13 / 284
第1章 悪役令嬢は目立ちたくない
第12話 腹をくくるかっ!
しおりを挟む
「リリー様、お話とは?」
私がそう聞くと、リリーは涙を拭いながら話し始めた。
「あ、あの・・・私、アリアナ様に先日のお礼を言おうと思って・・・。あれから学校では全然お会いできなかったので・・・。あの、あの時は助けて頂き、ありがとうございました」
緊張した面持ちで頭を下げる。
(律儀な子だなぁ)
そう言えば1組と3組ってなぜか校舎が離れてるのよね。お昼休みは最近ミリア達と外で食べていたし。放課後は私、すぐ寮に帰っちゃうし。
だから待ち合わせでもしないかぎり、ばったり会うのは難しいだろう。
(しかも、私はヒロインやディーンに会うのを避けているしね、はは・・・)
正直今だって、ヤバいフラグが立たないか冷や冷やしてるのだ。私は「んんっ」と一つ咳払いをして、リリーに向き直った。
「お礼を言われるような、大したことはしていませんわ。それにあの時は私も、リリーさんに助けて頂きましたもの」
「え?」
リリーは戸惑ったようにこちらを見た。
「ディーン様から庇ってくれたでしょう?」
私がそう言ってディーンの名前を出すと、ミリアとレティシアが顔を見合わせて怪訝な表情を浮かべた。
「あの、アリアナ様。ディーン様と何があったのですか?。リリーさんに庇って頂いたとは?」
私は「実は・・・」と、先日の経緯を皆に説明した。
リリーが他の女生徒にいじめられていたこと。ディーンに誤解されて詰め寄られたこと。
「リリーさんはディーン様にはっきり説明してくださいましたわ。しかも謝る様に叱って下さったのです。あの時は少し慌てましたけど・・・」
思い返すと少し笑えて来た。
(くっく・・・痛快)
ディーンの呆気に取られた顔と慌てた様子。
「そう言えばリリーさん。最近はどうですか?。他の女生徒から、嫌な目には逢ってませんか?」
私がそう言うとリリーは目を伏せた。
「はい・・・あの・・・。」
(この様子だと、まだ嫌がらせは続いているようだね)
ゲームの中ではアリアナが率先してリリーをイジメていたけれど、それに乗っかって嫌がらせをする者もいた。
名前なんて分からないけど、アリアナが現れる時にはいつも何人かの取り巻きがいたのだ。
(ビジュアル的にミリア達では無いよね。一組の生徒かな?)
あいつらはいったい誰だったんだろう?。アリアナの友達だったんだろうか?。それとも単にリリーを虐める時だけアリアナにくっついていただけ?
ゲームの説明書にはそこまで詳細には書いていない。
(でも、そうか・・・。今はアリアナが先頭に立っていないだけで、リリーは周りから孤立しているのかもしれない)
リリーは平民でこの学園に入学してきた上に、光の魔力というレアな能力を持つ。しかも学園一と言って良い程の美少女で成績だって優秀だ。おまけにイケメン揃いの攻略者達と親しいとなれば、令嬢達の妬みややっかみを買うのは必然だろう。
ゲームでも1年生の時、リリーに友達は一人も居なかった。だからこそ攻略対象との距離も縮まりやすかったのだが・・・
「リリーさん」
「は、はい!」
「リリーさんは今日、誰と一緒に馬車で来られたのでしょうか?」
私がそう聞くと、リリーは困ったように目を伏せながら小さな声で言った。
「・・・あの・・・パーシヴァル様や・・・その・・・ディーン様のグループの馬車に・・・」
「まぁ、貴女!ディーン様はアリアナ様の婚約者ですのよ!。それなのに・・・」
ミリアが少し呆れたように言うと、アリアナは慌てて、
「違うんですっ!他の馬車には・・・女子のグループには入れて貰えなくて・・・。パーシヴァル様が見かねて男子生徒だけのグループに入れてくださったんです。私・・・1組の女生徒の方達に嫌われているみたいで・・・」
恥ずかしそうに俯き、段々声が小さくなる。
「でも、それは貴女が婚約者のいるディーン様や、第二皇子であるパーシヴァル様に馴れ馴れしくしているからだと噂がたっていますけど・・・?」
レティシアが眉間にしわを寄せる。続けてミリアも、
「そうそう!平民出身なのに魔力が強い事を鼻にかけて、他の女生徒を馬鹿にしてるとも伺いましたわ!」
「そ、そんな!。私、そんな事してません」
リリーの目からとうとう涙が一筋零れ落ちた。
(ふーむ、そうか・・・。そういう噂が立っていたから、ミリアもレティシアもリリーに冷たかったわけだ)
だって私の婚約者に色目使ってるって噂なんだもんね。二人とも私に気を使ってくれてたんだ。
私はミリアとレティシアが単にリリーに意地悪なんじゃないと分かってうれしかった。
(それにしても・・・さ)
私はちらりとリリーを見た。
彼女は口元を抑え、一生懸命こらえながらも涙が頬を伝っている。
その横顔・・・。
(まつ毛長いなぁ~・・・)
思わず「ほう」っと溜息が出る。
(さっすがヒロイン!!。泣いてる姿も絵になる~!)
ゲームのヒロイン大好きな私は、小さくガッツポーズする。だけど、いやいや見惚れてる場合じゃない!
設定とは言え、そういう状況はさすがにリリーが可哀そうすぎる。きっと今日のピクニックだって、居場所が無いんだ。
(う~ん、なるべくリリーには関わらない方針だったんだけど・・・。ふん、これは腹をくくるかっ!)
