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第3章 悪役令嬢は関わりたくない
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私は今、恐ろしい程の緊張感の中、震える手を抑えるのに必死だった。
明るい日差しの午後、真夏でも涼しい避暑地の別荘、高級で重厚な家具と観葉植物が並べられたティールーム。
美味しいお茶、焼き立てのお菓子、優しい家族、大好きな女友達。
本来なら、手放しの幸福感につつまれる状況で、たった一人の男が私を恐怖に落とし入れている
(やばい、過呼吸になりそう・・・。)
私はゆっくりと息を吐く事に集中する。
「ときに、アリアナ嬢。学園生活はいかがですかな?」
(はぐっ!)
急に話しかけられ、息が止まりそうになる。私は急いでテーブルに置いてあった扇をサッと取り、
「たたた、大変楽しくやっております・・・。」
口元を隠して、引きつる顔をなんとかごまかした。
「それは、結構。」
深いバリトンの落ち着いた声、たっぷりとした茶色の髪は完璧にセットされ、口ひげもきれいに整えられている。
高身長で、スタイルも良く、理知的な目に笑みを浮かべ、上品な物腰と会話で皆を魅了する。
グスタフ・リガーレ公爵。彼は完全無欠のイケおじ公爵なのだ。ただし、
(私は知っている。この人の正体を・・・。)
グスタフは優美な動きでお茶を飲みながら、会話を続ける。
「学園には私の甥が通っているのですが、少し残念な噂も耳にするのですよ。」
「まぁ、残念な噂とは?。」
母が、興味深そうに聞き返した。
「どうも・・・、アリアナ嬢の婚約者殿が他の女性に目を奪われているなどと・・・。いやいや、これは余計な事でしたかな。」
「まぁ!。」
母が驚いた顔で、私を見る。
「アリアナ、本当なの!?。本当でしたら、許されない事ですわ。」
「お、お母様・・・。」
リリーと、グローシアが心配そうに顔を見合わせている。
「う、噂です。ただの噂ですわっ!。ディーン様に限って・・・ほほ・・そんな事は・・・。」
声がワントーン上ずってしまう。
そんな私に、グスタフはウィンクしながら、
「そうだね、噂には尾ひれも背びれも胸びれもつくものだからねぇ、はっはっは。」
(ひっ!こいつ、前に私が言ったのと同じことを・・・。)
全身に鳥肌が走る。
「では、婚約者殿とは仲良くされているのですか?。」
「ええ、それはもう!目いっぱい仲良くさせて頂いてます。」
口が曲がりそうな程の大嘘だが、ここは引く訳にはいかないのだ。
「そうですか、それは良い事ですね・・・。」
(と言いながら、目の奥で凄く残念そうにしているのが分かるのよ!。こいつ私を諦めてない!)
そう、グスタフ・リガーレはゲームの最後でアリアナが結婚する事になる人物。
ロリコンおやじ、その人なのだ!
夏休み。一緒の馬車で出発したリリー、グローシア、兄のクラーク、そして私は、半日かかって、コールリッジ領に到着した。
そして私達は本家の屋敷で一泊し、次の日、領の山側にある別荘へとやってきたのだ。
「なんて美しい場所なんでしょう!。」
リリーとグローシアは馬車を降りると、別荘の周りに広がる雄大に景色に目を輝かせた。
辺りに広い牧場が広がり、後ろには高くそびえる山々が、その頂きを雪で白く染めている。そして目の前には大きな澄んだ湖が、その山々を鏡のように映しているのだ。
「こんな、素晴らしい景色は見たことがありません。アリアナ様!ありがとうございます。こんな素敵な所へ連れてきていただけるなんて。」
「喜んでいただけたら、私も嬉しいです。」
と、余裕を見せながら答えた私だったが、正直私もこの美しい景色に心を奪われれていた。
(めっちゃ綺麗。絵葉書みたい。マジ最高なんだけど。)
なぜなら私には事故前のアリアナの記憶が無いので、リリー達同様、ここに来るのは初めてなのだ。
(こんな素敵な別荘で夏休みを過ごせるなんて、アリアナになって本当に良かった~。めっちゃ楽しみ!)
