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第8章 悪役令嬢は知られたくない
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イルクァーレの滝は2年前に来た時と変わらず、キラキラと太陽の光を反射しながら柔らかな流れを作っていた。
私達はその裏側に行ける岩棚で出来た通路を歩いて行く。
(うっ、そう言えばここで前にイーサンと会ったっけ・・・)
色々思い出して嫌な気分になってしまった。
いよいよ洞窟の入り口にたどり着き、クラークとレティシアを入り口に残して私達は中へと足を踏み入れた。
「・・・昼過ぎには戻るつもりだが、もし夕方までに戻らなかったら街の憲兵舎に連絡を頼む」
「承知しました。アリアナをお願いします」
クラークは最後まで心配そうに目線を送ってきたが、私は笑顔で手を振って洞窟の道を進んだ。
「意外と歩きやすい道だな」
先頭を歩くトラヴィスがそう言った。
「自然を損なわない程度に、途中までは少しだけ整備されてるのです。たまに観光客が来るので」
ランタンの灯りを頼りに私達は奥へと進んだ。最初は小さな通路位の大きさだった洞窟が、次第に広くなっていく。
それに従って壁や天井に水晶が混ざり始め、灯りを反射して輝き始めた。
そしてしばらくすると、私達は突然テニスコートぐらいの広さの場所に出た。
「わっ・・・」
そこは天井が高くドーム状になっていて沢山の大小様々な水晶で囲まれていた。
「凄い・・・まるで水晶の宮殿ですね」
リリーが感嘆の声を上げた。
「それこそ、地図には白水晶の間と書いてありましたよ。ここまでは一本道で来れるのですが、ここから先はいくつか道があって、しかも枝分かれしているのです」
見ると真っすぐ言った先の壁と、少し左側にも人が通れそうな穴が見える。だけど私は頭の中に地図とルートを思い浮かべながら、右の方を指さした。
「あの大きな水晶の後ろにもう一つ穴があるはず。紫水晶のある場所へ続く通路です」
はたして私の言った通り、隠されたように人が一人通れるくらいの穴があった。
「ここからは私の言う方向へ進んでください」
「分かった」
トラヴィスを先頭にして次にディーン私、リリー、パーシヴァル、ミリア、クリフの順に進んでいく。周囲の壁も天井もほとんど水晶で覆われていて、ランタンの光を反射し、または吸い込んでいく。
「次の分かれ道は左へ進んでください」
通路は進むごとに横並びで歩けるほど広くなったり、屈まなくては通れなくなるほど狭くなったり変化していく。小部屋程の場所に出たかと思うと、Uターンするように曲がっている。
「行き止まりだ」
トラヴィスはそう言ったが、私は頭の中の地図と照らし合わせて上を見上げた。
「少し登った所に通路があるはずです。そこから登れると思います」
水晶の岩が階段状に積み重なった所を指さした。登っていくと先へと続く、狭い上に天井の低い穴一つがあった。トラヴィスが顔をしかめる。
「・・・行くしか無いか」
腰を屈めて行くのでのろのろとしか進めない。特に背の高い男子達は大変だ。
だけど一番背の低い私は首を少しすくめる程度で済んだ。
(ちょっとラッキー)
そしてしばらく進むとトラヴィスが「むっ!」と声を上げた。
「明かりが見える・・・」
視線を上げると先の出口らしきところがぼんやりと紫色に明るく光っている。
(紫水晶!)
