12 / 168
第二章 〜水晶使いの成長〜
第11話 身体強化②
しおりを挟む「さて、ライン。身体強化、習得したみたいだな。続きをするか? 別に明日でもい──」
「──明日で!」
即答してやった。
なぜって?
少し慣らさないと、だからな。
身体強化を発動した状態で動いてないんだし。
速くなりすぎていて、体をコントロールできなくなっているかもしれない。
こんなときはやっぱり、山に入ろう。
木を使ったアクロバット、魔物を相手にした組手(狩り)、坂道ダッシュと、いろいろできる。
それになにより──
──静かだ。
聞こえるのは鳥の鳴き声、木が揺れる音、生き物が草木をかき分け、移動する音。
ぐぅぅぅ
腹の虫が鳴いたな。
都合よく、オルオの実があった。
オルオの実
薄紅色をした果実で、中味は白い。
甘い。
温暖な地域に生息し、生命力が強い。
皮は少し硬いが、中身は柔らかい。
皮を利用した化粧品や、芳香剤もある。
水分が多め。
いつも思うけど、この食感、茄子みてぇだな。
表面は硬いんだけどさ。表面、と言うより皮だな。
さてと、ぼちぼち始めるか。身体強化。
「お! ライン、ここにいたか」
「え~と……」
「ラーファーだ。近衛騎士って呼んでも構わない。この村に近衛騎士は俺一人だけだからな」
「じゃあ、好きに呼ばせてもらうよ。そう言えば、近衛騎士一人が村に派遣って、左遷に近いんじゃないの?」
我ながら良くないな、と思う。こんな質問。でも、勝手に口が喋ってた。
「いやいや。近衛騎士団って言っても、数隊に分かれてる。第三隊に所属する近衛騎士が、全員派遣された。第三隊は、唯一の遊撃部隊。隊よりも、個人で動かされることが多いんだ。その分、一人一人が強い」
チームで動くのが苦手な人たちを纏めた隊なんだな、多分。
個人で強すぎる力を持つが故……か。
自分で言えるほど、自身があるんだろうな。
「ラインも、このまま順調にいけば第三隊に配属されるかもな」
「なんで? 俺は冒険者になりたいんだけど?」
「冒険者か、近衛騎士か。それを決めるのは学校の先生だ。決定権はない」
はぁぁあ?
ふざけてやがるぜ。
「どちらに配属されるか。それを決めるのは、卒業までに、覚醒したかどうか、だ」
……は?
覚醒?
また聞いたことない単語が出てきたよ。
「……覚醒?」
「身体強化を習得しただろ? 覚醒者は、あれを使ったときに、身体能力の上昇に補正がかかるんだ」
「じゃ、隠せばいいや」
「身体強化を使えないと、冒険者にすらなれないぞ? それに、隠すと言っても、覚醒者が身体強化を使うと、紋様が浮き出るし、何より、上昇幅が大き過ぎる。諦めろ。第三隊の隊長は良い人だから、面白い人だから、な?」
……詰んだ。
そうだ、覚醒しなけりゃいいんだ。
そうだそうだ。うん。ってか、紋様って……。厨ニ設定の世界かよ~。
いや、まあ、近衛騎士になるのが嫌っていうわけじゃないのよ。
ただ、縛られ過ぎてるから嫌なんだよ。
なんかこう、ビシーッ、ってしてるイメージだから。
それよりも、冒険者として気ままに過ごしたい。
自由にな、うん。
近衛騎士の方が給料はいいらしいけど、冒険者も一般の仕事と同じくらい貰えるらしいし。
農家も、案外儲かるんだよな。
この村で収穫された作物のうち、7割が販売されている。
そんなんで国民全員の腹を満たせるのか?