別荘とは言え、コールリッジ家の持ち物であるから、普通にお屋敷と言っていい規模だ。部屋数もたっぷりとあり、私達はそれぞれ一部屋ずつ寝室を使えた。
リリーはひたすら恐縮しており、「こんな豪華なお部屋を使っていいのでしょうか?」と、落ち着かない様子だった。
その上、使用人部屋を見てここが良いと言ったのだが、流石にそれは止めた。
(友人を使用人部屋に泊めるなんて、悪役令嬢過ぎるもんね。)
「1週間後には、ミリア達も来る予定ですし、そうしたら皆で湖のほとりでバーベキューをしましょう。」
そう言うと、リリーもグローシアも「わぁ!」と声を上げた。
父と母は、10日後には領都の屋敷に戻るので、そこからは私達だけになるのだが、敏腕の執事と使用人達が居てくれるので心配は無い。
別荘から馬車で少し走ったら買い物の出来る街や、観光地もあるので色々と楽しめそうだし。
(学園では色々と気を使って大変だったのよねぇ。おまけに誘拐までされたし・・・。ここでは嫌な事は忘れて、ゆったりして、くつろうごう。)
そんな風に思って過ごしていた夏休みの6日目の事だった
。
明日はミリア達も合流ねとリリー達と話していた時にそれは起こった。
きれいな花を眺めながら、庭で談笑していた私達だったが、急に別荘内のティールームに来るよう呼ばれたのである。
(まさか、もうミリア達が着いたのかしら?。)
一日早いけど、そうだったらうれしいな・・・なんて思いながら、部屋の扉をノックした。だが中に入ると、そこには父と母、そして見知らぬ男性が笑いながら話に花を咲かせていたのだ。
(ん?)
私達は思わぬ状況にちょっと戸惑ってしまった。
(お客様よね?。私達も一緒で良いのかしら?)
「失礼します。」
そう言って礼をすると、
「ああ、これは美しいレディ達のお出ましだ。」
男性は如才なくそう言って、立ち上がって私達の方へ歩いてきた。そして、優雅に礼をして、私の手をとり完璧なマナーでソファまでエスコートしてくれた。
(だ、誰?この人?。)
明るい日差しの午後、真夏でも涼しい避暑地の別荘、高級で重厚な家具と観葉植物が並べられたティールーム。
美味しいお茶、焼き立てのお菓子、優しい家族、大好きな女友達。
本来なら、手放しの幸福感につつまれる状況で、たった一人の男が私を恐怖に落とし入れている
(やばい、過呼吸になりそう・・・。)
私はゆっくりと息を吐く事に集中する。
「ときに、アリアナ嬢。学園生活はいかがですかな?」
(はぐっ!)
急に話しかけられ、息が止まりそうになる。私は急いでテーブルに置いてあった扇をサッと取り、
「たたた、大変楽しくやっております・・・。」
口元を隠して、引きつる顔をなんとかごまかした。
「それは、結構。」
深いバリトンの落ち着いた声、たっぷりとした茶色の髪は完璧にセットされ、口ひげもきれいに整えられている。
高身長で、スタイルも良く、理知的な目に笑みを浮かべ、上品な物腰と会話で皆を魅了する。
グスタフ・リガーレ公爵。彼は完全無欠のイケおじ公爵なのだ。ただし、
(私は知っている。この人の正体を・・・。)
グスタフは優美な動きでお茶を飲みながら、会話を続ける。
「学園には私の甥が通っているのですが、少し残念な噂も耳にするのですよ。」
「まぁ、残念な噂とは?。」
母が、興味深そうに聞き返した。
「どうも・・・、アリアナ嬢の婚約者殿が他の女性に目を奪われているなどと・・・。いやいや、これは余計な事でしたかな。」
「まぁ!。」
母が驚いた顔で、私を見る。
「アリアナ、本当なの!?。本当でしたら、許されない事ですわ。」
「お、お母様・・・。」
リリーと、グローシアが心配そうに顔を見合わせている。
「う、噂です。ただの噂ですわっ!。ディーン様に限って・・・ほほ・・そんな事は・・・。」
声がワントーン上ずってしまう。
そんな私に、グスタフはウィンクしながら、
「そうだね、噂には尾ひれも背びれも胸びれもつくものだからねぇ、はっはっは。」
(ひっ!こいつ、前に私が言ったのと同じことを・・・。)
全身に鳥肌が走る。
「では、婚約者殿とは仲良くされているのですか?。」
「ええ、それはもう!目いっぱい仲良くさせて頂いてます。」
口が曲がりそうな程の大嘘だが、ここは引く訳にはいかないのだ。
「そうですか、それは良い事ですね・・・。」
(と言いながら、目の奥で凄く残念そうにしているのが分かるのよ!。こいつ私を諦めてない!)
