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クリス、一目惚れ
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アルテは兄の贔屓目を抜きにしても可愛い。
蜂蜜のような髪、水色の瞳。少し垂れた大きな目と、柔らかそうな頬。小さな口。小柄で子供っぽいと本人は気にしているが、男が見とれている。マーガレットやスイートピーのような素朴でありながら可憐な、守ってやりたい花のような妹だ。
もちろんもっと美しいことで有名な令嬢は他にもいる。そういう令嬢は教養や社交術や所作など、全てが優れている。
アルテは恥ずかしがり屋なので目立たない。それでも多分どんな男でも可愛いことは認めるだろう。
なんでアルテはあんなに可愛いんだろうな。
俺も金髪だが真っ直ぐの髪だ。アルテは少し癖があるので柔らかそうだ。
目も俺はアルテより色が薄くてつり目なのでキツそうに見えるようだ。
目付きが悪いといえばブルーノだろう。
黒髪でクールでミステリアスだと学園では人気らしいが、アルテの前では緊張してガチガチだし、うちのメイドからはお子ちゃま扱いだ。長身で足も長いし、アルテと並ぶとお互いを引き立てあって、悔しいけど絵になる。中身が残念なだけだ。
セインは顔立ちはブルーノと似ているが涼やかな目元というだけで、目付きが悪い印象はない。銀色の眼鏡を仕事中はかけている。髪は後ろでくくっている。
たまに髪をくくらずにいると、色気がすごいと王宮で人気らしい。
そう、セインは昔から落ち着いていていつもだいたい本を読んでいて、大人っぽかった。
ああいうほうが令嬢にモテるんだろうか。
アルテも言っていたな。
なんとかという令嬢がセインを好きなんじゃないかって。
アルテとブルーノのことばかり気にかけていたけど、俺もそろそろ本気で縁談のために令嬢を覚えないといけない
アルテに以前にも夜会で何人か紹介されて挨拶はしたけれど
さっぱり覚えられない。
アルテもゼットといたら、他の令息が挨拶に来たらしい。数人と話をしているし、知り合いの令嬢と、その婚約者らしき数人と一緒にいる。
見張ってなくても大丈夫そうだ。
あいつじゃあるまいし。
アルテを連れ出す口実とはいえ、来たからには人間観察でもしよう。
しばらく眺めていたら一人の令嬢が目についた。
背中の開いたドレスを着ている。ショールを羽織っているが、スタイルに自信がないと着こなせないだろう。
背が高くスラッとしている。銀髪を高く結い上げて細い首が見えている。
一歩間違えれば下品になりかねないデザインだ。
多分綺麗な人なんだろうな、と思った。
そのあと、アルテの様子を見ながら全体を見ていた。軽食や軽い酒を楽しんだ。
少し酔ったので廻廊に出て涼んでいると、誰かが来る気配がした。
柱の陰に少し隠れた。
「どうしよう、時間がないのに」
パタパタと軽い足音と女性の声がした。
困っているようだ。
近づくと、急に振り返った令嬢とぶつかった。びっくりして離れようとする彼女がバランスを崩したので、抱き止めた。
「きゃっ、すみません」
華奢な肩と腰を支えてゆっくり離れると、彼女がみるみるうちに赤くなった。
「クリス様……痛っ」
どこか怪我をしたのかと見ると、髪の毛がクリスの服の装飾のボタンに絡まっていた
「私っ!すみません」
「待って、動いたら痛いし抜けたりちぎれてしまう。ほどくからしばらく我慢して」
こくり、と頷く令嬢になるべく触れないよう髪の毛をほどいていく
改めてみたら、ものすごく可愛い令嬢だった。緊張しているのか震えている。
ゆっくりとほどいたけれど、綺麗に編まれた髪が少し乱れてしまった。
めちゃめちゃ可愛い子だった。
「侍女を連れてきていますので、大丈夫ですわ」
「では控室まで送ります」
「そんな、申し訳ないです」
「髪だけでも乱れた姿を他の人に見せたくない。私が覆いになりましょう」
彼女を隠すように二階に連れていった。
途中で邸のメイドに休憩用の部屋に彼女を案内してもらい、控室で侍女を呼ぼうとした。
しまった、彼女の名前を聞いていない。
幸い、侍女を連れてきていたのは数人だったらしく、
彼女の特徴を言えばわかってくれた。
休憩室に行くまで侍女は青い顔をしていたが、恐る恐る入って行った。
彼女ともう少し話したいけれど、侍女に会って安心したのだろう。ホッとした様子の彼女に他人である俺が割り込むのは遠慮した。
たぶん、後ろ姿で気になっていた令嬢だと思う。でも、近くでみた顔は可愛らしく、ピンクがかった赤紫の瞳が花びらのようだった。
「お兄様?何かありました?」
「うん、いや、ちょっとな」
「気になっていた方とはお話できましたの?」
「まあ、そんなところだ。近くで見たら忘れられないくらい美しい人だったよ」
