戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

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第二章 〜水晶使いの成長〜

第12話  親善試合

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「ライン、昨日の続きだ」
「ん~? ああ、はいはい。じゃ、行きましょかー」
「ラーファーを呼んでくるから、先に行っててくれ」

 さっさと行っとくか。

「待て。ライン。そっちは山の方向だ」

 う……、間違えた。

「ラインくん、武器はこれでよかったのよね?」
「うん。ありがとう。でも、いいや。最近、その棍、合わなくなったから。というより、今まで使ってた武器全部合わないんだよ」

 納得した顔でオーカーさんが言った。

「ラインも成長したからな。そもそも、武器は鍛冶屋でサイズを測ってから作ってもらうものだからな。ラインが使ってた装備は大人の冒険者が使ってた物だし」

 へぇ!
 武器はオーダーメイドなのか。
 夢が広がるな!

「問題ないよ。魔法を使って作れるから」
「? そんな魔法あったか?」
「ラインはあれなんじゃないか? 属性特化型。一つの属性しか使えない代わりに、その属性を自由に操れるやつ」
「……水晶術師とでも言えばいいのか?」
「別にわざわざ呼び名をつける必要もないんじゃない? 私みたいな回復術師も、似たような者じゃないの」
「水晶特化なんか、史上初だろうからな。呼び名はなくていいだろ。な? ライン?」
「まあね。水晶特化です、って言えばいいし」

 なんて話していたら、フォーレンさんがラーファーさんを連れてきた。

「それじゃ、行こうか」





「じゃ、始めようか」
「審判は俺だな。あぁ、俺のことは気にしなくていいからな。上手く避けるから」
「ありがとう。心置きなく戦える」

 そもそも気にしてねぇだろが。
 俺も気にしてないけどさ。

 あ、あとで属性特化型について教えてもらお。

「準備は良さそうだな。もし、ラインが危険だと判断したら、遠慮なく止めに入るからな」
「はっはっは。あんた相手だと、負けるかもしれないな」
「じゃあ、明日あたり勝負してよ」
「「え!?」」
「おお! いいな!」

 フォーレンさん、アミリスさん、オーカーさんは若干嫌そうな顔を。
 リーダーさん、ラーファーさんは少し嬉しそうな顔をした。

 まさか、言ったらいけないやつだったかな?

「ラーファー、やろう!」
「受けて立とう!」

 止めに入るかな、と思ったけど止める気はないみたいだ。
 まあ、近衛騎士……中でも、単体で実力を発揮する人と戦えるとなると、経験においては合格点だからな。

「あ、ちょっと待って、リーダー。明日は領都に帰らないと。今日が2日目だから、明日は時間ないわよ。村人の修行もあるし」
「じゃあ、来週だな」
「そうするか。で、始めるか?」

 2人とも少し嬉しそうだ。

「私はいいぞ」
「オレも、問題ない」

 リーダーさんは剣、オーカーさんは槍。フォーレンさんとラミリスさんは武器を所持していない。
 4人とも、同じデザインのガントレットをはめている。
 これがチームの証だ……とか言っていた。

 対してオレは普段着の服だけ。

 数でも、質でも不利。
 そしてなにより、向こうはパーティーで実力を最大発揮する。

 この不利な状況を覆すには、誰か一人潰せばいい。
 ただ、アタッカーが2人もいるから、後ろの2人には近づけないだろう。

 つまり、勝ち負けじゃなく、どこまで長い時間戦えるか、が重要になってくる。

 命の奪い合いじゃない。

「3……2……1……開始!」

 始まった。
 合図と同時にオレは駆け出し、4人は身体強化を発動した。
 もちろん、オレも走りながら身体強化を発動させた。

「──『火球ファイアーボール』」

 前衛2人の間から飛んできた『火球ファイアーボール』をなるべく無駄な動きを抑えて避ける。
 それと同時に『晶弾』をフォーレンさんにむけて放つ。  
 だが、それはリーダーさんによって弾かれた。

「速いな。それに小さい。身体強化がなければ、私も危なかったな」
「少し残念だよ。出だしは一番いい魔法なんだけどね」
「属性特化型は魔法詠唱を必要としないと聞いたいたけど、厄介だな」

 回復魔法は詠唱がいるのか。まあ、似たようなもの、としか言ってなかったからな。

 似て非なるもの、なんだろう。
 普通の魔法と、属性特化型の魔法の間、と言ったところか。

 防がれてしまったが、少し言い訳をさせてほしい。
 あの『晶弾』は、身体強化の前──つまり、合図とともに生成していたものだ。
 身体強化を発動させた後で生成すれば、もっと速くなるし、頑丈になる。

