虐めていた義妹に今さら好きだったなんて言えません

仙桜可律

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苦々しい妹

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「ちょっと!お兄様!!」

 着替えようとしたら妹が駆け込んできた。

「落ち着け。帰ってきたばかりだぞ。」

「お兄様こそ、うまくエスコートできたの?」

「……まあ、感触は悪くないんじゃないだろうか」

「根拠をお聞きしても?」

「会話が少なくても以心伝心というか家族のような繋がりを感じる。リズは恥ずかしそうに下を向いていることが多かったが、それは多少なりとも意識してくれたということではないだろうか。
 兄と思っていたら堂々とするだろう。お前みたいに」

 ダメだ、仕事には完璧なのになんでこんなに見通しが甘いんだろう

「残念ながら、お兄さま。リズに伝わってませんわ。兄と妹として出掛けてると世間体が悪いとおっしゃったのは本当ですの?」

「世間体が悪いとは言ってない。ただ、噂になるかもしれないと言った。」

「似たようなものですわ、だからリズ姉様はもう出掛けるのを止めようと思っているわ」

「なぜそうなる!」

「こっちが聞きたいですわ!」

「兄と妹として一緒に出掛けるなんて無理があるだろう。噂になるのなら、きちんと、婚約してだな、そういう関係になったほうがお互いに良いんじゃないかと言ったんだが」

「ちゃんと告白したのですか」

「婚約して出掛けようと言ったんだから伝わるだろう」

「残念ながら!少しも伝わってません。」

「なぜだ……!」

「リズ姉様の自己評価が低いのも一因かもしれませんわね。今までの恋人に口説かれたりしなかったのかしら」

ガタガタッ

机に当たってよろけた。
あら、珍しい姿を見てしまったわ。
「男爵領ではリズ姉様は皆さんに慕われていました。貴族の回りくどい言い回しではなく、素朴な素直な男性のほうが心に響くのかもしれませんわね。お姉さまも純粋な方なので」

「ぐっ」

「無駄に頭脳をフル回転させても、心が得られるとは限りませんのよ。
私も、好みじゃなくても真剣に思ってくださる方には誠意を持った対応をしますよ。心を打たれますもの」

「お前ですらそうなのか……。だから自信家で傲慢に見えるけど意外と断った相手に恨まれないんだな」

「失礼ね」

「リズが子供の頃に俺が虐めたから、自己評価が低いのかもしれない。責任を取って一生大切にする」

「いきなり重いのもダメです」

「どうすればいいんだ!リズが他の奴と結婚するなんて嫌だ」

「それをそのまま伝えればよろしいのよ。馬鹿なんですか?」


「今までこんなことはなかったからな」

相手の気を引きたいなど、リズだけだ。昔も今も。







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