どうせ政略結婚だから、と言われた話

仙冬可律

文字の大きさ
5 / 16

ブルーノとセイン

しおりを挟む
セインは一人暮らしをしている。
夜会のあとは実家に帰ることもある。あとは、何か急な用事で呼ばれて行くこともある。
今日は執事から連絡が来たので仕事を早く終えた。
『夜会のあとからブルーノ様がおかしいので助けてください』

……まあ、予想はついている。クリスからも聞いた。

「セイン様!助けてください!」

執事と使用人たちが頭を下げてきた。
ブルーノの様子を聞くと、壁を殴ったり机に突っ伏したり。食事もしなかったり、夜もふらふら散歩をしたり。

本当に、グズグズにダメ人間になっていた。

「大丈夫か、お前」

泣き腫らしてさらに目つきの鋭くなった弟。振り向いてからぼーっとしていたが、視点が定まったと同時にクッションを投げてきた。

「兄貴の顔だけは今見たくない!」

懐かしいな、この感じ。五歳の差があると出来ることはかなり違う。子供の頃は喧嘩というよりはブルーノが拗ねていたことが多い。そして、一旦拗ねると長い。

だいたいはアルテの前でブルーノが格好をつけたいのにセインのほうがなんでも出来るからズルい、というようなものだったと思う。

「とりあえず着替えて降りてこい。何か腹にいれた方が落ち着くだろう。」

子供扱いをして宥めても逆効果だろう。

しばらくして降りてきたブルーノは野菜スープをゆっくり飲んでいた。

「さっきは、ごめん」

しおらしい弟を見ると、なんとかしてやりたいと思うが

ここまで粉々に壊れたのは弟自身のせいだ。

「俺、卒業したら辺境に行くから。
結婚式、できれば婚約も来年以降にしてほしい。十年くらいは辺境に所属して、頭を冷やす。そのあともあちこちを巡るよ。
甥っ子や姪っ子や孫がいたら諦めがついて、ちゃんと祝福できると思うから……」

え?
なに言ってんのコイツ

「でも、お願いだから来月のアルテの誕生日で婚約発表するのは見たくない。来年以降にして欲しいけど、無理なら俺は旅に出るから。兄貴と幸せそうに並んでるのなんか見たく、ない」

ぼろぼろ涙を流しながら鼻水をすすりながらスープを口に運んでいる。

「ものすごく、ボロボロだな」

つい口に出してしまった
「アルテに嫌われたなら格好つけなくていいし。もうボロボロでいい。誰にも好かれなくていい。一生結婚もしない」

「お前がそんなんだとアルテも気にして幸せになれないだろ」

「もう旦那気取りかよ……!」

「落ちつけよ。婚約の話自体を白紙するとか……僕ら以外にも可能性があってもいいだろ。アルテが結婚したい人ができたらそれが一番なんだから」

「そんなの嫌だ!」

「じゃあ僕が結婚してもいいの?」

「もっと嫌だ!」

嫌だ嫌だと駄々をこねる弟に、ちょっとこれは手こずりそうだと思った。
あっちは大丈夫かな。
まあクリスがうまくやってるだろう





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隣の芝生は青いのか 

夕鈴
恋愛
王子が妻を迎える日、ある貴婦人が花嫁を見て、絶望した。 「どうして、なんのために」 「子供は無知だから気付いていないなんて思い上がりですよ」 絶望する貴婦人に義息子が冷たく囁いた。 「自由な選択の権利を与えたいなら、公爵令嬢として迎えいれなければよかった。妹はずっと正当な待遇を望んでいた。自分の傍で育てたかった?復讐をしたかった?」 「なんで、どうして」 手に入らないものに憧れた貴婦人が仕掛けたパンドラの箱。 パンドラの箱として育てられた公爵令嬢の物語。

カリスタは王命を受け入れる

真朱マロ
恋愛
第三王子の不始末で、馬に変えられた騎士との婚姻を命じられた公爵令嬢カリスタは、それを受け入れるのだった。 やがて真実の愛へと変わっていく二人の、はじまりの物語。 別サイトにも重複登校中

婚約破棄? あ、ハイ。了解です【短編】

キョウキョウ
恋愛
突然、婚約破棄を突きつけられたマーガレットだったが平然と受け入れる。 それに納得いかなかったのは、王子のフィリップ。 もっと、取り乱したような姿を見れると思っていたのに。 そして彼は逆ギレする。なぜ、そんなに落ち着いていられるのか、と。 普通の可愛らしい女ならば、泣いて許しを請うはずじゃないのかと。 マーガレットが平然と受け入れたのは、他に興味があったから。婚約していたのは、親が決めたから。 彼女の興味は、婚約相手よりも魔法技術に向いていた。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【完結】伯爵令嬢の25通の手紙 ~この手紙たちが、わたしを支えてくれますように~

朝日みらい
恋愛
煌びやかな晩餐会。クラリッサは上品に振る舞おうと努めるが、周囲の貴族は彼女の地味な外見を笑う。 婚約者ルネがワインを掲げて笑う。「俺は華のある令嬢が好きなんだ。すまないが、君では退屈だ。」 静寂と嘲笑の中、クラリッサは微笑みを崩さずに頭を下げる。 夜、涙をこらえて母宛てに手紙を書く。 「恥をかいたけれど、泣かないことを誇りに思いたいです。」 彼女の最初の手紙が、物語の始まりになるように――。

何か勘違いされていませんか?

りのりん
恋愛
楽しかった日常に不穏な雰囲気が あんなに憧れていた兄様が…… ダブルざまぁでさようなら

婚約破棄した王子が見初めた男爵令嬢に王妃教育をさせる様です

Mr.後困る
恋愛
婚約破棄したハワード王子は新しく見初めたメイ男爵令嬢に 王妃教育を施す様に自らの母に頼むのだが・・・

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...