108 / 284
第5章 悪役令嬢は絡まれたくない
9
しおりを挟む
「クリフ様はあの時いらっしゃらなかったので、気づかなかったと思いますが、エルドラ達はモーガン先生と、何かしら繋がりがあります。」
「モーガン?。今3年生の担任をしている女性の先生の?」
クリフはピクリと眉を動かした。
「ご存知なのですか!?」
「元侯爵家の方だよ、確か。ただ・・・、父親のモーガン侯爵が犯罪を犯して爵位を剥奪されてから、しばらく行方不明だったんだ。今は、デンゼル公爵の第二夫人になってる。」
「えっ、そうなのですか!?。よくご存じですね。」
「俺の母・・・祖母の実家の遠縁に当たるんだ。だから、この学園の教職に就く時、父が手伝ったんだ。旧姓を名乗っているのは、第二夫人である事を、あまり公にしたくないからみたいだよ。」
(第二夫人か・・・。有力貴族の中には第二、第三と奥さんを持つ人がいるって聞くけど、要はお妾さんの事だよね。家の中が色々揉めそうだなぁ。うちなんかは、両親ラブラブで、そんな影も無いからありがたいけど・・・。
)
「だけど、そのモーガン先生が、どうしてエルドラ嬢と関係があると?。」
クリフの問いに、私は考えをまとめながらゆっくりと答えた。
「まず・・・、エルドラさんは前年度、モーガン先生のクラスだったらしいのです。でも、それよりも、エルドラさん達の態度と言うか、雰囲気というか・・・。」
(う~ん、説明が難しいな。)
「結局、あの時は先生方が来てくれて、騒ぎが治まったのです。その場に居た先生が、エライシャ先生、マリオット先生、そしてモーガン先生。エルドラさん達はエライシャ先生に注意されても、まだ何か言っていたのですが、モーガン先生の一言で大人しくなりました。でもその時の彼女達がまるで・・・。」
「まるで、何?」
「操られてると言うか・・・あまりにも急に素直になって、催眠術にでもかかったような感じだったのです。」
クリフの目がスッと細められた。
「そういう魔術ってありましたよね?。」
「ああ、でもそれは、日常での私用は禁じられている筈だ・・・。」
人間の精神に作用する魔術は、犯罪に利用されると、とても危険だ。過去には国を揺るがす様な、大きな事件もあったらしい。
相手と目を合わすだけで好意を持たせたり、言う事をきかせたり、挙句の果てには人形の様に操ったり・・・、そういう魔力を持つ者は少ないらしいが、一定数はいる。だから見つかった場合は、強制的にそれを封じる魔法具を付けられるのだ。
(そういえば、私がイーサンに眠らされたのも、精神魔術の一つだよね・・・怖っ。あいつ、そっちの魔力も持ってるんだ。)
どこまで能力高いんだよ、あの隠しキャラは、と思いながらクリフを見ると、彼ははすっかり考え込んでしまっている。さすがに、学園の先生が精神魔術を生徒に使っていると言うのは、突飛すぎるだろうか・・・?
「すみません。ちょっと、考えが飛躍しすぎたかもしれませんね。」
私は笑いながらそう言った。でもクリフは真剣な顔を崩そうとしない。
「いや・・・俺も少し気になるから、モーガン先生について、もっと詳しく父に聞いてみるよ。」
「えっ!良いのですか?」
「ああ、それと、マーリン嬢がモーガン先生と関係しているかも、調べた方が良くないか?。」
「そうなんですが・・・。そう言うのって、ミリアが得意なのですが、今はエメライン王女のお世話で忙しそうですから・・・。」
私じゃ目立ちすぎて、こっそり調べると言う風にはいかない。どうしようかな・・・と思っていると、中庭の向こうから誰かが猛スピードで、走って来るのが見えた。しかも髪が長いので女生徒だ。
(すっごいスピード。男子より早いんじゃない?。それにしてもスカートがひるがえり過ぎだよ。・・・ん?)
彼女は真っすぐこちらに向かっていて、何かを叫んでいる。それに・・・あの髪の色って・・・。
「ア、アリアナ様ぁ~~~っ!」
「グ、グローシア!」
グローシアが土煙をあげる勢いで、こちらに走ってきていたのだ。
「ちょ、ちょっとグローシア!スカートで、そんなに走ったら・・・!」
私は、思わず椅子から立ち上がっていた。走ってきたグローシアは私の前で急停止すると、私の前にひざまづいた。
「申し訳ございません!。アリアナ様!。このグローシア、アリアナ様の有事にはせ参じる事が出来きなかった事、大変申し訳なく・・・。」
「そんな事は良いから、立ち上がって!。スカートが汚れるから。」
それに、こんな生徒が大勢いるカフェで、目立ち過ぎでしょ!これじゃ。
「場所を移動しましょう。ノエル様はいらっしゃらないのですか?。」
グローシアはスカートをはたきながら立ち上がった。
「もうすぐ来ます。わたくしは一刻も早く、アリアナ様にお会いしたかったので。」
「そ、それはありがとう・・・。」
クリフはクスクスと笑いながら椅子から立ち上がった。
「俺は、さっきの件について、今から父に手紙を書くよ。ノエルが来たら、そう言っておいて。」
「あ、はい。では、また明日教室で。」
「ああ。」
クリフはそう言って、中庭の芝生を寮の方へ向かって歩いて行った。周りにいる女生徒達が皆、頬を染めながら、ずっとクリフの方を目で追っているのが見えた。
(さすがだよね・・・。ああいう人とさっきから二人きりで喋ってたと思うと、ちょっと不思議な気分だよ。)
「モーガン?。今3年生の担任をしている女性の先生の?」
クリフはピクリと眉を動かした。
「ご存知なのですか!?」
「元侯爵家の方だよ、確か。ただ・・・、父親のモーガン侯爵が犯罪を犯して爵位を剥奪されてから、しばらく行方不明だったんだ。今は、デンゼル公爵の第二夫人になってる。」
「えっ、そうなのですか!?。よくご存じですね。」
「俺の母・・・祖母の実家の遠縁に当たるんだ。だから、この学園の教職に就く時、父が手伝ったんだ。旧姓を名乗っているのは、第二夫人である事を、あまり公にしたくないからみたいだよ。」
(第二夫人か・・・。有力貴族の中には第二、第三と奥さんを持つ人がいるって聞くけど、要はお妾さんの事だよね。家の中が色々揉めそうだなぁ。うちなんかは、両親ラブラブで、そんな影も無いからありがたいけど・・・。
)
「だけど、そのモーガン先生が、どうしてエルドラ嬢と関係があると?。」
クリフの問いに、私は考えをまとめながらゆっくりと答えた。
「まず・・・、エルドラさんは前年度、モーガン先生のクラスだったらしいのです。でも、それよりも、エルドラさん達の態度と言うか、雰囲気というか・・・。」
(う~ん、説明が難しいな。)
「結局、あの時は先生方が来てくれて、騒ぎが治まったのです。その場に居た先生が、エライシャ先生、マリオット先生、そしてモーガン先生。エルドラさん達はエライシャ先生に注意されても、まだ何か言っていたのですが、モーガン先生の一言で大人しくなりました。でもその時の彼女達がまるで・・・。」
「まるで、何?」
「操られてると言うか・・・あまりにも急に素直になって、催眠術にでもかかったような感じだったのです。」
クリフの目がスッと細められた。
「そういう魔術ってありましたよね?。」
「ああ、でもそれは、日常での私用は禁じられている筈だ・・・。」
人間の精神に作用する魔術は、犯罪に利用されると、とても危険だ。過去には国を揺るがす様な、大きな事件もあったらしい。
相手と目を合わすだけで好意を持たせたり、言う事をきかせたり、挙句の果てには人形の様に操ったり・・・、そういう魔力を持つ者は少ないらしいが、一定数はいる。だから見つかった場合は、強制的にそれを封じる魔法具を付けられるのだ。
(そういえば、私がイーサンに眠らされたのも、精神魔術の一つだよね・・・怖っ。あいつ、そっちの魔力も持ってるんだ。)
どこまで能力高いんだよ、あの隠しキャラは、と思いながらクリフを見ると、彼ははすっかり考え込んでしまっている。さすがに、学園の先生が精神魔術を生徒に使っていると言うのは、突飛すぎるだろうか・・・?
「すみません。ちょっと、考えが飛躍しすぎたかもしれませんね。」
私は笑いながらそう言った。でもクリフは真剣な顔を崩そうとしない。
「いや・・・俺も少し気になるから、モーガン先生について、もっと詳しく父に聞いてみるよ。」
「えっ!良いのですか?」
「ああ、それと、マーリン嬢がモーガン先生と関係しているかも、調べた方が良くないか?。」
「そうなんですが・・・。そう言うのって、ミリアが得意なのですが、今はエメライン王女のお世話で忙しそうですから・・・。」
私じゃ目立ちすぎて、こっそり調べると言う風にはいかない。どうしようかな・・・と思っていると、中庭の向こうから誰かが猛スピードで、走って来るのが見えた。しかも髪が長いので女生徒だ。
(すっごいスピード。男子より早いんじゃない?。それにしてもスカートがひるがえり過ぎだよ。・・・ん?)
彼女は真っすぐこちらに向かっていて、何かを叫んでいる。それに・・・あの髪の色って・・・。
「ア、アリアナ様ぁ~~~っ!」
「グ、グローシア!」
グローシアが土煙をあげる勢いで、こちらに走ってきていたのだ。
「ちょ、ちょっとグローシア!スカートで、そんなに走ったら・・・!」
私は、思わず椅子から立ち上がっていた。走ってきたグローシアは私の前で急停止すると、私の前にひざまづいた。
「申し訳ございません!。アリアナ様!。このグローシア、アリアナ様の有事にはせ参じる事が出来きなかった事、大変申し訳なく・・・。」
「そんな事は良いから、立ち上がって!。スカートが汚れるから。」
それに、こんな生徒が大勢いるカフェで、目立ち過ぎでしょ!これじゃ。
「場所を移動しましょう。ノエル様はいらっしゃらないのですか?。」
グローシアはスカートをはたきながら立ち上がった。
「もうすぐ来ます。わたくしは一刻も早く、アリアナ様にお会いしたかったので。」
「そ、それはありがとう・・・。」
クリフはクスクスと笑いながら椅子から立ち上がった。
「俺は、さっきの件について、今から父に手紙を書くよ。ノエルが来たら、そう言っておいて。」
「あ、はい。では、また明日教室で。」
「ああ。」
クリフはそう言って、中庭の芝生を寮の方へ向かって歩いて行った。周りにいる女生徒達が皆、頬を染めながら、ずっとクリフの方を目で追っているのが見えた。
(さすがだよね・・・。ああいう人とさっきから二人きりで喋ってたと思うと、ちょっと不思議な気分だよ。)
15
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる