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第6章 悪役令嬢は利用されたくない
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そんな中、額の汗を拭いながらトラヴィスがイーサンの方へ一歩進み出てた。
「イーサン殿。部下達が済まない事をした。代わりに私が謝罪する。申し訳ない。」
皇太子らしい綺麗な所作で頭を下げる。
でも、
(げっ・・・)
トラヴィスの顔を見て、私は砂を吐きそうな気分になった。謝っているくせに彼の頬は上気して赤くなり、目はキラキラと輝いている。『イーサン様最強!素敵!カッコよすぎ!』と言う、心の声が聞こえてきそうだった。
(ねーさんったら『推し』の強さを間近で見たからって、テンション上がりすぎ!)
そんなトラヴィスの様子を全スルーしたイーサンは、あごでエメラインを示しながら、
「女の捕縛を解除する。早くそこの聖女とやらに聖魔術をかけさせろ。」
(な・・・!リリーに対して失礼な)
「わ、私はまだ候補で聖女ではありません、でも精一杯・・・」
「ごたくは良い。早くしろ。」
「は、はい・・・。」
青ざめた顔でリリーはエメラインの傍で腰を下ろし、祈る様に手を組んだ。
(リリー可哀そうに・・・。イーサンが怖いんだね。)
けれど、とりあえずはリリーに浄化を試して貰わなくてはいけない。
硬直していたエメラインの身体だったが、捕縛が解除されたのだろう、今は力が抜けた様にぐったり横たわっている。エメラインの目からはさっきまでの凶暴な光が抜け落ちていて、抵抗する気は無さそうだ。
リリーはそんな彼女に向けて、聖魔術を作動した。エメラインの身体が柔らかく美しい白く輝く光に包まれる。するとエメラインの頭から黒い煙の様な物が立ち上ってきた。
(ノエルの時と同じだ。)
黒い煙はゆらゆらとたなびく。だけど、ノエルの時の様に消えてはいかなかった。
「う、ううう・・・」
エメラインの口から苦し気な声が漏れる。そして突然エメラインの身体を包んでいたリリーの聖魔術の光が、弾け飛ぶようにかき消された。
「ああ!」
リリーが突き飛ばされたように、後ろへ倒れ込む。
「リリー!」
リリーを助け起こすと、彼女の手足は擦り傷だらけになっていた。
「・・・大丈夫です、アリアナ様。」
「大丈夫じゃないです。ごめんなさい。私が頼んだから・・・。」
ここまで強い拒絶反応が出るなんて思ってなかった。どうしよう!リリーに怪我をさせてしまった。
リリーは私を安心させるためか、笑顔を向けてくれているけど、私の方は泣きそうである。
「でもアリアナ様が言った通り、これでエメライン王女が精神魔術下にある事が確認されましたね。しかも王女や私よりも強い魔力で。」
「はい、やっぱり術者は魔力増幅されてるって事ですよね。」
私はトラヴィスの方を見た。彼も難しい顔で頷いた。そして、
「こうなると浄化は難しいな。リリー嬢に魔力増幅を行う手もあるが、どれほどの強さの魔力でかけられたのか分からない上、宝玉レベルで魔力を強める魔道具は今手元に無いのだ・・・。」
「大丈夫です。エメライン王女を救う手はまだあります。」
私はイーサンの方を見た。彼は口の端で笑いながら、
「お前、俺にただ働きをさせるつもりか?。言っとくがその女を助ける義理は、俺には全くない。」
「でも、あんたの闇魔術だったら精神魔術を無効化できるよね?。それとも魔力量に自信ない?」
「煽ったって無駄だ。俺は面倒な事はしない。」
(頑固かよ?こいつ。)
だいたい、面倒と言いながら、私には散々絡んできてるじゃない!?皇太子の暗殺について、わざわざ教えてくれたり、エメライン王女の攻撃から助けてくれたり。
面倒の基準が分からんな。
でも、だとするとイーサンは面倒であっても、トラヴィスと私が死ぬ事は防ぎたいって訳だ。だとしたら・・・、
「エメライン王女の精神魔術が解除されないかぎり、彼女は再度、私を狙う可能性があるよね。それに、もしかしたら、恋情の裏返しでトラヴィス殿下に矛先が変わるかもしれない。出来れば彼女を魔術から解放して、危険の目を摘んできたいのだけど、あなたはどう思う?。」
「へぇ・・・、チビのくせに策士だな、お前は。だったら別に、今すぐこの女を殺してやっても良いんだが?」
「イーサン殿。部下達が済まない事をした。代わりに私が謝罪する。申し訳ない。」
皇太子らしい綺麗な所作で頭を下げる。
でも、
(げっ・・・)
トラヴィスの顔を見て、私は砂を吐きそうな気分になった。謝っているくせに彼の頬は上気して赤くなり、目はキラキラと輝いている。『イーサン様最強!素敵!カッコよすぎ!』と言う、心の声が聞こえてきそうだった。
(ねーさんったら『推し』の強さを間近で見たからって、テンション上がりすぎ!)
そんなトラヴィスの様子を全スルーしたイーサンは、あごでエメラインを示しながら、
「女の捕縛を解除する。早くそこの聖女とやらに聖魔術をかけさせろ。」
(な・・・!リリーに対して失礼な)
「わ、私はまだ候補で聖女ではありません、でも精一杯・・・」
「ごたくは良い。早くしろ。」
「は、はい・・・。」
青ざめた顔でリリーはエメラインの傍で腰を下ろし、祈る様に手を組んだ。
(リリー可哀そうに・・・。イーサンが怖いんだね。)
けれど、とりあえずはリリーに浄化を試して貰わなくてはいけない。
硬直していたエメラインの身体だったが、捕縛が解除されたのだろう、今は力が抜けた様にぐったり横たわっている。エメラインの目からはさっきまでの凶暴な光が抜け落ちていて、抵抗する気は無さそうだ。
リリーはそんな彼女に向けて、聖魔術を作動した。エメラインの身体が柔らかく美しい白く輝く光に包まれる。するとエメラインの頭から黒い煙の様な物が立ち上ってきた。
(ノエルの時と同じだ。)
黒い煙はゆらゆらとたなびく。だけど、ノエルの時の様に消えてはいかなかった。
「う、ううう・・・」
エメラインの口から苦し気な声が漏れる。そして突然エメラインの身体を包んでいたリリーの聖魔術の光が、弾け飛ぶようにかき消された。
「ああ!」
リリーが突き飛ばされたように、後ろへ倒れ込む。
「リリー!」
リリーを助け起こすと、彼女の手足は擦り傷だらけになっていた。
「・・・大丈夫です、アリアナ様。」
「大丈夫じゃないです。ごめんなさい。私が頼んだから・・・。」
ここまで強い拒絶反応が出るなんて思ってなかった。どうしよう!リリーに怪我をさせてしまった。
リリーは私を安心させるためか、笑顔を向けてくれているけど、私の方は泣きそうである。
「でもアリアナ様が言った通り、これでエメライン王女が精神魔術下にある事が確認されましたね。しかも王女や私よりも強い魔力で。」
「はい、やっぱり術者は魔力増幅されてるって事ですよね。」
私はトラヴィスの方を見た。彼も難しい顔で頷いた。そして、
「こうなると浄化は難しいな。リリー嬢に魔力増幅を行う手もあるが、どれほどの強さの魔力でかけられたのか分からない上、宝玉レベルで魔力を強める魔道具は今手元に無いのだ・・・。」
「大丈夫です。エメライン王女を救う手はまだあります。」
私はイーサンの方を見た。彼は口の端で笑いながら、
「お前、俺にただ働きをさせるつもりか?。言っとくがその女を助ける義理は、俺には全くない。」
「でも、あんたの闇魔術だったら精神魔術を無効化できるよね?。それとも魔力量に自信ない?」
「煽ったって無駄だ。俺は面倒な事はしない。」
(頑固かよ?こいつ。)
だいたい、面倒と言いながら、私には散々絡んできてるじゃない!?皇太子の暗殺について、わざわざ教えてくれたり、エメライン王女の攻撃から助けてくれたり。
面倒の基準が分からんな。
でも、だとするとイーサンは面倒であっても、トラヴィスと私が死ぬ事は防ぎたいって訳だ。だとしたら・・・、
「エメライン王女の精神魔術が解除されないかぎり、彼女は再度、私を狙う可能性があるよね。それに、もしかしたら、恋情の裏返しでトラヴィス殿下に矛先が変わるかもしれない。出来れば彼女を魔術から解放して、危険の目を摘んできたいのだけど、あなたはどう思う?。」
「へぇ・・・、チビのくせに策士だな、お前は。だったら別に、今すぐこの女を殺してやっても良いんだが?」
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