否。
日本より食料自給率は高い。
でも、100ではない。
それはなぜか。
シンプルに、土地がないのだ。
なら、どうやって腹を満たしているのか。
農民たちは、自分たちで作ったものを食べている。
買うこともあるが、それはさておき。
それは、輸入だ。
少し南に、エルフの国がある。
エルフと言えば、森。森妖精と書いて、エルフ。……のはずだった。
エルフの国は、農業大国だ。食料自給率は1000を超えてる。
少ない人手で広い土地を管理しているからだ。
前世でのアメリカに当たる国だ。
機械ではなく、魔法で管理している。しかも、採れる作物は高品質な物が多いそう。
話が逸れた。
つまり、だ。
農民は、ちゃんと物に見合った金が貰えている。
儲けた金で、農具を買ったり、街で遊んだり。数日に限り、畑を自動で管理できるアイテムもある。
他にも、本来の重量より軽く感じる農具とか。
わかりやすく言うなら、鉄製のクワだが、重さは木製と変わらない、みたいなものだ。
ただ、実際の重さは変わらない。あくまで、感じる重さの話。
もちろん、全て魔法具という訳ではない。
切れ味のいいナイフとか、包丁とかな。
「……い、おーい、ライン?」
「……ん? あぁ」
「さっきから何考えてたんだ?」
「ちょっとね」
「なんだ? 近衛騎士も悪くない、とでも思ったか?」
「ま、成り行きに任せようと思っただけ」
「それがいい」
近衛騎士は、満足そうに頷いた。
「で、何をしに来たの?」
「ラインの修行を見に、な」
近衛騎士が、覚醒した強さを見せてくれるとのことで、見せてもらうことにした。
「やり方は、身体強化と同じ。覚醒の仕方は、まだ誰にもわかっていない。一定以上の強さを身に着けたらできるってのが、有力な説だ。いくぞ」
オレは常時発動している、視力強化、聴覚強化、嗅覚強化のうち、視力強化をもう一段階強化した。
ここに来る途中で感覚はつかめた。
魔力を通していない、普通の状態。
そして、魔力を通した強化状態。
より多くの魔力を通した強化状態。強化2とでもいうかな。
二段階目の強化をして、効果が増えたのは目だけだった。
と、言うより、目しかニ段階目に行けなかった。
「ハッ!!」
掛け声と同時に、近衛騎士のオーラとも言うべきものが強くなった。
見た目は変わらないのに、何倍にも大きくなった気がする。
前世で読んだ本で、こんなふうに表現されててもよくわからなかったけど、今ならわかる。
これかぁ。
「ちなみに、覚醒しても魔力は消費しない。ただ魔力を通しているだけだからな。状態の維持に集中する必要も、ない」
身体強化と同じなのね。
「そして、魔法の威力も上昇する。身体強化でも上昇はするが、より強くなる。数を絞れば、覚醒者でなくても初級を中級にすることはできるがな。ちなみに、初級とか中級とかの基準はちゃんとあるんだぞ。冒険者組合に申請しないとできないけど。」
へー。
フォーレンさん、ああ見えて意外とすげぇんだな。
「ライン、よく見てみろ。俺の顔に、何か見えないか?」
「……傷跡」
「紋様、な。覚醒者が身体強化を使うと、これが出てくる。模様は、人によって違うがな。ただ、顔に出るのはみんな同じだ」
それから、いろんなことを教えてもらった。
まず、冒険者学校卒業までに覚醒すれは、近衛騎士団に配属される。
冒険者として働いているうちに覚醒すれば、魔鉱クラスに昇格。
紋様と言っても……線だ。
近衛騎士の場合、口を斜めに切ったような線だ。かっこよくないなぁ。
身体強化で強化されるのは基本全て。
だから、上昇したスピードに驚くことはまずない。ほんとになかった。
あと、魔力を見ることができる、これ。『魔力眼』というらしい。
だが、みんな魔力探知と呼ぶ。
学校で習ったり習わなかったり。
先生の気分と、時間次第で、かつ、魔術の道を行く者に教えられるそう。
もちろん、オレみたいに自力で習得できる人もいるらしい。
他には、冒険者学校の楽しい行事とか、面倒くさい行事とか。定期テストもあるらしい。
「俺が言いたかったことはこんぐらいだ。今年からの受験者は、ほとんどが身体強化を習得していると思った方がいい。覚醒したやつも混じっているかもしれない。気をつけろよ。気を抜くな」
「ありがとう」
「ああ。じゃあな。暗くなる前に戻ってこいよ」
初めて話した。
覚醒、か。
「ふっ……!」
とりあえず、この状態を維持しておこうか。
お、手鏡。なるほど。覚醒したかどうかの判断は、紋様でしかできないのか。
仮面を被れば……いや、余計怪しまれるか。ま、近衛騎士団も雰囲気的に嫌なだけなんだけどさ。
冒険者はやっぱり自由でないと。
さて、まだまだ時間はあるんだ。
身体強化を常時発動しながら、トレーニングするか。
ちなみに、寝ると身体強化は切れていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
異世界亜人熟女ハーレム製作者
†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です
【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる