どうせ政略結婚だから、と言われた話

仙桜可律

文字の大きさ
6 / 16

アルテとクリスとセイン

しおりを挟む
セインはフィッチ家を訪れていた。
クリスと話があるのと、アルテのことも心配だったから。

「……悪いな、忙しいのに呼び出して」

「いや、気になってたから」

クリスのほうが二歳下。
クリスはセインとブルーノの間なので、どちらも幼馴染みで兄弟のような親し身を持っていた。妹と結婚したらどちらかは義理の弟になる。

幼い頃から、アルテとブルーノが遊んでいるのを二人は見ていた。
ままごとのような二人がそのまま大きくなって結婚するんだと思っていた。

「……そっちはどうだ」

クリスが聞いた

「ボロボロだ。」

「ブルーノ、馬鹿なのか?」

「普段は冷静に色々こなせる器用な方なんだけど、アルテに関しては全くダメだね」

「アルテが、お前たちとの婚約が無理だと言ってる」

「そうなのか、俺も白紙に戻した方がいいと思ってる。」

「俺はブルーノがアルテを傷つけたことを許してないからな」

「それに関しては同感だ。僕もアルテのことは妹のように可愛いと思ってるよ。ブルーノの自業自得だと思う。でも、」

クリスはため息をついた。
「でも、あー、やっぱり許せないけどな。

アルテ、なんで今日は出てこないと思う?」

「泣いてるのか?」

「いや、お前に会いたくないんだって。」
アルテ……お前もか。
『兄貴の顔は見たくない』
ブルーノと二人ともに言われたらちょっと悲しいじゃないか。

「まあ、お見舞いのお菓子を渡したらお礼を言いたいから降りてくるって言ってたけど」

「いい子だな」

「お前の弟と違って素直だからな、アルテは」

クリスしつこい。

しばらくして、アルテが降りてきた。

「セインさま、ごめんなさい」

「いや、こちらこそ何て言って良いか。ブルーノがすまないな」

うるっ、とアルテの目が潤んだ。涙がこぼれそうだ。
「私っ、ギリアム家との婚約なんて、嫌です。」

「まあそうだよね、僕のことも嫌になっちゃうか」

「そうではなくて、セイン様は昔から優しいし、多分良い旦那様になるでしょうし、穏やかな家庭を持てるかと思うんですが、」

ボロボロ泣き出した。
クリスが肩を抱き寄せて顔を拭いてやる。

「セイン様と結婚したら、ブルーノの結婚式にも出ないといけないでしょ?ブルーノの奥様とも親しくしないといけないでしょ?ブルーノが奥様に優しくしたり子供を抱いたり、私、そんなの!絶対!無理!嫌です!」

クリスが凶悪な顔をしている。
「な?俺はお前の弟を許さない。許さないけど、アルテがこうなんだよ!
俺は許さないけどな!」

「……どうやったらこんなに拗れるんだよ」

ブルーノもアルテもそっくり同じようなことを言ってるのに

すっと婚約して仲良くすればいいのに。

あ、ブルーノのせいか。あいつが素直じゃないから。
アルテが目を冷やすために侍女に連れていかれたあと。
「ブルーノに聞いたことあるんだよ」
クリスが言った。

「なんで昔みたいにアルテと遊ばないんだ?って。あいつが12歳からいかな。
そしたら、『もし近づいて好きになって、兄貴と結婚したら耐えられない。俺と婚約したらちゃんと好きになる』って。」
「馬鹿かよアイツ」

「それでアルテに嫌われて。」
「いま、俺とアルテが結婚したら耐えられないから辺境に数年くらい志願するって言ってるよ……」

「もうそれで良くね?」

いやいや、恨まれるって



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

記憶喪失になった婚約者から婚約破棄を提案された

夢呼
恋愛
記憶喪失になったキャロラインは、婚約者の為を思い、婚約破棄を申し出る。 それは婚約者のアーノルドに嫌われてる上に、彼には他に好きな人がいると知ったから。 ただでさえ記憶を失ってしまったというのに、お荷物にはなりたくない。彼女のそんな健気な思いを知ったアーノルドの反応は。 設定ゆるゆる全3話のショートです。

【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。 そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。 婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ

紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか? 何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。 12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

後悔などありません。あなたのことは愛していないので。

あかぎ
恋愛
「お前とは婚約破棄する」 婚約者の突然の宣言に、レイラは言葉を失った。 理由は見知らぬ女ジェシカへのいじめ。 証拠と称される手紙も差し出されたが、筆跡は明らかに自分のものではない。 初対面の相手に嫉妬して傷つけただなど、理不尽にもほどがある。 だが、トールは疑いを信じ込み、ジェシカと共にレイラを糾弾する。 静かに溜息をついたレイラは、彼の目を見据えて言った。 「私、あなたのことなんて全然好きじゃないの」

せめて、淑女らしく~お飾りの妻だと思っていました

藍田ひびき
恋愛
「最初に言っておく。俺の愛を求めるようなことはしないで欲しい」  リュシエンヌは婚約者のオーバン・ルヴェリエ伯爵からそう告げられる。不本意であっても傷物令嬢であるリュシエンヌには、もう後はない。 「お飾りの妻でも構わないわ。淑女らしく務めてみせましょう」  そうしてオーバンへ嫁いだリュシエンヌは正妻としての務めを精力的にこなし、徐々に夫の態度も軟化していく。しかしそこにオーバンと第三王女が恋仲であるという噂を聞かされて……? ※ なろうにも投稿しています。

初恋にケリをつけたい

志熊みゅう
恋愛
「初恋にケリをつけたかっただけなんだ」  そう言って、夫・クライブは、初恋だという未亡人と不倫した。そして彼女はクライブの子を身ごもったという。私グレースとクライブの結婚は確かに政略結婚だった。そこに燃えるような恋や愛はなくとも、20年の信頼と情はあると信じていた。だがそれは一瞬で崩れ去った。 「分かりました。私たち離婚しましょう、クライブ」  初恋とケリをつけたい男女の話。 ☆小説家になろうの日間異世界(恋愛)ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/18) ☆小説家になろうの日間総合ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/18) ☆小説家になろうの週間総合ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/22)

失踪していた姉が財産目当てで戻ってきました。それなら私は家を出ます

天宮有
恋愛
 水を聖水に変える魔法道具を、お父様は人々の為に作ろうとしていた。  それには水魔法に長けた私達姉妹の協力が必要なのに、無理だと考えた姉エイダは失踪してしまう。  私サフィラはお父様の夢が叶って欲しいと力になって、魔法道具は完成した。  それから数年後――お父様は亡くなり、私がウォルク家の領主に決まる。   家の繁栄を知ったエイダが婚約者を連れて戻り、家を乗っ取ろうとしていた。  お父様はこうなることを予想し、生前に手続きを済ませている。  私は全てを持ち出すことができて、家を出ることにしていた。

処理中です...