モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい（完結）

第３章 悪役令嬢は関わりたくない

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有難い事にグスタフ・リガーレ公爵は、その日のうちに彼の領へ帰った。旅行の途中、たまたまコールリッジの別荘が近かったので、立ち寄っただけらしい。

（まさか、私がここに居る事知ったからじゃ無いでしょうね・・・？）

私はブルっと身震いをした。

（とにかく、グスタフにはなるべく関わらないようにしないと・・・。）

私はベッドサイドに置いてある鏡を見た。

（奴が興味を無くす程、私がグラマラスに成長すれば問題ないんだけどな・・・。）

そう思いながら、私はガクッと項垂れた。

ゲームの通りであれば、それは絶望的なのである・・・。。



夜、両親は夕食を部屋に運ばせようとしたが、

「もう、大丈夫です。元気になりましたから。」

そう押し切って、私は皆と一緒に食事をした。


（リリー達も居るんだし、一人でご飯だなんて寂し過ぎるもんね。）


二人はそんな私を見て、心から喜んでくれた。


「アリアナ様が元気になられて良かったです。」

「本当です！アリアナ様が一緒でなければ、わたくしも食事が咽を通りません。」

「ありがとう、リリー、グローシア。」


グスタフさえ居なければ、私の体調は常に絶好調だ。



そして夕食後、何故か私は父に書斎に呼ばれた。

私はなんだか嫌な予感がしていた。

昼間のグスタフとの会話・・・。ディーンが他の女性（実際にはリリーの事であるが）に心を寄せているという噂の事。


（あの場ではごまかしたけど、お父様が納得してるとは思えないのよね・・・。）


ディーンとは最近、それ程関係が悪い訳ではない。以前は弱みを握ろうなんて考えていたけど、出来れば双方、波風立てず、婚約解消へと持ち込みたいのだ。



そして案の定、書斎に入って開口一番、父は私にこう尋ねた。


「学園での噂は私も聞いているんだよ。ディーン君が他の女生徒に意識が向いてるというのは、本当かね？」

「いえ、あのそれは・・・。」


私は返答に困った。

（本当なんて言ったら、下手すりゃディーン失脚するんじゃ・・・。しかも相手がリリーだなんて。）

シチュエイションがコアすぎる。


「どうなんだい。？」


ん？という風に、父は返事をすながす。

顔には笑みを浮かべているし、言い方だってやさしい。でも私はこの父が、優しいだけの人じゃない事を知っている。


（たぬきなのよ・・・。この物腰で、相手を油断させて、自分の思った通りに周りを動かしちゃうんだから。）


もしかして、ディーンの好きな相手がリリーだって事も、既に知ってるんじゃないの？


（これは、下手に返事を間違ったらえらい事になる・・・。）


「いえ、そういう事はありませんわ。ディーン様は、他の生徒に虐められていた人を庇っただけなのです。それが悪意のある噂話に繋がったと言うだけですわ。」

うふふっと、私はなんでもない事のように笑ってみせる。


「ほう・・・、じゃあ君がリリー嬢と友人になったのも、そういう経緯があったからかな？。」

（やっぱり知ってるんじゃない！この狸親父。）

「そうなんです。私もディーン様と一緒にリリーを助けたりなんかして・・・。」

「はははは、なるほどね。私の娘は可愛らしい上に、とても優しいんだね。」

「まぁ、お父様ったら。うふふふふ。」


あはは、うふふと、狸と狐の化かし合いのような会話が続く。


「君がそう言うのなら、この件は良いとして・・・。どうなのかな？最近の君は、以前程ディーン君に夢中と言う訳では無さそうなのだが・・・。」


（ぐっ、今度はそっちから来たか！）

難しい・・・。これは難しいぞ。正直ディーンとは円満婚約解消を狙ってるから、父の読みはある意味正しい。でも、どうして父がこの話を持ち出してきたのか・・・、それが分からないまま、安易な答えは言えない。


「大人になったのですわ。成長したのです。いつまでも子供の様にディーン様を振り回してはいけませんから。」

「本当に、そうなのかね？」

「え、ええ、本当です・・・！。お父様、どうしてその様な事を聞くのです？何か他に理由が・・・？」


これ以上追求されるのも困るので、今度はこっちから切り込んでみた。


「いや、君という素晴らしい婚約者が居ながら、他の女性を追いかけまわすようなら、処刑ものだからね。」


さらっと恐ろしい事を言う。


「それに、君ならディーン君じゃなくても、いくらでも素晴らしい男性がいると思うから。例えば・・・。」

（例えば・・・？）


私は父の言葉の続きを予想して、ゴクリとつばを飲んだ。


「グスタフ・リガーレ卿とかね。」


（きたーーーっ！やっぱりだー！。）


想像通りの返事が来て、私は心の中で頭を抱えた。