戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

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第二章 〜水晶使いの成長〜

第30話  クラス内戦闘④

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 オレの後に4戦あって、それでようやく予選は終わった。

 さっき聞き耳を立てたら(聴覚強化を発動したら聞こえただけだ)、あの、ターバが瞬殺した相手が区長の次男坊だとわかった。

 ゴース情報の、「大臣の息子」とやらは、1つ上の学年にいるらしい。

 話が逸れた。
 あのグループの話を聞いた限り、仲は良さそうだし、身分差もないらしい。
 なんの心配もなくなった。

 予選突破したのは、喋ったことのあるやつらで上げると、ターバとヤマルだけ。
 ヌーとクォーサは残念ながら負けた。
 オレはシード枠を獲得した。最後の方は、1人余るからな。

 ん……?
 1回戦目は……ターバ対ヤマルか。ターバが勝つんじゃないか?
 というより、ターバレベルのやつはそうそういないはずだ。  
 あいつも十分チートだよな。オレみたいな転生者がいなけりゃ、今世はあいつの天下かもな。

「はい、予選は無事、終わりました! みなさん、素晴らしい戦いでしたね! もちろん、定期的に開催するのでね。次勝てばいいんです」

 負けるつもりはこれっぽちもないけどな。

「さてさて、次はボードを見てください」

 さっきから……というより、最初からあったやつね。
 全員の名前が書かれており、戦った順番に書かれている。

 あれだ、トーナメント表だ。で、オレの名前は端に移されてる。
 シード枠だからね。ごめんねぇぇええ?

 あれ、ターバとヤマルの試合、もう終わってる。いつの間に……。
 そう思って呟いた。

「いつの間に試合終わらしたんだよ、ターバよ」
「──ん? 瞬殺しただけ」

 うぉわ!? おったんかい! んで瞬殺かい!

「瞬殺って……」
「左手の剣で槍を弾いて、右手の剣を喉元に突きつけた。ヤマルが走ってきたから、俺も走ってった」
「なるほど。互いに走ることで、互いの距離が一気に縮まったってことね……」

 まあ、いいか。本来なら、相手が瞬殺されてどう思うかについて議論したいところ。
 ……なんだけど、オレも瞬殺するって決めたから。もちろん、水晶は使わずに。ただでさえ、得意な棍を使ってないってのに、水晶すら使わずに・・・・・・・・瞬殺されたとなれば、どんな心情になるんだろうか?
 楽しみだぁ。…………オレ、性格悪ぃなぁ。

 と、思っていたんだけど……。意外と、受け入れられてる。
 いや、まだサヤ・ワーグしか負かしてないんだけど。それでも……。

 オレが瞬殺した時とターバが瞬殺した時で、反応に差が感じられる。
 オレが瞬殺することを、当たり前だと思われてるのか……?

 いや、評価としては、良いのよ。
 ただ……もうちょっと驚いてほしかったかなぁ。

 まあ、変えるかって言われたら、変えないけど? 
今まで通り、瞬殺していきますけど?
 さすがにやばくなったら水晶は使うけど。

「ターバ、さっきの戦い、見てなかったからなるべく細かく教えて」
「ラインとやった時と同じ感じで」
「なるほどな」

 片手で相手を牽制し、片手で攻撃。
 体勢が崩れたら、一気に攻撃を仕掛ける……か。
 この連続攻撃が痛いんだよなぁ。ヒット数はかなりあるだろうな。
 それに加えて、流れるような動きのため、止まらない。

 体力が限界を迎える、ミスをする、相手が流れを崩してくる。
 これらが起こらない限り、ターバの連撃は止まらない。
 ちなみにオレは水晶で流れを崩している。これが通用するのも今のうち、か……。

「──まあ、ヤマルが決め手に欠けているのも勝因だった」
「ふむ……。そこら辺はヤマルに言っ……」
「──聞こえてるよ?」

 聴覚強化を発動させてなかったとはいえ、気付かなかった。

 いつも唐突に来るな、ヤマルは……。気配を消すのが得意なのか?

「で、決め手に欠けるって?」
「ああ、ヤマルのは、ただ攻撃を繰り返しているだけだろ?」
「なんとなく、理解した! どこかで、流れを変える必要……それも、強い技が必要ってことね」
「そういうこと」

 ヤマルのは、弱攻撃の繰り返しだ。

 某乱闘ゲームに置いて、弱攻撃ボタンの連打で勝つには、相手に、かなりのダメージを溜めないと無理だった。
 簡単に相手を倒すには、決定的な強攻撃をどこかで入れる必要があった。

 弱攻撃の連打で隙を作り出し、そこに強攻撃を叩き込む。
 これが鉄板だ。
 まあ、強攻撃の連打って手もあったけど、隙が生まれやすいからなぁ。
 オレは強攻撃の範囲攻撃をよく使ってたけど、それは今は置いといて。

「例えば、連続で突きをしてみるとか、あと、一般的だが、薙ぐとか」
「連続の突き……乱れ突きみたいな?」
「それだそれだ、乱れ突き! あれ、ライン上手にできたはずだろ?」
「微妙だな。だいぶ感覚でやってるから……」
「──それでもいいから! 教えて!」
「……はい……」

