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第3章 悪役令嬢は関わりたくない
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街への買い物に、ディーンも誘ってみたが、「いや、部屋で読書をしたいから。」と断られた。私のグスタフ対策に突き合わせて、遠乗りにも行けなかったのだ。せめて、何か奢ろうと思ったのだけど・・・
(女子ばっかの中に一人は、やっぱキツイいか・・・)
そう思って、私はディーンを別荘に残し、待ち合わせのレストランへ行く為、一人馬車に乗った。
「アリアナ様!」
私の姿を見つけ、リリーが満面の笑みで駆け寄ってきた。
(ああ~、リリー可愛い~っ!ヒロイン最高!)
私の口元がだらしなく緩む。
「アリアナ様、お待ちしてましたわ!」
「やっぱりアリアナ様が居ないと。」
ミリア達も、こちらに集まってきた。
「皆さん、お待たせしました。さぁ、お食事に参りましょう!」
(ああもう、お腹空いた!。グスタフの事も、ちょっとスッキリしたし、今日は思いっきり食べるぞぉ。)
昨日の夕食も、今朝の朝食も、奴と一緒だったから、食欲が出なかったのだ。
レストランのランチは評判通り、とても美味しかった。ジョーは大盛にした上、パンを2回お代わりしていた。
食後はテラス席に移動し、お茶とデザートを楽しむことにした。ここのケーキはとても美味しいらしい。
「色々あって迷ってしまうわ。」
「私は、このリンゴのタルトと、チョコのケーキと、シュークリームと・・・」
「ちょっとジョー!3つも食べる気?」
「あら、5つ食べようと思ってるんだけど。」
ミリアとジョーの漫談を聞きながら、私達はおのおの注文を終えた。
お茶もケーキもテーブルに揃い、落ち着いた頃、私はディーンの事を思い出していた。
(う~ん、手伝ってもらったし、色々迷惑かけたしなぁ・・・。ここは思い切って、一肌脱ぐか!。)
私はコホンと一つ、咳払いをし、飲んでいたティーカップをソーサーに置いた。
「あの、リリー・・・。ちょっと聞きたい事があるのですけど・・・。」
「なんでしょうか?」
「気を悪くしないで下さいね。あの、あなたって、もしかしてディーン様がお好きなのではないですか?」
周りの皆が、はっと息を飲む音が聞こえた。それはそうだろう。きっと皆も気になりつつ、聞けなかった事なのだ。なにせ、一時期は噂になっていた二人なのだから・・・。今は普通に友人として接している様に見えるけど、本当の気持ちはどうなのだろう?
でも、聞かれた当人であるリリーは、落ち着いたまま、笑みを浮かべていた。
「いいえ、私はディーン様の事は、なんとも思っていません。良い友人でいられれば、嬉しいとは思いますが。」
「あ、あの、わたくしの事でしたら、気にしないで良いのですよ。一応婚約者と言う事になっていますが、口約束みたいなものですし、その・・・。」
「アリアナ様。私の好きな方はディーン様ではありません。」
真っすぐな目で私を見るリリーの顔は、嘘を言っている様には見えなかった。
「そう・・・なのですか・・・?」
「ええ。アリアナ様がそんな事仰ったら、ディーン様ががっかりなさいますよ。」
(ん?・・・どういう事だ?)