私達は先ほどの白水晶の間よりも大きく開けた場所に出た。そして最初に穴から降り立ったトラヴィスが驚きの声を上げた。
「おお!・・・これは見事だ」
順にその場所に到達し、私達もその光景に目を見張った。
天井から壁から地面に至るまで全て紫水晶で覆われている。しかも何処から入って来ているのか、その場所は外の光を受けて全てが紫色に輝いていた。
リリーとミリアは息を飲み、
「何という場所なのでしょう・・・」
「なんだか怖いくらいだわ」
そう言って紫の光が降って来る光を手の平で受け止めている。
いつも飄々としているパーシヴァルも
「これはこれは・・」
とあまりの光景に続く言葉が出ない様だ。
「恐らく水晶の結晶のどこかが外界に露出しているんだ。そこから光が入っているんだろう」
手のひらで光を遮りながらトラヴィスが上を見上げた。
「まさに紫水晶の洞窟ですね」
ディーンがそう言ってクリフと頷き合った。
「やはり闇の神殿の場所は、この洞窟から繋がっているのでしょう」
「・・・うむ、そうだな」
その言葉に私達の間に緊張感が増した。
私達はその裏側に行ける岩棚で出来た通路を歩いて行く。
(うっ、そう言えばここで前にイーサンと会ったっけ・・・)
色々思い出して嫌な気分になってしまった。
いよいよ洞窟の入り口にたどり着き、クラークとレティシアを入り口に残して私達は中へと足を踏み入れた。
「・・・昼過ぎには戻るつもりだが、もし夕方までに戻らなかったら街の憲兵舎に連絡を頼む」
「承知しました。アリアナをお願いします」
クラークは最後まで心配そうに目線を送ってきたが、私は笑顔で手を振って洞窟の道を進んだ。
「意外と歩きやすい道だな」
先頭を歩くトラヴィスがそう言った。
「自然を損なわない程度に、途中までは少しだけ整備されてるのです。たまに観光客が来るので」
ランタンの灯りを頼りに私達は奥へと進んだ。最初は小さな通路位の大きさだった洞窟が、次第に広くなっていく。
それに従って壁や天井に水晶が混ざり始め、灯りを反射して輝き始めた。
そしてしばらくすると、私達は突然テニスコートぐらいの広さの場所に出た。
「わっ・・・」
そこは天井が高くドーム状になっていて沢山の大小様々な水晶で囲まれていた。
「凄い・・・まるで水晶の宮殿ですね」
リリーが感嘆の声を上げた。
「それこそ、地図には白水晶の間と書いてありましたよ。ここまでは一本道で来れるのですが、ここから先はいくつか道があって、しかも枝分かれしているのです」
見ると真っすぐ言った先の壁と、少し左側にも人が通れそうな穴が見える。だけど私は頭の中に地図とルートを思い浮かべながら、右の方を指さした。
「あの大きな水晶の後ろにもう一つ穴があるはず。紫水晶のある場所へ続く通路です」
はたして私の言った通り、隠されたように人が一人通れるくらいの穴があった。
「ここからは私の言う方向へ進んでください」
「分かった」
トラヴィスを先頭にして次にディーン私、リリー、パーシヴァル、ミリア、クリフの順に進んでいく。周囲の壁も天井もほとんど水晶で覆われていて、ランタンの光を反射し、または吸い込んでいく。
「次の分かれ道は左へ進んでください」
通路は進むごとに横並びで歩けるほど広くなったり、屈まなくては通れなくなるほど狭くなったり変化していく。小部屋程の場所に出たかと思うと、Uターンするように曲がっている。
「行き止まりだ」
トラヴィスはそう言ったが、私は頭の中の地図と照らし合わせて上を見上げた。
「少し登った所に通路があるはずです。そこから登れると思います」
水晶の岩が階段状に積み重なった所を指さした。登っていくと先へと続く、狭い上に天井の低い穴一つがあった。トラヴィスが顔をしかめる。
「・・・行くしか無いか」
腰を屈めて行くのでのろのろとしか進めない。特に背の高い男子達は大変だ。
だけど一番背の低い私は首を少しすくめる程度で済んだ。
(ちょっとラッキー)
そしてしばらく進むとトラヴィスが「むっ!」と声を上げた。
「明かりが見える・・・」
視線を上げると先の出口らしきところがぼんやりと紫色に明るく光っている。
(紫水晶!)
私達は先ほどの白水晶の間よりも大きく開けた場所に出た。そして最初に穴から降り立ったトラヴィスが驚きの声を上げた。
「おお!・・・これは見事だ」
順にその場所に到達し、私達もその光景に目を見張った。
天井から壁から地面に至るまで全て紫水晶で覆われている。しかも何処から入って来ているのか、その場所は外の光を受けて全てが紫色に輝いていた。
リリーとミリアは息を飲み、
「何という場所なのでしょう・・・」
「なんだか怖いくらいだわ」
そう言って紫の光が降って来る光を手の平で受け止めている。
いつも飄々としているパーシヴァルも
「これはこれは・・」
とあまりの光景に続く言葉が出ない様だ。
「恐らく水晶の結晶のどこかが外界に露出しているんだ。そこから光が入っているんだろう」
手のひらで光を遮りながらトラヴィスが上を見上げた。
「まさに紫水晶の洞窟ですね」
ディーンがそう言ってクリフと頷き合った。
「やはり闇の神殿の場所は、この洞窟から繋がっているのでしょう」
「・・・うむ、そうだな」
その言葉に私達の間に緊張感が増した。
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