虐めていた義妹に今さら好きだったなんて言えません

スパイシーな観劇

フィオナは幼なじみの侯爵令息の首を絞めていた

「なんで！よりによってこの劇なのよ！」

数日前。
エリオットがリズリーをデートに誘いたいとフィオナに相談を持ちかけてきた。
『今まで、兄としか思ってない相手から急に誘われてもリズリーも困るだろう。
フィオナも一緒に居てくれないか』

『いいわね！それでもお兄様と私たちだけなら、やっぱり兄としか見られないから、私のデートに付き合うってのはどう？』

『お前、そんな相手がいるのか』

『私がデートに誘ってといえば行列ができるわ。それも面倒だからリュカに頼むわ』

『あいつなら大丈夫だな』

リュカとは幼い頃からエリオットも面識がある。

『私とリュカが座るから、お兄様とリズリーは少しはなれた席を取るわね』

『……リズリーが嫌でないのなら』

フィオナは思った。
兄がそんな表情をするなんて、もうリズリーのことを意識していると白状しているようなものだし。
リズリーのお兄様に対する気持ちは憧れだと思うけど

この二人、すぐいい雰囲気になって、くっつくんじゃない？

リュカに事情を話して協力を頼むとすぐにのってくれた。
いま一番人気の劇のチケットを予約してくれた。

リズリーは驚いていたけど、何を着たらいいの？と慌てているのもかわいかったし。
お兄様も女性への気遣いを予習したり
二人ともぎこちないけれど初々しさがまたいい感じで
これは絶対に上手く行くわ！と思ったのに


リュカを睨み付ける

「ごめん、ハッピーエンドなのは間違いないから」

大人気な演目なのはともかく、なんで、生き別れの実の兄妹が恋に落ちて、真相を知って心中寸前までいく暗い話を選んだ！？


セリフの一つ一つが地雷なんだけど！

「いっそ、一緒に暮らしていたら妹と兄としか思わなかったのに」

お兄様とリズ姉様、暮らしてたし！

「血の繋がりが運命を呼び寄せた」

ちょっとは血縁あるし

「いっそ兄妹じゃなかったら良かったのに」

兄妹じゃないけど、今は微妙なところなの！

「他人だったら愛せたのに」

あー(諦め)

「お前にお兄様と呼ばれるのなんて耐えられない」

呼ばれてたけどね

「妹に欲情するなんて俺は獣のようだ」

あーーーー(気まずい)


「ねえ、なんで相談してくれなかったの？」


「ごめん、フィオナ。本当にごめんって」

これで二人が上手くいかなかったら恨むからね！


「リズ姉、どうだった？」

「フィオナ、リュカさん、あの、申し訳ないんだけど」
青い顔をしてリズリーがうつむいた。

フィオナはリュカを殴るための拳に力を込めた。

「エリオット様が横にいると思うだけで、劇に集中できなくて、内容をよく覚えてないの……。ごめんなさい。せっかく取ってくださったのに。
舞台がキラキラして花がたくさんだったり、ドレスがきれいだったわ」


フィオナは拳を下ろした。

「フィオナ、リュカ今日はありがとう。」

エリオットが小声で話しかけた。
「リズリーの様子が気になって舞台に集中できなかった。
お前たちには世話になったからこれで美味いものでも食べて帰りなさい。

俺は、別の馬車で帰る」

「えっ」

「リズリーと行きたい場所があって」

「お兄様！」

女性嫌いとまで言われた兄の変貌ぶりにフィオナは感激して拳を握り振り上げた。

振り上げた先にリュカの顎があって、呻き声と共にリュカは沈んだ。