 つまり、こういうこと。
 今放てばいい。
 こうやって考えている間に生成した。

「これならどうだ!」

 『晶弾』を8発、前衛2人にむけて放つ。
 もちろん、殺傷能力は低くしてある。

 2人はそれぞれの武器を振り、弾を防いだ。

 半分は防がれてしまったが、半分は当たった。
 そしてそのまま距離を詰めてきた。単純なパワーでは敵わないだろう。
 
「終わりだな」
「いや、まだだ。──『晶棘しょうきょく』」

 地面から水晶の棘を出現させ、進行を防いだ。
 2人は左右に避けた。『晶壁』でも防げた。そうしなかった理由は、ただ一つ。

 『火球ファイアーボール』が迫ってきていたからだ。

 フォーレンさんの『火球ファイアーボール』は、身体強化状態だと中級レベルにもなる。
 『火球ファイアーボール』だけ、ではあるが。

 だからか、『火球ファイアーボール』ばかり使ってくる。
 他の手がわからないから安易に近づけない。

 だから、前衛から倒して、少しずつ手札をめくりに行こうと思っていたけど。
 チームで白金ランクってのは、思っていたより厄介だな。

 『火球ファイアーボール』を迎え撃つか、避けるか。
 迎え撃つ!
 前回と同じ、だが違う技で。

「──『晶拳しょうけん』!」

 前は凹凸があったが、今回はより洗練されたものになっている。  
 水晶の四角柱が集まってできた姿をしている。

 前回はイメージが安定していなかった。 
 こんな名前を付けてしまったからな。その反省を生かし、イメージを定着させた。

 押し勝った!
 そのままフォーレンさんに……! 

 ──なんてことはなく。
 
 続いて3発の『火球ファイアーボール』が発射され、『晶拳』は消え去った。

 だが、今はそれどころではなかった。
 背後から、前衛2人が仕掛けてきた。『晶壁』で防いだけど。

「ちゃんと覚えていたな。よしよし」
「忘れられると思った?」

 お決まりの流れだな。
 迎え撃つことで、敵の目を引かせる。

 互いにやったことだ。
 別に、『晶拳』を迎え撃つ必要はなかった。避けられたはずだ。
 なのに、あえて迎え撃つという手をとった。前衛が攻撃を仕掛けないわけないしな。

「抜群の戦闘センスだな。リーダー、油断するなよ」
「わかってる」

 ……。
 間に壁を挟んでいるからな。今、油断しているな。

「──『晶壁棘しょうへききょく』!」
「グォッ!!」
「油断するなって言ったのはどちらさんでしたかっけ?」
「うるさい! 壁から攻撃が来るとは……」

 『晶壁』と『晶棘』を組み合わせてみた。
 そして、2人は致命的なミスを犯しているんだよな。

 ──後衛がら空き。

 つまり、大チャンス。そうとなったら?
 回れ右! そして? 武装しま~す。

 去年習得した、『晶装しょうそう』。
 全身鎧を作り出すことができる。もちろん、いらない部分は作らないことも可能。  
 今回は小手を作った。

 小さめの『火球ファイアーボール』──『火の玉』だったか──を連発で撃ってくるけど、残念。

「残念、──『晶盾しょうじゅん』!」

 スモールシールドを前方に多数設置した。
 オレの魔力圏内のため、自由に動かすことができる。
 隙間を通り抜けて来たものは、殴って打ち消す!

 減速なしで辿り着くことに成功した。 

 とどめ

 ──のはずだった。

 後ろから気配を感じた。十中八九、前衛2人だ。だから、『晶壁』を後方に設置した。

 ──それが失敗だった。

 フォーレンさんが至近距離から『火球』を放ってきたのだ。
 『晶盾』は全て瞬時に破壊され、咄嗟に顔を守った。
 『晶装』で全身鎧を作り出せていれば、被ダメを軽くできたかもしれない。
 でも……

 ──もう、遅かった。

 背後から攻撃を受け、倒れ込んだ。
 起き上がろうとした時には、喉元に剣、胸に槍、手のひらをこちらに向けた魔術師。
 いじめか!

「そこまで!」

 審判の声が、無情にも響きわたる。
 いや、事実、オレは負けた。
 何を悔しがる必要がある? 相手は冒険者で、向こうにとって有利な状況の中で戦ったんだ。

 なのに……。

「ハハッ。良い気分だ」

 なんでこんなに気分が高揚しているんだ?

「いや~、強いな。将来が恐ろしい」
「もしかしたら、覚醒者になれるかもな」
「もし、じゃなくて、確定でしょ、これは」

 あぁ、本当に良い気分だ。
 なんでだろうな。手応えを感じたから? 
 それもあるだろう。でも多分、答えはこれ。

 戦うのが、本気でぶつかりあえるのが、楽しかった。
 前世だと、試合になんの喜びもなかった。さっさと帰らせてほしかった。

 なんで、だろうな。

 魔法のおかげ……かな?


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