モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい（完結）

第３章 悪役令嬢は関わりたくない

4

「グスタフ卿は、少々、年は離れているが、悪い男ではない。仕事もできるし、能力も高い。きっとアリアナを大事にしてくれると思うのだが・・・。」


すみません、お父様。良い悪いの問題では無いのです。


「実は、随分昔から、打診はされてたんだよ？。君がディーン君と婚約する前からね。」

（いや、それいつの話よ！？。私8歳ぐらいだよ！？。8歳の子供見て、婚約申し込むって、その時点でイカれてるでしょ！。）


年の差婚の珍しくない貴族だからなのか、父は少しも疑問に思ってないようだ。確かに父と母も一回り年が離れているけど・・・。

（いやいや、その頃グスタフって確かアラサーでしょ！。レベルが違うっての！。）

私は声には出せない叫びを心の中で喚き散らした。


「もう一つ正直に言うと、リガーレ家と姻戚関係になるのは、コールリッジ家にとっても益があることなんだ。ディーン君のギャロウェイ家よりもね。」

（それは・・・知ってる・・・。）


アリアナがどうしてもディーンが良いと言ったから、父も母も渋々ディーンのギャロウェイ家に婚約を打診したのだ。そして、ギャロウェイ家からしたら、コールリッジ家から言われたら・・・。

（断れなかったんだろうなぁ・・・。）

いまさらながらにディーンが不憫になる。

「もちろん、君の気持が優先だから無理強いするつもりはない。」

「ありがとうございます、お父様。」

（あ～、溺愛設定で良かったぁぁぁ！）

「どうかな？。彼の事も君の将来の伴侶として、候補に入れてあげては？。」

以前のアリアナには父はこんな事は言わない。言っても理解できないからだ。

（泣いて、暴れて、「ディーンが良いっ！」と言って終わりだろうなぁ。）

父は私が変わったことを理解して、（中身が丸ごと変わったのは知らないだろうけど）コールリッジ家の駒になる事を提案してきてる。それでいて強制しないところが父のアリアナへの愛情だ。
確かに、今の私なら父の言う事が正しいって分かる、でも・・・、

私は背筋を伸ばし、父をまっすぐ見つめた。


「このような言い方をするのは大変申し訳ないとは思うのですが・・・、はっきり言います。わたくし！、リガーレ卿は生理的に無理なのですっ！。」


「は？」


頭の良い父には珍しく、理解が出来なかったようなので、


「生理的に無理なのです！」


もう一度、はっきりと言い切ってやった。


「せ、生理的・・・？。」

「はい、もう絶対無理なのです。どうしても、どうやっても、どう考えても、ありえない程、とにかくぜ～～～～ったい、無理なのです！。」

（あ・・・、息も吸わずに行ったから、酸欠になりそう。）

頭がクラクラしつつ、息をぜーぜーさせてる私を見て、父はよほどの事と思ったのだろう、少し呆然としつつ、「わかったよ・・・。」と言い、それ以上は無理強いしなかった。


父は場を取り直すように「んんっ」と咳払いし、


「あと、もう一つ。噂を聞いているよ。ウォーレン家の子息と仲が良いらしいね・・・？。」

「クリフ様ですか？。クリフ様はライバルです。」

「・・・？。ラ、ライバル？」


今度は何故か目を丸くしている。


「はい、目標を同じくするライバルです。なかなかの強敵なので大変ですが、戦うのを楽しみにしているのです。」
「そ、そうか・・・。」


父は何故か頭を抱えてしまった。


「お父様？。」

（変な事言ったかしら？）


だが父はすぐ顔を上げ


「くっくっく・・・、分かったよアリアナ。リガーレ卿は生理的に合わない。ウォーレン子息はライバル・・・と。私の娘は可愛い上にユニークだ。」


父は私にウィンクし、


「さぁ、もう休みなさい。明日はお友達が沢山来るんだろう？」

「あっ、はい。」

「君に友人が沢山出来て、本当にうれしいと思っているんだよ・・・。アリアナ。」

「はい。」

「本当に成長したね。」


父はそう言って、私の頭にふわりと大きな手を乗せた。

私はなんだか、心がじわじわと温かくなった気がした。そして少し恥ずかしかった。多分、これはアリアナと私、二人の感情なのだ。