そう、グスタフ・リガーレはゲームの最後でアリアナが結婚する事になる人物。
ロリコンおやじ、その人なのだ!
夏休み。一緒の馬車で出発したリリー、グローシア、兄のクラーク、そして私は、半日かかって、コールリッジ領に到着した。
そして私達は本家の屋敷で一泊し、次の日、領の山側にある別荘へとやってきたのだ。
「なんて美しい場所なんでしょう!。」
リリーとグローシアは馬車を降りると、別荘の周りに広がる雄大に景色に目を輝かせた。
辺りに広い牧場が広がり、後ろには高くそびえる山々が、その頂きを雪で白く染めている。そして目の前には大きな澄んだ湖が、その山々を鏡のように映しているのだ。
「こんな、素晴らしい景色は見たことがありません。アリアナ様!ありがとうございます。こんな素敵な所へ連れてきていただけるなんて。」
「喜んでいただけたら、私も嬉しいです。」
と、余裕を見せながら答えた私だったが、正直私もこの美しい景色に心を奪われれていた。
(めっちゃ綺麗。絵葉書みたい。マジ最高なんだけど。)
なぜなら私には事故前のアリアナの記憶が無いので、リリー達同様、ここに来るのは初めてなのだ。
(こんな素敵な別荘で夏休みを過ごせるなんて、アリアナになって本当に良かった~。めっちゃ楽しみ!)
別荘とは言え、コールリッジ家の持ち物であるから、普通にお屋敷と言っていい規模だ。部屋数もたっぷりとあり、私達はそれぞれ一部屋ずつ寝室を使えた。
リリーはひたすら恐縮しており、「こんな豪華なお部屋を使っていいのでしょうか?」と、落ち着かない様子だった。
その上、使用人部屋を見てここが良いと言ったのだが、流石にそれは止めた。
(友人を使用人部屋に泊めるなんて、悪役令嬢過ぎるもんね。)
「1週間後には、ミリア達も来る予定ですし、そうしたら皆で湖のほとりでバーベキューをしましょう。」
そう言うと、リリーもグローシアも「わぁ!」と声を上げた。
父と母は、10日後には領都の屋敷に戻るので、そこからは私達だけになるのだが、敏腕の執事と使用人達が居てくれるので心配は無い。
別荘から馬車で少し走ったら買い物の出来る街や、観光地もあるので色々と楽しめそうだし。
(学園では色々と気を使って大変だったのよねぇ。おまけに誘拐までされたし・・・。ここでは嫌な事は忘れて、ゆったりして、くつろうごう。)
そんな風に思って過ごしていた夏休みの6日目の事だった
。
明日はミリア達も合流ねとリリー達と話していた時にそれは起こった。
きれいな花を眺めながら、庭で談笑していた私達だったが、急に別荘内のティールームに来るよう呼ばれたのである。
(まさか、もうミリア達が着いたのかしら?。)
一日早いけど、そうだったらうれしいな・・・なんて思いながら、部屋の扉をノックした。だが中に入ると、そこには父と母、そして見知らぬ男性が笑いながら話に花を咲かせていたのだ。
(ん?)
私達は思わぬ状況にちょっと戸惑ってしまった。
(お客様よね?。私達も一緒で良いのかしら?)
「失礼します。」
そう言って礼をすると、
「ああ、これは美しいレディ達のお出ましだ。」
男性は如才なくそう言って、立ち上がって私達の方へ歩いてきた。そして、優雅に礼をして、私の手をとり完璧なマナーでソファまでエスコートしてくれた。
(だ、誰?この人?。)
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