃっ!」
「ライラ、きみは学んだ方がいい。」
そのまま腕まで、スルッとつかみ、自分のほうへ引き寄せる。
もたれるように腕のなかにとらわれてしまう。
ライラのつむじの辺りにエドガーは口を寄せて、笑った。
「ひゃ、ひゃい。エドガー様、ごめんなさい」
「君に選ばせてあげよう」
エドガーはライラの顔が見えるように体をずらした。
ライラの髪を撫でる。
「ふぇ、」
赤い顔で涙目のライラ。
「怖がらなくていい。嫌な方を選ばなければいいんだ。簡単なことだ。よく聞いて。」
落ち着いたエドガーの声に、ライラも頷く。
エドガー様は私の危機感の無さを注意しようとして、わざと怖がらせてるだけ。
エドガー様が本気でなにかその、よくわからないけどいきなり男女のいかがわしいことをするわけがない。
「今から君にキスをする。」
え。
「恋人でもない男に強引に奪われるのは君にとって苦痛だと思う。」
ええ?
「一方で、ここにサインをすれば婚約者だ。契約を交わした対等な関係として、不利益があれば君の権利を主張できる。例えば、次は軽いキスにして欲しい、頬にしてほしい、などの交渉にも応じる。」
「ええっと、」
頬に手が添えられる。
「混乱しているときにキスされたら君はどうなるんだろう。今でもそんなに取り乱しているのに。ゆっくり考える時間が欲しいだろう?」
ライラは頷く。
「将来の約束もしていない男を部屋に上げたらダメだ。わかった?」
ライラは、頷くことしかできない。その点は後悔している。反省もしている。
だからそんな甘い顔と声で叱らないで、叱っているとは思えない手つきで。
「だから将来の約束をしてからキスをした方がいいと思う。」
もう触れそうな距離で囁かれて、湯気が出そうなほどライラは真っ赤だった。
「私には君が必要なんだ。」
髪に指をからめる。
「ライラ?頼む。結婚してくれ」
おでことおでこをコツン、とあてる。
「わたし、でも……」
「ん?」
「エドガー様に、つりあわないです、頭もよくないし、貴族令嬢らしくないし、それに」
「そんなことは伴侶に求めてないし、
単に頭の性能という意味では速度において私より優れた人間は見たことがないから、大差ない。君が私を断る理由としては弱いな」
鼻にキスを落とす
「でも、」
エドガーは唇で黙らせた。
それは軽いものだったけれど、ライラはびっくりして体の力が抜けた。
「君の口から、断り文句ばかりでるのは辛い」
「わ、わたし、もっとよく知ってから結婚したいかどうか考えたいです……!」
「私も知ってほしい。君に値する男かどうか」
手を取ってキスをする。
「ひえええ」
「生涯かけて証明する」
「エドガー様、いっぺんに今日じゃなくていいです。ゆっくりでお願いします」
「そうか。」
「エドガー様は天才なのにいつも書類仕事ばかりされていて、妬まれて出世の邪魔をされてるんですか?
もっと良い家門のお嬢様の方が将来のためになるんじゃないですか?」
エドガーは渋い顔をした。
「なんのことかわからないが、自分の将来のためと言うならば、毎日好きな人と過ごす方が仕事の意欲も増すし、もっというのなら出世など興味はない」
これ以上は、とエドガーは心の中で思った。
ライラは、きっぱりと言い切るエドガーにときめいていた。
好きな人と、毎日過ごしたい。
学生時代にライラがそう語るのを夢見がちだと同級生にからかわれたことがあった。
それなのに、大人の男性で、年上で、天才と言われている人が同じことを願っている。
それだけの単純な理由で自分を求めてくれている。
「私もエドガー様と、一緒にいたいです、けど、結婚はまだすぐには無理です」
ライラが俯いて赤い顔でそういうと、エトガーが強く抱き締めた。
「ありがとうライラ!
