モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第6章 悪役令嬢は利用されたくない

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トラヴィスがそう言った時、クラークがほんの一瞬、顔をしかめた様な気がした。
なんだろう?気のせいだろうか?。

「え・・と、それは単に私の魔力がゼロだからなのでは?。」

魔力が無いから、魔力の圧とやらの影響を受けないだけ。そんな風に単純に思っていたのだけど・・・。

私の問いに、ヘルダー伯爵は柔らかい笑みを返した。見た目そのままに優しそうな方だ。

「アリアナ嬢。この世界には魔力が無い者は存在しません。誰しもが多かれ少なかれ魔力を有しています。ただ、感知できない程魔力量の少ない者が、魔力が無いとされているだけなのです。」

(えっ?!)

「そ、そうなのですか。」

(って事は私も少しは魔力を持っているの?。なんだかちょっと嬉しいぞ。)

少し気分が高まって、自分の両手を眺めてみる。

だけど、今までゼロと言われてきたという事は、結局感知できない程少ないって事で・・・。

(何も出来ないことに変わりは無いか・・・。)

がっくりしながら手を降ろす。高揚した気分は直ぐに冷めてしまった。

(私も、皆みたいに魔術使ってみたかったなぁ。)

そんな私の心の内を知ってか知らずか、落ち着いた声でヘルダー伯爵は話を続ける。

「魔力の圧は魔力量が少なくても感じる事が出来ます。いえ、むしろ少ない者の方が影響を受けやすい。」

「どういうことでしょうか?」

いまいちピンとこない。

「専門的な話になります。今まであまり知られてなかった事ですが、我々の身体には魔力が循環している『脈』と言うものがあるのです。」

「『脈』?ですか・・・。」

「そうです。具体的には血を巡らしている血管の様なものとお考え下さい。同じ様に魔力は『脈』を通じて体中を周っているのです。そして、血液と違ってそれは体外でも巡らせる事ができます。その例が魔術です。それぞれが持つ魔力の属性により魔術と言う形で外に具現化する事が出来るのです。この辺りは授業でも習ったと思いますが・・・。」

「あ、はい。『脈』以外は知っています。魔力量の多さや属性によって使える魔術が変わって来るのですよね。」

「そうです。そして魔術と言う形を使わず放たれた魔力は、周りにいる人間に影響を及ぼします。これが魔力の圧です。」

「どうして魔術を使っていないのに、相手にダメージを与える事ができるのでしょう?。」

クラークが質問する。

「その理由を説明するのに重要となるのが『脈』の存在なのです。私の新しい研究で、強力な魔力は相手の『脈』を抑える事が出来る事が分かりました。抑えられた者は自分の魔力を巡らすことが出来ず苦しい思いをする。血液が流れないのと同じ道理です。ある程度魔力の強い者は相手の圧に抵抗する事が出来るので、魔力量の少ない者ほどきつい思いをします。」

(う~ん、気とかオーラみたいなものなのかなぁ。ピンと来るような来ないような・・・。)

「あのう、魔力が少なければ、元々あまり身体を流れていないわけですよね?。阻害されても逆に影響が少ないのでは?」

疑問に思った事を聞いてみた。

「抑えるという言い方が良くなかったかもしれませんね。こう考えてください。魔力の弱い者は抵抗が弱く、自分の『脈』に相手の魔力が流れ込んでしまうのですよ。」

「えっ!?」

「自分のものでは無い、異質な魔力が流れ込むことになります。それで中毒を起こすのです。まぁ、ごくたまに相性の良い魔力もあるようですが、率としてはかなり低いですね。」

(なるほど、B型の血液にA型を流す様なものか。それはヤバいよね。だから魔力量スーパーなイーサンに、みんなやられちゃったって事か。)

「分かっただろう?。アリアナ嬢がイーサンの魔力に影響を受けないのは、通常ではありえない事なんだ。だから、ヘルダー卿に頼んで君の『脈』と正確な魔力量を見て貰おうと思ったのさ。ヘルダー卿は皇国でも数少ない『脈』を見る事が出来る方だからね。私も魔力量を見る『目』を持ってはいるが、卿よりは精度が良くない。『脈』はもちろん、少な過ぎると魔力を感知できないからね。」

そういえば、以前トラヴィスにも目を覗き込まれた事があったっけ。あの時は私の中の『アリアナ』を見る為だったけど、魔力量も確認していたのかもしれない。

(結局、私の魔力量は限りなくゼロに近い事には変わりないよね。なんだか、ますますテンション下がって来るなぁ。だけど、どうしてイーサンの魔力圧を感じなかったんだろう?。)

おかしいと言われれば、少し不安になって来る。

「分かりました。そういう事でしたらお願いします。私も何故魔力圧を感じなかったのか、気になってきましたから。」
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