ものすごく不本意そうな顔をしながら兄弟子が溺愛してくる話

仙桜可律

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ミラは夢を見る

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ワイアットの邸につく数時間前。

ギリムは転移魔法でワイアットの邸に行こうとしていた。
それをミラが止めた。
「せめて王都の景色を見てみたいんです!お願いします!」

「えー、めんどくさい。じゃあ王都の中央から少しだけ馬車に乗るか」

「ありがとうございます!」

ギリムが急ぐのには理由がある。
「あいつ、土壇場でやっぱり無理!って、逃げそうなんだよな」

ワイアットと長い付き合いだからこそ、行動をよんでいた。
実際その通りになった。

「師匠!見てください!美味しそうなパン屋さんが」

「師匠、あんなに可愛い犬が!」

「師匠、キレイな宝石の看板があります!」


ギリムは腕組みをして寝ている。

「師匠、王都にはあんなにスタイルの良いお姉さんが!」

「どこ!?」

窓に張り付くように飛び起きたギリムに、ミラーさの冷たい視線が刺さる。
「師匠のそういうところ、本当にどうかと思います」

「ふっ、お子さまにはわからないだろうが、俺は恋愛のエネルギーで上手く魔力を調整してるんだよ」

絶対に嘘だ、とミラは思った。

ワイアットの邸に着いたときに、使用人たちが青ざめていた。

奥から出てきたのは若い男性だった。

黒髪で目が鋭い。

怖い人かな?と思ったけど話し方が丁寧で優しかった。

カインさん、というワイアット様の弟子は邸のことを任されているようで、使用人の人も執事もカインさんに相談していた。

師匠がすぐに帰るとわかったときに、私よりカインさんのほうが慌てていた。

私が心細いから師匠も泊まっていったらどうかと勧めてくれていた。
心細いどころか師匠がいたら落ち着かない。

師匠が早く王都に来たかった理由は、女の人と約束をしているからだ。しかも複数。

なので、居ない方が落ち着く。

まあそんな汚れた師匠の事情をカインさんに言うわけにはいかない。これでも弟子なので恩がある。最低限の尊厳は守らないと。

師匠が帰ってから部屋に案内された。
侍女さん?で良いのだろうか。おばあちゃんと呼びたいくらいの優しそうな女性。
ワイアット様がとても優しいし優秀な方だということを教えてくれた。

部屋は白を基調とした感じで落ち着いている。客間なので、あまり物がない。

荷物を整理しないといけないけれど、特に急ぐものもない。
あ、王都で服を買いなさいと師匠からお金をもらっていた。

明日にでも王都の中心街で買いたい。
出かけることを言っておけば自由に過ごして良いと言われた。

あとで
カインさんに……

「ミラさん?」

ぱち、と目を開けるとカインさんがいた。
かなりの近くで


「ああ良かった。部屋の前で何度か声をかけたんですが……ソファで突っ伏しているから心配しました。」

「あ、すみません……」

初日から心配をかけてしまった。

「この部屋は殺風景でしょう。あなたの好みがわからなかったので、とりあえず客間のままにしてます。
よかったら、近いうちに必要なものを買いに行きましょう。」

「いいんですか?」

「好きなものを選んだ方が快適に過ごせるでしょう」

「ありがとうございます!」

カインさん親切!

「お菓子ここに置いてます。夕飯は呼びに来ます」

「カインさんも一緒に食べてくれるんですか」

「あ、いや、私は……一緒の方が良いですか?」

「はい」

すると、カインは一瞬苦い顔をした。

「わかりました。なるべくそうします。では、ゆっくりしてください。」

カインが出ていったあと、ミラはベッドに潜り込んだ。

ふわふわで、気持ちいい。
迎える準備をしてくれたこの邸の人とワイアット様に感謝をした。






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