まだ提出しないから、お守りにするからサインしてくれ」
あまりにきれいな笑顔で言うから、ライラは婚姻届にサインした。
エドガーは書類を入れる鞄の中にしまった。
あまりにも堂々と言うので、ライラはそのまま聞き流しそうになった。
「え?媚び、ですか。エドガー様が?私に?」
「そうだ。気づいてなかったのか?」
「だって、いつも冷静で紳士的で親切で、変わりなく見えます」
「考えてみろ。君に求婚中なんだぞ?この距離で平気なわけがない。今だって下心しかない」
この距離、と言われてみれば、確かにソファに並んで座るのは未婚の男女としてはふさわしくない。
飛び上がるように立ち上がろうとしたライラの腕をエドガーが捕まえた。
「ひゃっ!」
「ライラ、きみは学んだ方がいい。」
そのまま腕まで、スルッとつかみ、自分のほうへ引き寄せる。
もたれるように腕のなかにとらわれてしまう。
ライラのつむじの辺りにエドガーは口を寄せて、笑った。
「ひゃ、ひゃい。エドガー様、ごめんなさい」
「君に選ばせてあげよう」
エドガーはライラの顔が見えるように体をずらした。
ライラの髪を撫でる。
「ふぇ、」
赤い顔で涙目のライラ。
「怖がらなくていい。嫌な方を選ばなければいいんだ。簡単なことだ。よく聞いて。」
落ち着いたエドガーの声に、ライラも頷く。
エドガー様は私の危機感の無さを注意しようとして、わざと怖がらせてるだけ。
エドガー様が本気でなにかその、よくわからないけどいきなり男女のいかがわしいことをするわけがない。
「今から君にキスをする。」
え。
「恋人でもない男に強引に奪われるのは君にとって苦痛だと思う。」
ええ?
「一方で、ここにサインをすれば婚約者だ。契約を交わした対等な関係として、不利益があれば君の権利を主張できる。例えば、次は軽いキスにして欲しい、頬にしてほしい、などの交渉にも応じる。」
「ええっと、」
頬に手が添えられる。
「混乱しているときにキスされたら君はどうなるんだろう。今でもそんなに取り乱しているのに。ゆっくり考える時間が欲しいだろう?」
ライラは頷く。
「将来の約束もしていない男を部屋に上げたらダメだ。わかった?」
ライラは、頷くことしかできない。その点は後悔している。反省もしている。
だからそんな甘い顔と声で叱らないで、叱っているとは思えない手つきで。
「だから将来の約束をしてからキスをした方がいいと思う。」
もう触れそうな距離で囁かれて、湯気が出そうなほどライラは真っ赤だった。
「私には君が必要なんだ。」
髪に指をからめる。
「ライラ?頼む。結婚してくれ」
おでことおでこをコツン、とあてる。
「わたし、でも……」
「ん?」
「エドガー様に、つりあわないです、頭もよくないし、貴族令嬢らしくないし、それに」
「そんなことは伴侶に求めてないし、
単に頭の性能という意味では速度において私より優れた人間は見たことがないから、大差ない。君が私を断る理由としては弱いな」
鼻にキスを落とす
「でも、」
エドガーは唇で黙らせた。
それは軽いものだったけれど、ライラはびっくりして体の力が抜けた。
「君の口から、断り文句ばかりでるのは辛い」
「わ、わたし、もっとよく知ってから結婚したいかどうか考えたいです……!」
「私も知ってほしい。君に値する男かどうか」
手を取ってキスをする。
「ひえええ」
「生涯かけて証明する」
「エドガー様、いっぺんに今日じゃなくていいです。ゆっくりでお願いします」
「そうか。」
「エドガー様は天才なのにいつも書類仕事ばかりされていて、妬まれて出世の邪魔をされてるんですか?
もっと良い家門のお嬢様の方が将来のためになるんじゃないですか?」
エドガーは渋い顔をした。
「なんのことかわからないが、自分の将来のためと言うならば、毎日好きな人と過ごす方が仕事の意欲も増すし、もっというのなら出世など興味はない」
これ以上は、とエドガーは心の中で思った。
ライラは、きっぱりと言い切るエドガーにときめいていた。
好きな人と、毎日過ごしたい。
学生時代にライラがそう語るのを夢見がちだと同級生にからかわれたことがあった。
それなのに、大人の男性で、年上で、天才と言われている人が同じことを願っている。
それだけの単純な理由で自分を求めてくれている。
「私もエドガー様と、一緒にいたいです、けど、結婚はまだすぐには無理です」
ライラが俯いて赤い顔でそういうと、エトガーが強く抱き締めた。
「ありがとうライラ!
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エドガーは書類を入れる鞄の中にしまった。
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