どうせ政略結婚だから、と言われた話

仙桜可律

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ブルーノとセイン

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セインは一人暮らしをしている。
夜会のあとは実家に帰ることもある。あとは、何か急な用事で呼ばれて行くこともある。
今日は執事から連絡が来たので仕事を早く終えた。
『夜会のあとからブルーノ様がおかしいので助けてください』

……まあ、予想はついている。クリスからも聞いた。

「セイン様!助けてください!」

執事と使用人たちが頭を下げてきた。
ブルーノの様子を聞くと、壁を殴ったり机に突っ伏したり。食事もしなかったり、夜もふらふら散歩をしたり。

本当に、グズグズにダメ人間になっていた。

「大丈夫か、お前」

泣き腫らしてさらに目つきの鋭くなった弟。振り向いてからぼーっとしていたが、視点が定まったと同時にクッションを投げてきた。

「兄貴の顔だけは今見たくない!」

懐かしいな、この感じ。五歳の差があると出来ることはかなり違う。子供の頃は喧嘩というよりはブルーノが拗ねていたことが多い。そして、一旦拗ねると長い。

だいたいはアルテの前でブルーノが格好をつけたいのにセインのほうがなんでも出来るからズルい、というようなものだったと思う。

「とりあえず着替えて降りてこい。何か腹にいれた方が落ち着くだろう。」

子供扱いをして宥めても逆効果だろう。

しばらくして降りてきたブルーノは野菜スープをゆっくり飲んでいた。

「さっきは、ごめん」

しおらしい弟を見ると、なんとかしてやりたいと思うが

ここまで粉々に壊れたのは弟自身のせいだ。

「俺、卒業したら辺境に行くから。
結婚式、できれば婚約も来年以降にしてほしい。十年くらいは辺境に所属して、頭を冷やす。そのあともあちこちを巡るよ。
甥っ子や姪っ子や孫がいたら諦めがついて、ちゃんと祝福できると思うから……」

え?
なに言ってんのコイツ

「でも、お願いだから来月のアルテの誕生日で婚約発表するのは見たくない。来年以降にして欲しいけど、無理なら俺は旅に出るから。兄貴と幸せそうに並んでるのなんか見たく、ない」

ぼろぼろ涙を流しながら鼻水をすすりながらスープを口に運んでいる。

「ものすごく、ボロボロだな」

つい口に出してしまった
「アルテに嫌われたなら格好つけなくていいし。もうボロボロでいい。誰にも好かれなくていい。一生結婚もしない」

「お前がそんなんだとアルテも気にして幸せになれないだろ」

「もう旦那気取りかよ……!」

「落ちつけよ。婚約の話自体を白紙するとか……僕ら以外にも可能性があってもいいだろ。アルテが結婚したい人ができたらそれが一番なんだから」

「そんなの嫌だ!」

「じゃあ僕が結婚してもいいの?」

「もっと嫌だ!」

嫌だ嫌だと駄々をこねる弟に、ちょっとこれは手こずりそうだと思った。
あっちは大丈夫かな。
まあクリスがうまくやってるだろう





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