私がそう聞くと、リリーは涙を拭いながら話し始めた。
「あ、あの・・・私、アリアナ様に先日のお礼を言おうと思って・・・。あれから学校では全然お会いできなかったので・・・。あの、あの時は助けて頂き、ありがとうございました」
緊張した面持ちで頭を下げる。
(律儀な子だなぁ)
そう言えば1組と3組ってなぜか校舎が離れてるのよね。お昼休みは最近ミリア達と外で食べていたし。放課後は私、すぐ寮に帰っちゃうし。
だから待ち合わせでもしないかぎり、ばったり会うのは難しいだろう。
(しかも、私はヒロインやディーンに会うのを避けているしね、はは・・・)
正直今だって、ヤバいフラグが立たないか冷や冷やしてるのだ。私は「んんっ」と一つ咳払いをして、リリーに向き直った。
「お礼を言われるような、大したことはしていませんわ。それにあの時は私も、リリーさんに助けて頂きましたもの」
「え?」
リリーは戸惑ったようにこちらを見た。
「ディーン様から庇ってくれたでしょう?」
私がそう言ってディーンの名前を出すと、ミリアとレティシアが顔を見合わせて怪訝な表情を浮かべた。
「あの、アリアナ様。ディーン様と何があったのですか?。リリーさんに庇って頂いたとは?」
私は「実は・・・」と、先日の経緯を皆に説明した。
リリーが他の女生徒にいじめられていたこと。ディーンに誤解されて詰め寄られたこと。
「リリーさんはディーン様にはっきり説明してくださいましたわ。しかも謝る様に叱って下さったのです。あの時は少し慌てましたけど・・・」
思い返すと少し笑えて来た。
(くっく・・・痛快)
ディーンの呆気に取られた顔と慌てた様子。
「そう言えばリリーさん。最近はどうですか?。他の女生徒から、嫌な目には逢ってませんか?」
私がそう言うとリリーは目を伏せた。
「はい・・・あの・・・。」
(この様子だと、まだ嫌がらせは続いているようだね)
ゲームの中ではアリアナが率先してリリーをイジメていたけれど、それに乗っかって嫌がらせをする者もいた。
名前なんて分からないけど、アリアナが現れる時にはいつも何人かの取り巻きがいたのだ。
(ビジュアル的にミリア達では無いよね。一組の生徒かな?)
あいつらはいったい誰だったんだろう?。アリアナの友達だったんだろうか?。それとも単にリリーを虐める時だけアリアナにくっついていただけ?
ゲームの説明書にはそこまで詳細には書いていない。
(でも、そうか・・・。今はアリアナが先頭に立っていないだけで、リリーは周りから孤立しているのかもしれない)
リリーは平民でこの学園に入学してきた上に、光の魔力というレアな能力を持つ。しかも学園一と言って良い程の美少女で成績だって優秀だ。おまけにイケメン揃いの攻略者達と親しいとなれば、令嬢達の妬みややっかみを買うのは必然だろう。
ゲームでも1年生の時、リリーに友達は一人も居なかった。だからこそ攻略対象との距離も縮まりやすかったのだが・・・
「リリーさん」
「は、はい!」
「リリーさんは今日、誰と一緒に馬車で来られたのでしょうか?」
私がそう聞くと、リリーは困ったように目を伏せながら小さな声で言った。
「・・・あの・・・パーシヴァル様や・・・その・・・ディーン様のグループの馬車に・・・」
「まぁ、貴女!ディーン様はアリアナ様の婚約者ですのよ!。それなのに・・・」
ミリアが少し呆れたように言うと、アリアナは慌てて、
「違うんですっ!他の馬車には・・・女子のグループには入れて貰えなくて・・・。パーシヴァル様が見かねて男子生徒だけのグループに入れてくださったんです。私・・・1組の女生徒の方達に嫌われているみたいで・・・」
恥ずかしそうに俯き、段々声が小さくなる。
「でも、それは貴女が婚約者のいるディーン様や、第二皇子であるパーシヴァル様に馴れ馴れしくしているからだと噂がたっていますけど・・・?」
レティシアが眉間にしわを寄せる。続けてミリアも、
「そうそう!平民出身なのに魔力が強い事を鼻にかけて、他の女生徒を馬鹿にしてるとも伺いましたわ!」
「そ、そんな!。私、そんな事してません」
リリーの目からとうとう涙が一筋零れ落ちた。
(ふーむ、そうか・・・。そういう噂が立っていたから、ミリアもレティシアもリリーに冷たかったわけだ)
だって私の婚約者に色目使ってるって噂なんだもんね。二人とも私に気を使ってくれてたんだ。
私はミリアとレティシアが単にリリーに意地悪なんじゃないと分かってうれしかった。
(それにしても・・・さ)
私はちらりとリリーを見た。
彼女は口元を抑え、一生懸命こらえながらも涙が頬を伝っている。
その横顔・・・。
(まつ毛長いなぁ~・・・)
思わず「ほう」っと溜息が出る。
(さっすがヒロイン!!。泣いてる姿も絵になる~!)
ゲームのヒロイン大好きな私は、小さくガッツポーズする。だけど、いやいや見惚れてる場合じゃない!
設定とは言え、そういう状況はさすがにリリーが可哀そうすぎる。きっと今日のピクニックだって、居場所が無いんだ。
(う~ん、なるべくリリーには関わらない方針だったんだけど・・・。ふん、これは腹をくくるかっ!)
27
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる