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第二章 〜水晶使いの成長〜
第36話 木曜日
しおりを挟む「──次は武術基礎だったっけ? 魔術基礎だっけ?」
「武術基礎だったはず……うん、武術基礎だな」
少し不安になったため、『不可知の書』で一応確認したが、やはり武術基礎だった。
武術基礎か……。何をするんだろうか? 型の習得とか?
「武術基礎って、体操服着て、体育館だったよな?」
「そうよ」
「じゃあ、そろそろ更衣室行っとこうか」
「そうだな!」
授業の8分前に来てしまった……。
「あ、早いですね。それじゃ、少し手伝ってください」
先生が既に居た、ということは準備に少し時間がかかるのかな?
「何をすればいいですか?」
「えっと、マットが出ていますよね? それを体育館の壁に2枚重ねて立て掛けてください。出てるマット全部お願いします」
立て掛ける……? 片付ける、ではない。
──そこから導き出せる答えはただ1つ!
壁に立て掛けたマットを授業で使う、ということ。
そして、2枚重ね。……マットに衝撃を加えることをやる、ということ。
物を投げ飛ばす……? 武術基礎という点において疑問が残る。
おそらく壁に向けて攻撃を加えるのだろう。そして、オレたちが1年生であることから、おそらく武器はなし。
パンチ! キックゥゥ!! とでもやるのか? 勘弁願いたいぜ、それは。
「では、番号順に壁の前に立ってください」
おや珍しい。番号順とは。
個人でやることなのか。
「では、壁のマットを殴ってください」
ふむ……。この場合、誰かの顔を思い浮かべるといいんだが……。
生憎、こちらの世界にこんな時に顔を思い浮かべるほど、ウザい人には会っていない。
「一応言っておきますね。身体強化はなしで」
身体強化なし……まあ、それもそうか。
「身体強化は、基礎の身体能力に補正をかけるものなので、基礎の身体能力を向上させれば、身体強化後の身体能力もより上昇します。なので、この武術基礎では基礎の身体能力を上昇させます」
そういや、そんなことを村にいたときに聞いたな。
確かに、おそらく身体強化を発動した状態で鍛練をしても基礎の身体能力は上昇するだろう。
でも、基礎の状態で鍛練したほうが、身体強化を発動したときの身体能力が大きく上昇するのだろう。
仮に、身体強化前を1、後を2とする。
2は、身体強化前の2倍(1✕2)になるという意味だ。
鍛練により
(a+1)×2=2a+2
だが、身体強化後に発動させた場合
(2a+1)÷2=a+1/2
2(a+1)と(a+1/2)のどちらが大きいかは、言うまでもないだろう。
加えて、(a+1)の状態でも(a+1/2)より大きいのだ。
つまり……そういうことだ。
面白くないことに、ずっとマットを殴り続けた。……2時間も。
いろんな殴り方はしたけど。○連撃とか、エルボーとか。
さすがにやる気がなくなった。
初めてこっちの世界の授業で萎えた。幸先不安だな。
さてさて、お次は獣学か。
名前から判断するに、魔物に関することだろうな。
魔物の生態系、種類、見た目……etc。
つまり、生物の授業だ。薬草とかは別授業だろうけど。
着替えて、3階……武術学習の隣の教室に移動。
この授業は教科書が用意されている。しかも極太!! 国語辞典より分厚いんじゃないか? ……広辞苑ぐらい?
ざっと目を通してみたが、最後の方はオマケだな。伝説の魔物が載っていた。
イラストはあったりなかったり。イラストがない代わりに特徴が書かれていたり。
それで、真ん中の方には特殊が。
これが発行されたのは2年前だ。オレの村を襲ったあの人型スライムも載ってるかもな。
しかも、特殊や伝説の魔物は、討伐者の名前付きだ。文字通り、名を刻むな。
しかし、これはあくまで図鑑だ。
魔物と魔物の関係、魔物の生態系については詳しく書かれていない。
授業でそこら辺をやるんだろう。
「はい、では3時間目の授業を始めましょうか。1年生の間は、一般的な魔物の生態系についてやります。たまに後ろの方の特殊な魔物とか伝説の魔物についてやります。そっちは面白いと思います」
伝説かぁ。う~~ん、伝説……。
この時代に現れたりするのか? これと同じのじゃなく、新しい、伝説級の魔物が。
伝説級の魔物かどうかをどうやって測るのだろうか?
冒険者のランクと照らし合わせて測るのだろうけど、このランク制度は三賢者が編み出したと言われている。
つまり、それより前の時代にいた伝説級の魔物はどうやって測られたのか。そう、定義付けられたのか。
…………オレが考えてもしょうがない!
「それでは今日は、ゴブリンについてやっていきましょうか! あ、その教科書は自分の物なので、いろいろ書き込んでくれて大丈夫ですからね」
あぁ、貰えるのか。なるほど、余白が多いのはそのためか。
──────
ゴブリン
薄い茶色の毛
額に短い1本の角
雑食
5~10匹で群れて生活する
森や山に多く生息する
体長 70前後
重さ 40前後
強さ 10歳の子供とほぼ同程度
(※個体差あり)
──────
これが現在与えられているゴブリンについての情報だ。
「えー、ゴブリンについてですが、他にあるとすれば、個体差に関することですかね」
──────
体長 50~80
子供 50~70
成体 60~80
重さ 20後半~50
子供 20~30後半
成体 30~50
背が高く、重いゴブリンは群れのリーダーである可能性が高いが、他のゴブリンと対して変わらない。
──────
「ゴブリンについては、こんなものです。そしてゴブリンには、上位種が存在します。それが、オーガです」
──────
オーガ
薄い茶色の毛
額に短い2本の角
雑食
群れることはあまりない。群れても最大で5匹程度
森や山に生息
オスが生まれやすいため、繁殖しにくい
体長 2前半~後半
重さ 40~80
強さ 金級Ⅲの冒険者程度
──────
オーガの数が少ないのは、これが理由か。
見たことなかったけど、こんな外見なんだな。メモメモ。
それに対し、ゴブリンはメスが多いため、繁殖しやすいらしい。
放っておいたら、ねずみ算式に増えてくらしいから、1匹1匹が弱いと言っても、脅威となる。数は暴力だ。
それに、その中に特殊が生まれた場合、厄介なことに、ゴブリンが数十匹も集まり、部族を作り出す可能性がある。
もちろん、他のゴブリンをまとめ上げる特殊が生まれると限られた話ではない。
例えば、魔法を使える特殊が生まれたとする。その特殊の行動パターンは、大きく分けて2つだ。
他のゴブリンたちをまとめ上げるか、気ままに1匹で彷徨うか。
前者は、そのゴブリンが望んでいようといまいと、勝手に他のゴブリンたちが付いてくるのが原因だ。
それを受け止めず、逃げ出したゴブリンが後者だ。
崇め奉られるのを受け止めるか、受け止めないか。それだけの違いだ。
もちろん、ゴブリンの特殊はいろんな種類がある。
角が1本多い──2本あるとか、角なしなどの異形型に、魔法を使う、特殊な技術を身に付けているなどの進化型、その両方を持ち合わせた混合型。
異形型が特に生まれやすいらしい。およそ0.005……200匹に1匹だ。
そして次に多いのが、進化型だ。およそ0.0005未満……2000匹に1匹、生まれるかどうか、だ。
ただし、異形型や混合型と違い、後天的に誕生する可能性がある。
そして、混合型。
ほとんど生まれることはないと言われており、確率はほぼ0。
しかし、この混合型はなぜか強い。混合型が発見されたら、伝説級となる可能性が高い。
伝説級と言えど、ほとんどは特殊だ。
アンデッドのような希少種族は、そもそもどうやって生まれているのかが謎ではあるため、特殊ではないかと言われている。
現在でも年に数匹確認されている。どれも魔鉱級の冒険者が対応しているがな。
そして、あの、村を襲った人型スライムは……おそらく進化型だな。
そして4時間目の魔術学習では、現代魔術の体系とかいう題名だったが、魔力について習っただけだった。
5時間の自主では、ヤマルの槍の練習に付き合ってた。
ターバは他の男子と馴染んで遊んでた。
楽しそうだな、と思ってたが、他の男子たちは何故かオレに視線を……。
クラスの男子って、人間がほとんどなんだよな。クラス全体で見ても人間がほとんど……。
片手の指があれば、他種族の人数を数えることができそうだ。
言い忘れていたが、獣学の授業はとても楽しかったぜ!
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