「まあ!どなたかそろそろ教えて下さいな」
「名前を聞くのを忘れたけれど、そんなことも忘れるくらい
、彼女と過ごした時間が素晴らしかった」
蜂蜜のような髪、水色の瞳。少し垂れた大きな目と、柔らかそうな頬。小さな口。小柄で子供っぽいと本人は気にしているが、男が見とれている。マーガレットやスイートピーのような素朴でありながら可憐な、守ってやりたい花のような妹だ。
もちろんもっと美しいことで有名な令嬢は他にもいる。そういう令嬢は教養や社交術や所作など、全てが優れている。
アルテは恥ずかしがり屋なので目立たない。それでも多分どんな男でも可愛いことは認めるだろう。
なんでアルテはあんなに可愛いんだろうな。
俺も金髪だが真っ直ぐの髪だ。アルテは少し癖があるので柔らかそうだ。
目も俺はアルテより色が薄くてつり目なのでキツそうに見えるようだ。
目付きが悪いといえばブルーノだろう。
黒髪でクールでミステリアスだと学園では人気らしいが、アルテの前では緊張してガチガチだし、うちのメイドからはお子ちゃま扱いだ。長身で足も長いし、アルテと並ぶとお互いを引き立てあって、悔しいけど絵になる。中身が残念なだけだ。
セインは顔立ちはブルーノと似ているが涼やかな目元というだけで、目付きが悪い印象はない。銀色の眼鏡を仕事中はかけている。髪は後ろでくくっている。
たまに髪をくくらずにいると、色気がすごいと王宮で人気らしい。
そう、セインは昔から落ち着いていていつもだいたい本を読んでいて、大人っぽかった。
ああいうほうが令嬢にモテるんだろうか。
アルテも言っていたな。
なんとかという令嬢がセインを好きなんじゃないかって。
アルテとブルーノのことばかり気にかけていたけど、俺もそろそろ本気で縁談のために令嬢を覚えないといけない
アルテに以前にも夜会で何人か紹介されて挨拶はしたけれど
さっぱり覚えられない。
アルテもゼットといたら、他の令息が挨拶に来たらしい。数人と話をしているし、知り合いの令嬢と、その婚約者らしき数人と一緒にいる。
見張ってなくても大丈夫そうだ。
あいつじゃあるまいし。
アルテを連れ出す口実とはいえ、来たからには人間観察でもしよう。
しばらく眺めていたら一人の令嬢が目についた。
背中の開いたドレスを着ている。ショールを羽織っているが、スタイルに自信がないと着こなせないだろう。
背が高くスラッとしている。銀髪を高く結い上げて細い首が見えている。
一歩間違えれば下品になりかねないデザインだ。
多分綺麗な人なんだろうな、と思った。
そのあと、アルテの様子を見ながら全体を見ていた。軽食や軽い酒を楽しんだ。
少し酔ったので廻廊に出て涼んでいると、誰かが来る気配がした。
柱の陰に少し隠れた。
「どうしよう、時間がないのに」
パタパタと軽い足音と女性の声がした。
困っているようだ。
近づくと、急に振り返った令嬢とぶつかった。びっくりして離れようとする彼女がバランスを崩したので、抱き止めた。
「きゃっ、すみません」
華奢な肩と腰を支えてゆっくり離れると、彼女がみるみるうちに赤くなった。
「クリス様……痛っ」
どこか怪我をしたのかと見ると、髪の毛がクリスの服の装飾のボタンに絡まっていた
「私っ!すみません」
「待って、動いたら痛いし抜けたりちぎれてしまう。ほどくからしばらく我慢して」
こくり、と頷く令嬢になるべく触れないよう髪の毛をほどいていく
改めてみたら、ものすごく可愛い令嬢だった。緊張しているのか震えている。
ゆっくりとほどいたけれど、綺麗に編まれた髪が少し乱れてしまった。
めちゃめちゃ可愛い子だった。
「侍女を連れてきていますので、大丈夫ですわ」
「では控室まで送ります」
「そんな、申し訳ないです」
「髪だけでも乱れた姿を他の人に見せたくない。私が覆いになりましょう」
彼女を隠すように二階に連れていった。
途中で邸のメイドに休憩用の部屋に彼女を案内してもらい、控室で侍女を呼ぼうとした。
しまった、彼女の名前を聞いていない。
幸い、侍女を連れてきていたのは数人だったらしく、
彼女の特徴を言えばわかってくれた。
休憩室に行くまで侍女は青い顔をしていたが、恐る恐る入って行った。
彼女ともう少し話したいけれど、侍女に会って安心したのだろう。ホッとした様子の彼女に他人である俺が割り込むのは遠慮した。
たぶん、後ろ姿で気になっていた令嬢だと思う。でも、近くでみた顔は可愛らしく、ピンクがかった赤紫の瞳が花びらのようだった。
「お兄様?何かありました?」
「うん、いや、ちょっとな」
「気になっていた方とはお話できましたの?」
「まあ、そんなところだ。近くで見たら忘れられないくらい美しい人だったよ」
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