モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第4章 悪役令嬢は目を付けられたくない

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エライシャ先生は厳しい顔で、パンパンと2回手を打ち鳴らすと、

「ミリアさん、落ち着きなさい。今は今年度を締めくくる、大事なパーティの最中です。争い事は許しません。・・・エルドラさん、話を聞くと、どうやら、あなた達の方に非があるようです。罰として、今からパーティの参加を禁じます。今日は寮に戻って反省していなさい。日を改めてあなた達からは話を聞く事にします。」

「そんな!」

「どうして!?」

エライシャ先生の言葉に、女生徒達から悲鳴の様な声が上がった。このダンスパーティは皆が一年間楽しみにしているものだ。まだ始まって間もない時間に、帰れと言われた事にショックを受けたのだろう。再び泣き出してしまった女子もいた。すると、あの美人先生がすっと前に出た。

「お黙りなさい。」

静かながらも威厳が込もった声に、女生徒達は静かになった。

「エライシャ先生の仰る通りになさい。」

すると、先ほどまで騒いでいた女生徒達は、急に素直にその言葉に従うと、何も言わずに礼をして、パーティ会場から出て行ってしまった。

(何・・・?、この不自然な感じ・・・。)

すかさず美人先生に目をやると、なんと彼女も私の方を見ていた。視線が交わる。彼女は私に向かって、真っ赤な口紅が塗られた唇を弧の様にして笑った。背中にゾッと悪寒が走る。

(この先生・・・。)

でもそれは一瞬で、彼女はエライシャ先生の方へ歩いて行くと、優雅に頭を下げた。

「エライシャ先生。わたくしのクラスの生徒が失礼を致しました。」

「モーガン先生のせいではありませんよ。クラスの生徒の全てを把握するのは、難しい事です。」

エライシャ先生は頭を押さえて溜息をつき、そして私達の方へ目を向けた。

「アリアナさん。」

「は、はい。」

「良い友人を持ちましたね。」

普段めったに笑わないエライシャ先生が、笑みを浮かべていた。

「パーティはまだまだこれからですからね。皆さんとお楽しみになさい。」

「はい、ありがとうございます。」

そうして先生方は去って行き、私達を取り囲んで成り行きを見物していた人垣も、ゆるゆるとほどけて行った。

「アリアナ様、大変でしたね。すみません、私は何も言えなくて・・・。」

レティシアが涙を浮かべて、抱きついてきた。

「いえいえ、ダンスを中断して、こちらに来てくれたんですよね?。ありがとうございます。」

「レティはあの子達をちゃんと睨みつけてたわよ。私も、一発殴ってやりたかったなぁ。」

物騒な事を言いながら、ジョーがこちらにやってきた。何故かグローシアを拘束する様に、腕を回している。

「ど、どうしたの?」

「いえね、グローシアがちょっと危なかったので、引き留めてました。」

「殺す・・・あいつら・・・。アリアナ様を傷つける者は、死をもって制裁する・・・。」

グローシアの目が、完全にすわっている。これはヤバい!

「グローシア!。あの、私は大丈夫ですから。えーっと、その、お兄様とは踊れたのですか?!」

クラークの名前を聞いた途端、正気に戻った様にグローシアの目に光が戻った。そして頬を赤く染めて、

「・・・まだです・・・。騒ぎの中で、ア、アリアナ様の声が聞こえたので・・・。」

「心配して、駆けつけてくれたのね。ありがとう。貴方は、本当に私の騎士だわ。」

私はグローシアの手を両手で握った。グローシアは、ぱぁっと明るい表情になると、私に向かって、騎士の礼をした。

「皆もありがとうございます。庇って頂いて・・・。おかげで助かりました。」

「ほんとに、何だったんでしょうね?あの方達。アリアナ様にあんな言いがかりをつけるなんて。しかも、こんなパーティの最中に。・・・ちょっと異常な感じでしたわ。」

ミリアが険しい口調で顔をしかめた。リリーも、

「本当に。・・・何だか少し、様子がおかしかった気がします。」

そう言って、眉を潜める。聡明な二人は何かを察したのだろう。

「ちょっと操られてる感はあったわよね。ねぇ、でもせっかくのパーティだから、楽しみましょうよ!。私、早くご馳走食べて、ケイシー先輩と踊るんだ。」

ジョーはズバッと核心を突くような事をあっけらかんと言う。

(さすが、ジョーは野生の感というか、なんというのか・・・。それにしてもケイシー様と踊るよりも、ご馳走食べる方が優先なのね・・・。)

ミリアとレティシアも「では、私達ももう少しダンスをしてきます。」と待機場所に向かって行った。ホールは軽快な曲が流れ、沢山の男女が踊っている。皆、それぞれ楽しそうだ。私はそれを目で追いながら、

「ディーン様、私達もさっさと踊っちゃいますか?」

そう言うと、ディーンの顔の表情が固くなった気がしたが、気のせいか?

「・・・さっさと・・・?」

「そうです。でないと他の方が、何時までたってもディーン様と踊れいないでしょう?」

「どうして、私が他の女性と踊らなくてはいけないんだ?」

「えっ?だって、先程から、沢山誘われていたじゃないですか?!」

私がそう言うと、ディーンは「はぁ~。」とため息をついた。

あれ?私、何かマズい事言った?。その様子を見ていたリリーが、くすくす笑っている。

「ふふ・・・ディーン様、色々とたいへんですね。」

(ん?どういう事?)

「私はジョーと一緒に飲食スペースに行きますね。グローシアは、クラーク様と踊るのでしょう?。早く行かないと。」

リリーの言葉に、グローシアが急に慌てだす。

「あっ・・・!。ではアリアナ様、しばし失礼を。有事の際には参ります!」

そう言って、あっという間に消えてしまった。

「アリアナ様はディーン様とごゆっくりなさってください。」

「えっ?」

リリーは悪戯っぽく笑みを浮かべると、手を振って人混みの中に居なくなった。

(ゆっくりって・・・。)

私が思わずディーンを見上げると、ディーンは黙ったまま私に手を差し出した。

(あっ、そうかダンスだ。)

私がディーンの手に自分の手を重ねると、ディーンは私をエスコートし、ダンスホールの空いている場所に移動した。
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