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第6章 悪役令嬢は利用されたくない
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馬鹿にしたように笑うイーサンに対し、ディーンの目は鋭さを増し、私の腕を掴んだクラークの手に力がこもった。
そして、トラヴィスの後ろに居た学園の警備兵が突然イーサンに切りかかったのだ。
「こ、この闇の魔術師め!」
「よせっ!」
トラヴィスが警備兵を止めようとする。
しかしその前に警備兵は、一瞬で真っ黒い霧のようなものに包まれた。
「ぐ、ぐああっ」
苦し気な声が黒い霧の中から聞こえてくる。
「き、きさまぁ!」
他の警備兵達もイーサンに攻撃しようと武器を構え、魔術攻撃の為に腕を上げた。
「お前達、やめろ!」
トラヴィスが間に割って入り、大声で皆を止める。
「この者に手を出すな!。お前達が敵う相手ではない。」
「ひっ・・・」
私は片手で口を押えた。
別に悲鳴を押さえた訳では無かった。
大変不謹慎であるし、こんな時にと思われるだろうし、申し訳ないとも思う。だけど・・・、私は笑い出しそうになるのを必死にこらえていたのだ!。
なぜって今のトラヴィスの行動は、さっきの私の説明聞いてた人から見ると、単に好きな男を庇っている様にしか見えないのでは?と思ったからだ。
(と、とっても緊迫したシチュエイションだって分かっているんだけど・・・。)
駄目だ、顔がにやける。
でも、闇魔術を食らっている警備兵さんは非常に危険な状態だ。早く助けないと。
「リリー、警備兵さんに光魔術を!」
「あっ。」
私の声に我に返ったリリーが警備兵に駆け寄って両手をかざした。柔らかく、そして温かい光が警備兵を包み、一瞬パッと大きく輝くと、彼の周りにあった黒い霧は消え去ってた。
けれど警備兵の受けたダメージは相当なものだったようで、顔は蒼白で、ぐったりしているのに手足が痙攣している。リリーは警備兵さんに続けて治療の魔術を施し始めた。
私はイーサンを睨みつけた。
「ちょっとイーサン。何てことするのよ!?」
「何故?先に攻撃してきたのは向こうだろう。そういう馬鹿には思い知らせてやった方が良い、こんな風に。」
イーサンがそう言うと、突然周りにいた人達が急に膝を付いたり、胸を押さえて後ずさりを始めた。クラークやディーンも顔をしかめている。
(な、何?何が起きてるの?)
「顔の周りを飛ぶ羽虫のように鬱陶しい。虫けらを潰して何が悪い?」
イーサンは指一本動かしていない。残酷な笑みを浮かべて私を見ているだけだ。
「・・・なんて魔力なの」
ミリアが苦しそうにそう言って、両手を付いて倒れ込んだ。リリーも苦しそうに両手で胸を抱える様にして座り込んでいる。
今、立って居られてるのはトラヴィスとディーンとクラーク。そして何故か私だけだ。
「な、何が起きているのですか、お兄様?!」
私が聞くと、
「くっ・・・あいつは・・・凄まじい魔力の圧を発してる。・・・まるで・・・嵐の中にいるようだ。アリアナは・・・大・・・丈夫なのか!?」
苦しそうに顔をしかめながらそう答えた。
(魔力の圧!?)
えっ?なんも感じない。あれ?もしかして魔力ゼロだから?。
「ああっ・・・。」
ついにリリーが崩れる様に倒れた。私はリリーに駆け寄り助け起こす。リリーの顔は真っ青で体が微かに震えている。彼女のそんな姿を見て私は体中の血が沸騰し、頭の中で何かがブチッと切れたような音がした。
(いい加減にしろっ!)
「イーサン、この卑怯者!私のヒロインになんて事してくれるのよ!。」
魔力の圧でよれよれのクラークを押しのけてイーサンに駆け寄り、両手で胸ぐらを掴んだ。背が低いのでほぼ万歳状態なのがちょっと情けない。
「お前、なんともないのか?」
イーサンの驚いた顔を初めて見たが、どうでも良い。
「あいにく、魔力ゼロなもんでね。」
「魔力が無いものは、余計キツいはずだが・・・。」
イーサンは何やらブツブツ言ったが、それどころではないので無視してやった。
「いい加減、その変な圧とやらを止めなさいよ!。みんな苦しそうじゃない。」
「苦しめばいいじゃないか。別に死にはしない。弱いくせに逆らうからだ。」
(あ・・・こいつ馬鹿だ・・・)
イライラが限界を超えると、逆に頭が冷えるのだろうか。私は胸ぐらを掴んでいた手を離し、人差し指を彼の胸に突き付けた。
「思い上がるのはやめなさい、この厨二野郎。あんた神様にでもなったつもり?。自分が力持ってるからって俺様風吹かすのは凄く格好悪いんだからね。」
私がそう言うと、何故かイーサンはビクッと身体を震わせ表情を変えた。でも私は構わず続けた。
「そんな事続けてたら、今に足元すくわれるよ。それにあんただって今は最強かもしれないけど、死んだら皆と同じで普通の人だからね。生まれ変わった時に前世の業で末代まで祟られるかもよ。そうなったときに後悔したって遅いんだから。分かったらさっさと圧力とやらを・・・」
「もう止めてる。」
「え?」
振り返ると、みんな疲れた顔をしているが先程みたいな苦しさは無いようだった。
そして、トラヴィスの後ろに居た学園の警備兵が突然イーサンに切りかかったのだ。
「こ、この闇の魔術師め!」
「よせっ!」
トラヴィスが警備兵を止めようとする。
しかしその前に警備兵は、一瞬で真っ黒い霧のようなものに包まれた。
「ぐ、ぐああっ」
苦し気な声が黒い霧の中から聞こえてくる。
「き、きさまぁ!」
他の警備兵達もイーサンに攻撃しようと武器を構え、魔術攻撃の為に腕を上げた。
「お前達、やめろ!」
トラヴィスが間に割って入り、大声で皆を止める。
「この者に手を出すな!。お前達が敵う相手ではない。」
「ひっ・・・」
私は片手で口を押えた。
別に悲鳴を押さえた訳では無かった。
大変不謹慎であるし、こんな時にと思われるだろうし、申し訳ないとも思う。だけど・・・、私は笑い出しそうになるのを必死にこらえていたのだ!。
なぜって今のトラヴィスの行動は、さっきの私の説明聞いてた人から見ると、単に好きな男を庇っている様にしか見えないのでは?と思ったからだ。
(と、とっても緊迫したシチュエイションだって分かっているんだけど・・・。)
駄目だ、顔がにやける。
でも、闇魔術を食らっている警備兵さんは非常に危険な状態だ。早く助けないと。
「リリー、警備兵さんに光魔術を!」
「あっ。」
私の声に我に返ったリリーが警備兵に駆け寄って両手をかざした。柔らかく、そして温かい光が警備兵を包み、一瞬パッと大きく輝くと、彼の周りにあった黒い霧は消え去ってた。
けれど警備兵の受けたダメージは相当なものだったようで、顔は蒼白で、ぐったりしているのに手足が痙攣している。リリーは警備兵さんに続けて治療の魔術を施し始めた。
私はイーサンを睨みつけた。
「ちょっとイーサン。何てことするのよ!?」
「何故?先に攻撃してきたのは向こうだろう。そういう馬鹿には思い知らせてやった方が良い、こんな風に。」
イーサンがそう言うと、突然周りにいた人達が急に膝を付いたり、胸を押さえて後ずさりを始めた。クラークやディーンも顔をしかめている。
(な、何?何が起きてるの?)
「顔の周りを飛ぶ羽虫のように鬱陶しい。虫けらを潰して何が悪い?」
イーサンは指一本動かしていない。残酷な笑みを浮かべて私を見ているだけだ。
「・・・なんて魔力なの」
ミリアが苦しそうにそう言って、両手を付いて倒れ込んだ。リリーも苦しそうに両手で胸を抱える様にして座り込んでいる。
今、立って居られてるのはトラヴィスとディーンとクラーク。そして何故か私だけだ。
「な、何が起きているのですか、お兄様?!」
私が聞くと、
「くっ・・・あいつは・・・凄まじい魔力の圧を発してる。・・・まるで・・・嵐の中にいるようだ。アリアナは・・・大・・・丈夫なのか!?」
苦しそうに顔をしかめながらそう答えた。
(魔力の圧!?)
えっ?なんも感じない。あれ?もしかして魔力ゼロだから?。
「ああっ・・・。」
ついにリリーが崩れる様に倒れた。私はリリーに駆け寄り助け起こす。リリーの顔は真っ青で体が微かに震えている。彼女のそんな姿を見て私は体中の血が沸騰し、頭の中で何かがブチッと切れたような音がした。
(いい加減にしろっ!)
「イーサン、この卑怯者!私のヒロインになんて事してくれるのよ!。」
魔力の圧でよれよれのクラークを押しのけてイーサンに駆け寄り、両手で胸ぐらを掴んだ。背が低いのでほぼ万歳状態なのがちょっと情けない。
「お前、なんともないのか?」
イーサンの驚いた顔を初めて見たが、どうでも良い。
「あいにく、魔力ゼロなもんでね。」
「魔力が無いものは、余計キツいはずだが・・・。」
イーサンは何やらブツブツ言ったが、それどころではないので無視してやった。
「いい加減、その変な圧とやらを止めなさいよ!。みんな苦しそうじゃない。」
「苦しめばいいじゃないか。別に死にはしない。弱いくせに逆らうからだ。」
(あ・・・こいつ馬鹿だ・・・)
イライラが限界を超えると、逆に頭が冷えるのだろうか。私は胸ぐらを掴んでいた手を離し、人差し指を彼の胸に突き付けた。
「思い上がるのはやめなさい、この厨二野郎。あんた神様にでもなったつもり?。自分が力持ってるからって俺様風吹かすのは凄く格好悪いんだからね。」
私がそう言うと、何故かイーサンはビクッと身体を震わせ表情を変えた。でも私は構わず続けた。
「そんな事続けてたら、今に足元すくわれるよ。それにあんただって今は最強かもしれないけど、死んだら皆と同じで普通の人だからね。生まれ変わった時に前世の業で末代まで祟られるかもよ。そうなったときに後悔したって遅いんだから。分かったらさっさと圧力とやらを・・・」
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振り返ると、みんな疲れた顔をしているが先程みたいな苦しさは無いようだった。
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