すると、ジョーが話に入ってきた。
「えー!?。じゃあさ、リリーの好きな人って、クリフ?」
「いいえ、クリフ様では無いです。」
リリーは笑いながら、「私もあまり、横には立ちたくないです。」と言った。
(可哀そうな、クリフよ・・・)
「で、で、で、では、もしかして、クク、クラーク様・・・?」
グローシアが、青ざめながら聞いたが、リリーは首を横に振った。
「じゃ、パーシヴァル様?」
リリーは、人差し指を唇に当てて、
「内緒です・・・。」
そう笑って、頬を薄くピンクに染めた。
(か、可愛らし過ぎる・・・。)
私はリリーのその愛らしいしぐさにキュンとし、悶えた。
「もう!リリーってば、秘密主義なんだから!」
皆はそう、はやし立てたが、リリーは笑ったままだった。
夕方まで買い物して、私達は屋敷に戻った。
ジョーは大量のお菓子を買い、レティシアは何冊もスケッチブックを買いこんだ。家から持ってきたスケッチブックは、もう全部、絵で埋まってしまったそうだ・・・。
「色鉛筆も買いましたし、これでカラーにできますわ!」
(ちゃんと寝るんだよ、レティ・・・。)
私の心配をよそに、レティは帰るなり、意気揚々と新しいスケッチブックを開いている。
男子達とも合流して、今日は子供達だけの気軽な夕食となった。
私は今日の事を思い出しながら、リリーとディーンを盗み見た。
(そうか・・・ディーンは失恋か・・・。)
思い返せば、私はディーンとヒロインのイベントを、ことごとく邪魔してしまった。
(いや・・・、途中まではさ、ざまあ見って思ってたけど、今となっては罪悪感感じるわね・・・。)
私は今日のお礼にと、ディーンにラピスラズリの付いた、小さなチャームを買っていた。彼の瞳の色に似ていると思ったからだ。しかし、
(なんだか、渡しづらいな・・・。)
そう思って、チャームはバッグに入れたままだった。
(それに、ディーンとは円満婚約解消したいと思っていたけど、今はマズいよね・・・。)
今、解消すると、グスタフの勢いが再燃するかもしれない。私は奴の流し目を思い出してゾッとした。
(ディーンには申し訳ないけど、お願いして、しばらく婚約者でいて貰うしか・・・、せめてディーンに、リリー以外の他に好きな人が出来たりするまで・・・。あっ、それに!)
今は違うかもしれないが、リリーだってこれからディーンを好きになるかもしれない!。そうしたら、二人とも幸せになれる。そう思ったが・・・。
(でも、そうなると、やっぱり私と婚約してるってのが、色々邪魔になるわよねぇ・・・。)
リリーの性格からして、友達の婚約者に手を出すとは思えないのだ。
なんだか色々八方ふさがりな気分で、今日のメインの鯛のパイ包みにナイフを入れていると、ふと視線を感じた。
(ん?)
顔を上げると、パーシヴァルがこっちを見ていた。
なんだ?と思う間もなく、彼はサッと視線を逸らす。そして、何事も無かったかのように、食事を続けていた。
(なんか・・・、前もあったような。)
第二皇子とは、この別荘生活でも、程よく距離を保っている。
(もう!面倒だから関わって来ないでよ。)
そう思って、私はメイン料理を口に運んだ。
(女子ばっかの中に一人は、やっぱキツイいか・・・)
そう思って、私はディーンを別荘に残し、待ち合わせのレストランへ行く為、一人馬車に乗った。
「アリアナ様!」
私の姿を見つけ、リリーが満面の笑みで駆け寄ってきた。
(ああ~、リリー可愛い~っ!ヒロイン最高!)
私の口元がだらしなく緩む。
「アリアナ様、お待ちしてましたわ!」
「やっぱりアリアナ様が居ないと。」
ミリア達も、こちらに集まってきた。
「皆さん、お待たせしました。さぁ、お食事に参りましょう!」
(ああもう、お腹空いた!。グスタフの事も、ちょっとスッキリしたし、今日は思いっきり食べるぞぉ。)
昨日の夕食も、今朝の朝食も、奴と一緒だったから、食欲が出なかったのだ。
レストランのランチは評判通り、とても美味しかった。ジョーは大盛にした上、パンを2回お代わりしていた。
食後はテラス席に移動し、お茶とデザートを楽しむことにした。ここのケーキはとても美味しいらしい。
「色々あって迷ってしまうわ。」
「私は、このリンゴのタルトと、チョコのケーキと、シュークリームと・・・」
「ちょっとジョー!3つも食べる気?」
「あら、5つ食べようと思ってるんだけど。」
ミリアとジョーの漫談を聞きながら、私達はおのおの注文を終えた。
お茶もケーキもテーブルに揃い、落ち着いた頃、私はディーンの事を思い出していた。
(う~ん、手伝ってもらったし、色々迷惑かけたしなぁ・・・。ここは思い切って、一肌脱ぐか!。)
私はコホンと一つ、咳払いをし、飲んでいたティーカップをソーサーに置いた。
「あの、リリー・・・。ちょっと聞きたい事があるのですけど・・・。」
「なんでしょうか?」
「気を悪くしないで下さいね。あの、あなたって、もしかしてディーン様がお好きなのではないですか?」
周りの皆が、はっと息を飲む音が聞こえた。それはそうだろう。きっと皆も気になりつつ、聞けなかった事なのだ。なにせ、一時期は噂になっていた二人なのだから・・・。今は普通に友人として接している様に見えるけど、本当の気持ちはどうなのだろう?
でも、聞かれた当人であるリリーは、落ち着いたまま、笑みを浮かべていた。
「いいえ、私はディーン様の事は、なんとも思っていません。良い友人でいられれば、嬉しいとは思いますが。」
「あ、あの、わたくしの事でしたら、気にしないで良いのですよ。一応婚約者と言う事になっていますが、口約束みたいなものですし、その・・・。」
「アリアナ様。私の好きな方はディーン様ではありません。」
真っすぐな目で私を見るリリーの顔は、嘘を言っている様には見えなかった。
「そう・・・なのですか・・・?」
「ええ。アリアナ様がそんな事仰ったら、ディーン様ががっかりなさいますよ。」
(ん?・・・どういう事だ?)
すると、ジョーが話に入ってきた。
「えー!?。じゃあさ、リリーの好きな人って、クリフ?」
「いいえ、クリフ様では無いです。」
リリーは笑いながら、「私もあまり、横には立ちたくないです。」と言った。
(可哀そうな、クリフよ・・・)
「で、で、で、では、もしかして、クク、クラーク様・・・?」
グローシアが、青ざめながら聞いたが、リリーは首を横に振った。
「じゃ、パーシヴァル様?」
リリーは、人差し指を唇に当てて、
「内緒です・・・。」
そう笑って、頬を薄くピンクに染めた。
(か、可愛らし過ぎる・・・。)
私はリリーのその愛らしいしぐさにキュンとし、悶えた。
「もう!リリーってば、秘密主義なんだから!」
皆はそう、はやし立てたが、リリーは笑ったままだった。
夕方まで買い物して、私達は屋敷に戻った。
ジョーは大量のお菓子を買い、レティシアは何冊もスケッチブックを買いこんだ。家から持ってきたスケッチブックは、もう全部、絵で埋まってしまったそうだ・・・。
「色鉛筆も買いましたし、これでカラーにできますわ!」
(ちゃんと寝るんだよ、レティ・・・。)
私の心配をよそに、レティは帰るなり、意気揚々と新しいスケッチブックを開いている。
男子達とも合流して、今日は子供達だけの気軽な夕食となった。
私は今日の事を思い出しながら、リリーとディーンを盗み見た。
(そうか・・・ディーンは失恋か・・・。)
思い返せば、私はディーンとヒロインのイベントを、ことごとく邪魔してしまった。
(いや・・・、途中まではさ、ざまあ見って思ってたけど、今となっては罪悪感感じるわね・・・。)
私は今日のお礼にと、ディーンにラピスラズリの付いた、小さなチャームを買っていた。彼の瞳の色に似ていると思ったからだ。しかし、
(なんだか、渡しづらいな・・・。)
そう思って、チャームはバッグに入れたままだった。
(それに、ディーンとは円満婚約解消したいと思っていたけど、今はマズいよね・・・。)
今、解消すると、グスタフの勢いが再燃するかもしれない。私は奴の流し目を思い出してゾッとした。
(ディーンには申し訳ないけど、お願いして、しばらく婚約者でいて貰うしか・・・、せめてディーンに、リリー以外の他に好きな人が出来たりするまで・・・。あっ、それに!)
今は違うかもしれないが、リリーだってこれからディーンを好きになるかもしれない!。そうしたら、二人とも幸せになれる。そう思ったが・・・。
(でも、そうなると、やっぱり私と婚約してるってのが、色々邪魔になるわよねぇ・・・。)
リリーの性格からして、友達の婚約者に手を出すとは思えないのだ。
なんだか色々八方ふさがりな気分で、今日のメインの鯛のパイ包みにナイフを入れていると、ふと視線を感じた。
(ん?)
顔を上げると、パーシヴァルがこっちを見ていた。
なんだ?と思う間もなく、彼はサッと視線を逸らす。そして、何事も無かったかのように、食事を続けていた。
(なんか・・・、前もあったような。)
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そう思って、私はメイン料理を口に運んだ。
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