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27.帰りを待ちながら
ラルフ様の帰りを待って一緒に食事をしようと思っていたけれど、もう日も暮れている。途中で何か手違いがあって宿に泊まるということも考えられる。
それでも、待ちたいと思った。
ラルフ様が帰りたいと思っているのなら、待ちたい。もし何かあれば連絡をくださる筈だし。
いえ、本当のところは何をしていても落ち着かないから、時間つぶしを思い付かないだけかもしれない。
夜会でラルフ様と話していた時は、恋人らしい雰囲気ではなかったし婚約なんて考えもしていなかった。
婚約者になってからとても大切にされている。
彼を待つ時間は、なにもしなくても無駄だとは思わなかった。
用意された軽食とお茶。
クラッカー、チーズ、サンドイッチ。ブランデー漬けのフルーツの入ったケーキ。
侯爵家の皆さんが本当によくしてくださって、ご両親も仲良くて羨ましい。こんなふうにラルフ様と歳を重ねていけるといいな。
馬車の音がした気がして見下ろすと、門をくぐるところだった。
ブランケットを肩にかけて
一階へ降りる。
門番の一人が玄関ホールのなかまで来て家令に話している。
どうやら、ラルフ様は馬車の中で眠られているようだった。
「お疲れなのですね」
しかし、男性を担ぐことは簡単ではなく馭者も声をかけるのみだった。
起こしていいものかどうか、と言いに来たのだった。
それでも馬車の中では安眠できないし、起きていただく方がいいだろうとの意見で一致した。
「あの、もしかしたら」
声をかけると、皆が振り返った。
「お茶を差し上げても良いでしょうか。」
「フローラ様の声で起きるかもしれませんね」
馭者が笑って舌を出して、家令に咳払いをされた。
「だって若様、とにかく早く走らせてくれって。婚約者様によっぽど会いたかったんでしょう」
フローラが頬を押さえて赤くなった。
ハーブティーを入れてフローラが馬車のドアを開けた。
ラルフは頭を抱えるようにして眠っていた。これは体が痛くなりそうな体勢だと思った。
「ラルフ様、お茶をどうぞ」
瞼が、少し動いた。
「ん、ありがとう。フローラ」
眠っているのかまだ目は開けず、ふにゃっ、と笑った。
「!」
かわいい。
思わず、他の使用人たちと顔を見合せる。
あきらかにニヤニヤしている者もいる。
「ラルフ様、おかえりなさい。」
肩を揺すると、目があいた。
「ただいま、フローラ」
そう言って、にっこりと微笑んだ。
お茶を差し出すと、ゆっくりと飲んでくれた。
少しは暖まっただろうか。
「ラルフ様、歩けますか」
「うん、」
まだ眠そうなので門番が手を添える。
屋敷に入ってから、ラルフ様が瞬きをした。
「フローラ、待っててくれたのか」
頷くと、抱き締められた。
「こんなに遅くなってごめん、もう休んでると思ってた。ありがとう」
「ラルフ様、お食事は?」
「軽く済ませた。フローラは済んでる?」
「私も軽く頂きました」
「もしよろしければ、軽くつまむものをお部屋にお持ちしますが」
そう声をかけられて、抱き合ったままだと二人は気づいて赤くなった。
「もう少し話したいけど、いい?」
「はい、私も。」
「じゃあ、ワインとお茶も頼む。」
「どちらのお部屋にお持ちすれば?」
二人とも固まる。
ラルフの私室にフローラを呼ぶのも
フローラの使っている客室を訪れるのも
この時刻に未婚の男女が、しかも両親がいるのにまずい気がする。
(婚約者だし屋敷内のことで外聞を気にする必要はない。ただ、理性がもつかどうかだな)
ラルフはため息をついて、フローラが使っているのとは別の客室に用意するように頼んだ。
フローラが案内された部屋にいると、ラルフが着替えてやってきた。
「ラルフ様、お疲れですよね。早くお休みになった方がいいのでは」