 即席で棍を作り出し、教えることにした。
 維持魔力量を少しでも抑えるために、なるべく真っ直ぐな木の棒を探し、それを芯にして水晶で覆った。

 生成に使った魔力✕約0.05=維持魔力量

 いや、0.02とかか? 感覚だから、よくわからんが。少数第一位が0なのは、確かだ。
  


 ヤマルに軽く教えてみたがが、オレの記憶と持ち方が若干違う。
 オレの記憶だと、突きは、右利きの場合、左手を軽く握って円を作り、右手で槍を出したり引いたりする。

 オレの記憶が漫画によるものだということを思い出し、このことは忘れる。

 今は素手だから滑りが悪いけど、オレは手の平を水晶で覆っているから、滑りはそこそこ良い。

「そうそう、そんな感じだ」
「わかった! なんとなく」

 なんとなくでもいい。  
 にしても、習得が速いなぁ。
 オレ、喋っただけなんだけど。
 今からやろう……手本を見せようとしてたんだけど……。

「ちょっと、木に向かって練習してくるね」
「はいよ」
「いってらっしぇい」

 嬉々として走って行く……。  
 意外と負けたことを悔しがってはいないようだ。一安心一安心。

 

 こうやって話している間にも、試合はどんどん終わっていった。
 消化試合ばかりだった。

 スゥ・フォナイ、ターバ・カイシ、ライン・ルルクス! この3人が優勝候補です!
 ……なんてな。まあ、あの区長の息子はそこそこ腕の立つ方だったらしいが、ターバが相手じゃあな。

 初戦から優勝候補の強豪校と当たるようなもんだ。
 そこそこの成績の学校と強豪校。
 どちらが勝つ確率が高いかは、言うまでもない。  
 不確定要素──運もあるが、そこは考えない。あくまで確率だ。

 他の例えで言うと……。PvPで、ランク関係なしに対戦するようなものかな? 運ゲーじゃなく、純粋なP  SPlayer  Skillが問われるゲームな。



 あ、スゥ・フォナイ勝ったわ。  
 ……なんで呼び方がまだスゥ・フォナイってフルネームなんだろうか。
 いや、まあ、接点がないせいだけど。まあいいか。

 フム……、このまま行くと、オレと当たりそうだな。『火壁ファイアーウォール』を作り、後ろから魔法攻撃か。

 ……芸がないなぁ。
 命中性能にも乏しい。爆発効果のおかげでなんとかなってるけど。

 『火壁ファイアーウォール』も『晶弾』でなんとかなりそうだ。
 水晶の融点は、そんなに低くないからな。
 とは言え、魔力由来の水晶で、向こうも同じく魔力由来の火だ。
 溶かされる可能性も僅かにある……か。

「ターバ、スゥ・フォナイと当たって、勝てそうか?」
「…………少し厳しいな。火の壁に、範囲の広い魔法があるから」
「魔法は避けれるのか?」
「もっちろんよぉ」
「なら、もう一度問おうか。勝てるか、勝てないか」
「勝てる。ただ、持久戦に持ち込む必要があるし、どちらの体力、魔力が先に尽きるかわからないから、難しいな」
「そうか、ありがとう」

 火の壁──『火壁ファイアーウォール』か。
 火ならではの戦い方……。誰かから習ったのか?
 いや、維持魔力量はかなり多いはずだ。持久戦に持ち込む時に使うべきだな。

 保有する魔力量は、おそらく一般程度。
 1試合終わる度に息が少し乱れているのを確認済みだ。勝算は十分過ぎるほどある。

 純粋な火力面で見ると、『火槍フレイムジャベリン』なんかだと『晶弾』は溶かされそうだ。
 『晶壁』ですら、一部が溶けてたんだから。
 水晶の密度をできる限り高めたと思ったんだけどなぁ。

 相手の攻撃は『晶盾しょうじゅん』もしくは『晶壁』、『晶壁』より範囲の狭い『晶柱しょうちゅう』で防ぐ。  
 念の為『晶装しょうそう』を発動させておこうか。

 そしてこちらからは『晶弾』か『晶拳』で攻撃。
 『火壁ファイアーウォール』は真っ向から打ち砕く!

 あ。刀があるんだ……。何か面白い技できないかな? ターバ対策に。
 飛ぶ斬撃とかできたらなぁ……。水晶の刃じゃ、綺麗に切れねぇんだよな。
 刃こぼれした包丁と同じくらいの切れ味……。隙あらば練習せねば。



 にしても、張り合いがなさすぎる……。
 現在残っているメンツは左からターバ、女剣士が2人、スゥ、オレ。
 女剣士の使用武器は左から大剣、レイピア。

 大剣は重量で押し切る武器。
 レイピアは、刺突武器。

 ただ、レイピアを使う方の女剣士は、魔法の込められた短杖を装備している。
 一度も使っていないため、中身が何かわからない状況だ。
 スゥが負けてしまう可能性もある……か。

 まあ、オレ。シード枠だからスゥと戦うには、スゥが次の相手とターバを倒すしかない。
 まあ、ターバには勝てないだろうな。
 ターバは速いから攻撃は当たらないだろうし。

「はい、そろそろ終わりが見えてきました! 何人か、もう鉄級の冒険者といい勝負をできそうな人もいますね。さて、準々決勝です!」 

 時刻は3時30分。オレとターバが対戦相手を悉く瞬殺してきたおかげだな!

「ターバ、わかってるな?」
「おう! 瞬殺……でしょ?」
「フフフ……。行って、力を見せつけてくるがよい」
「なんだよ、その話し方」
「いやなに、緊張をほぐしてやろうと……」
「緊張する必要あるか?」
「ねぇな」

 そして、ターバは宣言通り、瞬殺に成功した。

 流れとしては、振り下ろされた大剣を左手で軌道を逸らし、右手の剣を喉元に突きつけた。それだけ。



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