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夜会のアルテ
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「夜会?そんな気分ではないのですが……お兄様が参加したいなんて珍しいですわね」
「ああ、うん、ちょっとな。
その、気になる令嬢がいて。」
「そうなんですの?」
セインと話し合ったあと、アルテを夜会に連れ出すことにした。
ギリアム家と婚約をやめるにしても次の縁談のこともある。変な奴にめをつけられたり、焦って決めてしまっては困る。今まではギリアム家の二人が婚約者候補ということで、守られていたから。
いきなりフリーになったと知られたら狼の群れに兎を放り込むようなものだ。
アルテも兄の恋愛話に興味を持ったようだ。
「どなたですの?」
「いや、まだちょっといいなくらいで。もし彼女に恋人がいたら諦めるよ。あと、夜会でどんな風に振る舞うのかとか少し見てみたいんだ」
「それは、わかります。」
令嬢でも同性には良い方でも、男性の前で態度の変わる方や品定めをしてばかりの方に夜会でがっかりした覚えがありました。
もし義姉になるならそういう方より、裏表のない方のほうが良いわ
「私の知ってる方かしら。セシル様は優しいし、アンナさまも絵が趣味の大人しい方ですし、ミーナ様は……あ、ミーナ様は奥ゆかしくて上品な方でいつかお話してみたいと思っていて、お義姉と呼びたいくらい憧れていますの。でも、無理ですわ。ミーナ様はセイン様をいつも見つめてらっしゃるの。やめたほうが良いですわよ、お兄様」
アルテが本当に気の毒そうに言うので、クリスも一応残念そうにしておいた。
(なんで俺が何もしてないのにフラれたみたいに……。アルテを連れ出す口実なのに、セインの考えた方法を試してるだけなのに、しかもアイツがモテている話まで聞かされて)
すべての面倒くささの元凶はブルーノだ。
やっぱり許せない。
久しぶりの夜会だから、アルテと色を合わせてみた。
塞ぎ込んでいたアルテに侍女たちが張り切って飾る。
そうしているうちにアルテの表情も明るくなってきた。
「うちのお嬢様はもう少し派手でも良いと思っていましたの」
「そうですよ。いつもお嬢さまはあのギリアムのお子ちゃまの好みで、妖精みたいに清純派のドレスばかりでしたけど、色々と他にも似合いますよ!」
「ほんと、あのお子ちゃまの好みは童貞の夢ど真ん中というか、清らかで可愛いいつまでも変わらないでいて欲しいだなんて、ほんっと執着心の塊で、」
侍女コワイ……。
ブルーノ、お前ここでも嫌われてるぞ
「じゃあ、もっと令嬢の装いは誉めたほうがいいのか?一般論として聞きたいんだが」
「うーん、誉めすぎるのも冷めますよね。」
「ギリアムの坊っちゃんも、セイン様はさりげなく誉めるの良いですよね」
また!アイツが株を上げている
「でも、あのお子ちゃまがお嬢さまに見とれて、言葉を失くして照れ隠しで横をプイッて向いたり、『悪くねえな』って言うのも、ちょっと可愛いですよね」
「わかる!勝った!って思いますもん」
「うちのお嬢様可愛いでしょう?ってニヤニヤしちゃう」
「前なんて、『こんなに可愛くしやがって、ふざけてんのか、他の男にみられるだろうが』って舌打ちしてたの、こっそり御者が聞いてました!」
キャー!っと侍女が顔をおおったり床を踏みしめたりしている。
侍女の心理が難しすぎてコワイ
参加した夜会では少しアルテと離れた。
そのときに男性陣が遠くから話しかけても良いんだろうか、と視線を送っていた。
「クリス、久しぶり」
知り合いに話しかけられる。同級生のゼットだ。
「なあ、妹ちゃん大きくなったな。こーんなに小さかったのに。俺のこと覚えてるかな、ダンスに誘っても良いか?」
「ダンスは苦手だから受けないかもしれないが、話しかけてやってくれ」
「あれ、いいの?ギリアムの番犬くんは?」
番犬!
吹き出してしまった。
「ちょっとケンカみたいなもんだよ」
「あー、正式な婚約前とか、結婚前ってちょっと揉めるよな。よく聞くよ。」
ゼットは婚約者がいるし、今さらアルテと踊っても問題ない。
ゼットはアルテと少し話していた。
アルテも笑顔で応えていた。飲み物をもらったらしい。
その様子を見て、数人の子息がそわそわしていた。
そいつらは会場を見渡して、『番犬』ブルーノが居ないことを確認していた。
クリスに確認してきた奴もいる
「本当に、ギリアム家の兄弟は来てないんですね?」
あいつらどれだけ牽制してたんだよ。
数人と話をして、二人くらいは踊っていた。
アルテは可愛いしモテる。身辺調査はするが、もしブルーノと破談になっても大丈夫だ。
「ああ、うん、ちょっとな。
その、気になる令嬢がいて。」
「そうなんですの?」
セインと話し合ったあと、アルテを夜会に連れ出すことにした。
ギリアム家と婚約をやめるにしても次の縁談のこともある。変な奴にめをつけられたり、焦って決めてしまっては困る。今まではギリアム家の二人が婚約者候補ということで、守られていたから。
いきなりフリーになったと知られたら狼の群れに兎を放り込むようなものだ。
アルテも兄の恋愛話に興味を持ったようだ。
「どなたですの?」
「いや、まだちょっといいなくらいで。もし彼女に恋人がいたら諦めるよ。あと、夜会でどんな風に振る舞うのかとか少し見てみたいんだ」
「それは、わかります。」
令嬢でも同性には良い方でも、男性の前で態度の変わる方や品定めをしてばかりの方に夜会でがっかりした覚えがありました。
もし義姉になるならそういう方より、裏表のない方のほうが良いわ
「私の知ってる方かしら。セシル様は優しいし、アンナさまも絵が趣味の大人しい方ですし、ミーナ様は……あ、ミーナ様は奥ゆかしくて上品な方でいつかお話してみたいと思っていて、お義姉と呼びたいくらい憧れていますの。でも、無理ですわ。ミーナ様はセイン様をいつも見つめてらっしゃるの。やめたほうが良いですわよ、お兄様」
アルテが本当に気の毒そうに言うので、クリスも一応残念そうにしておいた。
(なんで俺が何もしてないのにフラれたみたいに……。アルテを連れ出す口実なのに、セインの考えた方法を試してるだけなのに、しかもアイツがモテている話まで聞かされて)
すべての面倒くささの元凶はブルーノだ。
やっぱり許せない。
久しぶりの夜会だから、アルテと色を合わせてみた。
塞ぎ込んでいたアルテに侍女たちが張り切って飾る。
そうしているうちにアルテの表情も明るくなってきた。
「うちのお嬢様はもう少し派手でも良いと思っていましたの」
「そうですよ。いつもお嬢さまはあのギリアムのお子ちゃまの好みで、妖精みたいに清純派のドレスばかりでしたけど、色々と他にも似合いますよ!」
「ほんと、あのお子ちゃまの好みは童貞の夢ど真ん中というか、清らかで可愛いいつまでも変わらないでいて欲しいだなんて、ほんっと執着心の塊で、」
侍女コワイ……。
ブルーノ、お前ここでも嫌われてるぞ
「じゃあ、もっと令嬢の装いは誉めたほうがいいのか?一般論として聞きたいんだが」
「うーん、誉めすぎるのも冷めますよね。」
「ギリアムの坊っちゃんも、セイン様はさりげなく誉めるの良いですよね」
また!アイツが株を上げている
「でも、あのお子ちゃまがお嬢さまに見とれて、言葉を失くして照れ隠しで横をプイッて向いたり、『悪くねえな』って言うのも、ちょっと可愛いですよね」
「わかる!勝った!って思いますもん」
「うちのお嬢様可愛いでしょう?ってニヤニヤしちゃう」
「前なんて、『こんなに可愛くしやがって、ふざけてんのか、他の男にみられるだろうが』って舌打ちしてたの、こっそり御者が聞いてました!」
キャー!っと侍女が顔をおおったり床を踏みしめたりしている。
侍女の心理が難しすぎてコワイ
参加した夜会では少しアルテと離れた。
そのときに男性陣が遠くから話しかけても良いんだろうか、と視線を送っていた。
「クリス、久しぶり」
知り合いに話しかけられる。同級生のゼットだ。
「なあ、妹ちゃん大きくなったな。こーんなに小さかったのに。俺のこと覚えてるかな、ダンスに誘っても良いか?」
「ダンスは苦手だから受けないかもしれないが、話しかけてやってくれ」
「あれ、いいの?ギリアムの番犬くんは?」
番犬!
吹き出してしまった。
「ちょっとケンカみたいなもんだよ」
「あー、正式な婚約前とか、結婚前ってちょっと揉めるよな。よく聞くよ。」
ゼットは婚約者がいるし、今さらアルテと踊っても問題ない。
ゼットはアルテと少し話していた。
アルテも笑顔で応えていた。飲み物をもらったらしい。
その様子を見て、数人の子息がそわそわしていた。
そいつらは会場を見渡して、『番犬』ブルーノが居ないことを確認していた。
クリスに確認してきた奴もいる
「本当に、ギリアム家の兄弟は来てないんですね?」
あいつらどれだけ牽制してたんだよ。
数人と話をして、二人くらいは踊っていた。
アルテは可愛いしモテる。身辺調査はするが、もしブルーノと破談になっても大丈夫だ。
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