「そう、なんだけどね」
珍しく歯切れが悪い。
それでも、待ちたいと思った。
ラルフ様が帰りたいと思っているのなら、待ちたい。もし何かあれば連絡をくださる筈だし。
いえ、本当のところは何をしていても落ち着かないから、時間つぶしを思い付かないだけかもしれない。
夜会でラルフ様と話していた時は、恋人らしい雰囲気ではなかったし婚約なんて考えもしていなかった。
婚約者になってからとても大切にされている。
彼を待つ時間は、なにもしなくても無駄だとは思わなかった。
用意された軽食とお茶。
クラッカー、チーズ、サンドイッチ。ブランデー漬けのフルーツの入ったケーキ。
侯爵家の皆さんが本当によくしてくださって、ご両親も仲良くて羨ましい。こんなふうにラルフ様と歳を重ねていけるといいな。
馬車の音がした気がして見下ろすと、門をくぐるところだった。
ブランケットを肩にかけて
一階へ降りる。
門番の一人が玄関ホールのなかまで来て家令に話している。
どうやら、ラルフ様は馬車の中で眠られているようだった。
「お疲れなのですね」
しかし、男性を担ぐことは簡単ではなく馭者も声をかけるのみだった。
起こしていいものかどうか、と言いに来たのだった。
それでも馬車の中では安眠できないし、起きていただく方がいいだろうとの意見で一致した。
「あの、もしかしたら」
声をかけると、皆が振り返った。
「お茶を差し上げても良いでしょうか。」
「フローラ様の声で起きるかもしれませんね」
馭者が笑って舌を出して、家令に咳払いをされた。
「だって若様、とにかく早く走らせてくれって。婚約者様によっぽど会いたかったんでしょう」
フローラが頬を押さえて赤くなった。
ハーブティーを入れてフローラが馬車のドアを開けた。
ラルフは頭を抱えるようにして眠っていた。これは体が痛くなりそうな体勢だと思った。
「ラルフ様、お茶をどうぞ」
瞼が、少し動いた。
「ん、ありがとう。フローラ」
眠っているのかまだ目は開けず、ふにゃっ、と笑った。
「!」
かわいい。
思わず、他の使用人たちと顔を見合せる。
あきらかにニヤニヤしている者もいる。
「ラルフ様、おかえりなさい。」
肩を揺すると、目があいた。
「ただいま、フローラ」
そう言って、にっこりと微笑んだ。
お茶を差し出すと、ゆっくりと飲んでくれた。
少しは暖まっただろうか。
「ラルフ様、歩けますか」
「うん、」
まだ眠そうなので門番が手を添える。
屋敷に入ってから、ラルフ様が瞬きをした。
「フローラ、待っててくれたのか」
頷くと、抱き締められた。
「こんなに遅くなってごめん、もう休んでると思ってた。ありがとう」
「ラルフ様、お食事は?」
「軽く済ませた。フローラは済んでる?」
「私も軽く頂きました」
「もしよろしければ、軽くつまむものをお部屋にお持ちしますが」
そう声をかけられて、抱き合ったままだと二人は気づいて赤くなった。
「もう少し話したいけど、いい?」
「はい、私も。」
「じゃあ、ワインとお茶も頼む。」
「どちらのお部屋にお持ちすれば?」
二人とも固まる。
ラルフの私室にフローラを呼ぶのも
フローラの使っている客室を訪れるのも
この時刻に未婚の男女が、しかも両親がいるのにまずい気がする。
(婚約者だし屋敷内のことで外聞を気にする必要はない。ただ、理性がもつかどうかだな)
ラルフはため息をついて、フローラが使っているのとは別の客室に用意するように頼んだ。
フローラが案内された部屋にいると、ラルフが着替えてやってきた。
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「そう、なんだけどね」
珍しく歯切れが悪い。
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