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第二章 〜水晶使いの成長〜
第37話 金曜日
しおりを挟む1、2時間目は魔術基礎ですか。
昨日は、現代魔術の体系とか、わけわからんことやったからな。
生活魔術はさすがにやらないだろうし……。
全員が攻撃魔法を使えるわけでもない……。攻撃魔法を使えるか否かは、生まれつきらしい。
才能の類なんだろ。
更衣を済ませ、グラウンドに向かう。
余談だが、体育館が2つある理由。
それは、このように体育館を使用する教科が多いからだ。
魔法を使う場合は、基本は外でやる。
だから今、グラウンドに向かっている。
「はい、今から魔術基礎の授業を始めます。えーと、この授業では、攻撃魔法が使える組と、使えない組で別れます。攻撃魔法が将来的に使えるのであれば、使える組に入ってください。それでは、僕の右側に使えない組、左側に使える組が来てください。それでは、どうぞ」
使える組と使えない組になんで分ける? 授業内容が違うのか?
てっきり、攻撃魔法への対策をやるものだと思ってた。
「はい。では使える組の中で、今は使えない人はどのくらいいますか?」
何人か手が挙がる。
一番後ろに並んでてよかったぜ。全員のことが見える。
ふむ……。
使えないのは、使える組のおよそ1/3ちょい、か。
「では、今手を挙げた数人は、この短杖を取ってください。込められた魔法は『水盾』です。そう、皆さんに習得してもらうのは、これです」
『水盾』も、攻撃魔法の内だ。
生活魔術ではない、戦闘で使える魔法。それが、攻撃魔法。
攻撃はしなくても、攻撃魔法……ややこしいな。生活魔術ではない魔法が攻撃魔法……?
戦闘魔法でいいじゃねえか。
「先生!」
「なんですか? スゥさん?」
「私……私とラインは属性特化型です。それ以外の魔法は……」
何度か親しく話をした結果、ついに呼び捨てになった。
「で、あれば……同じような魔法を作ってください。スゥさんは火の盾を。ラインくんは水晶の盾を。……もう作れたりしますか? いや、これは後でいいとして……さて、使える組は行動に移ってください。では、使えない組は──」
オレは……オレとスゥは、グラウンドの……校舎と反対側の隅っこにいた。
「で、ライン。盾は作れる?」
「もちろん。ってか、見せただろ?」
「そうだっ……け?」
「まあいいや。ほら──『晶盾』」
詠唱はいらないんだけど、他の奴らは詠唱がいるらしいから、一応詠唱はする。
それっぽいし、なんか漫画の世界に入ったみたいな気分に浸れるしな。
それと、『晶盾』は、小盾の大きさだ。
これだと、複数個展開でき、それに、浮かせられるから便利なんだ。
大盾も作れるが、動かしにくいから、作っても1個だな。
いつかは大盾でも、何個も操ることができるようになれるのかな。
「これか……。火であったかな?」
「いや、属性特化だろ? 想像次第でできるんじゃねぇの?」
「その想像がねぇ……。火の属性に特化したから、もともとある火の魔法を覚えればいいって考えが染み付いてて……」
「なるほどなぁ。ま、やってみな」
言い訳だよな?
う~~ん、これは……出身世界の違いによるものなのかな?
関係ない気がするけどな。
「──いや、火の盾を作る魔法は既にあるから、できるよ?」
「あ……そう……。じゃ、どうぞ」
「──『火盾』」
スゥの突き出した右手の先に、火でできた円盾ができた。大きさは小盾だ。
やっぱり、最初は円状の小盾なんだな。
逆三角形とか四角形とか五角形とか、そこら辺は後々だな。オレはできるけど。
「んじゃ、形とか大きさをいじってみるか」
「それじゃ、お手本見せて?」
「はいよ」
さっきから出している『晶盾』を、逆三角形にしたり、四角形にしたり五角形にした。
その後、それぞれの形を大盾にした。
「よく、なんでもないような顔でやるわね……」
「──なんでもないことだしな。んじゃ、お手本としてそれぞれ出しておくから、それ見て作ってみな」
オレは、いろいろな種類の『晶盾』を作り出し、放置した。
円盾、逆三角盾、四角盾、大きいの小さいの……。
この後は獣学、午後に薬学だから、あるだけの魔力を使っても問題ないだろうと考えた。
この授業で……この1時間目で魔力が底をついても、昼頃には全回復しているだろうからな。
「もう少し……もう少し…………!」
お、できたっぽいな。
「おぉ、大きい四角盾か」
なんて言ったか……。タワーシールド……だっけ?
うん。地面に底が着いた状態で、高さが首まであるから、間違いない。
「おめでとさん、スゥ」
「ありがとう、ライン!」
「これで、粗方終わったか?」
「う~ん、そうね」
さて……。今は2時間目に入ったばかりだ。
「おい、肩で息してるけど、大丈夫か?」
「ごめん……少し……っ魔力を……使いすぎたみたい……」
「そうか、休んでなよ」
「ラインは……なんで……平気なの?」
「あ~、消費したのは、維持魔力だけだからな。生成魔力よりも消費量は少ないし」
……大丈夫だろうか?
クラス内戦闘の時は、ただ費用対効果の悪い戦い方してるなと思ったが……。
「スゥは、もしかして魔力が少ないのか?」
「ふぅ……。うん、そうよ」
持久走が苦手、みたいなものか。
修行を重ねると魔力も増えるんだけどな。元の量が少ないんじゃ、修行する気も起きないか。
「今まで、あまり使うことがなかったせい……なのかもね」
「なんで使わなかったんだ?」
「まず、火の魔法は、狩りには向いていないでしょ? だって、相手を焼いちゃうんだから」
「そりゃな。その場で食べる場合には楽な……いや、血抜きをせずに焼くと……」
「そういうこと」
激まず飯の誕生だな。
血があっても、別に食べれられないことは……いや、無理か。
イヌイットだって、さすがに血抜きはしてアザラシを食べるだろう。……たぶん。
「なるほどな。火の生活魔術は、ほとんどが魔法具で代用できるようになってるしな。オレは狩りに行けたし、冒険者の訓練相手になってたからな。この水晶を使う機会は存分にあった」
リーダーさん、オーカーさん、フォーレンさん、たまにラーファーさん。
そこに狩りを含めると……。1日4、5時間は鍛錬だったな。
学校があるときは、1時間と少しだったけど。
雨の日、雪の日、地面が悪いときは、やらなかったな。
……足音。こちらに向かって来ている。
なんだ、先生か。
「私も……冒険者さんに相手してもらえばよかったのかな」
「……してもらわなかったのか?」
「私、人見知りで……」
「……」
「──あれ、終わったんですか?」
「!!」
「終わりましたよ」
「それじゃ、見せてください」
スゥは、先生の接近に気づいていなかったのか。
聴覚強化は、体操服で行う授業のときは基本発動させてるからな。気配も感じたし。
「……ラインくんは気づいていたんですか?」
「え……まあ、音が聞こえたので……」
「……なるほど、聴覚強化が使えるんですか。器用ですねぇ」
「そういう先生こそ、魔力探知……魔力眼が使えているじゃないですか」
魔力探知を発動させると、相手の魔力が見える。
魔力探知を発動させていれば、目の部分だけ濃いく見えるし、聴覚強化を発動させていれば、耳の部分が濃いく見える。
鏡に映っていても同じだ。
「スゥは使えないのか?」
「……いや、まだ……」
「使える人はそんなに多くないので、スゥさんは気にしないでくださいね? ラインくんが天から何物も与えられてるだけだと思うので。ターバくんもそうですね。ほら」
先生が指差した方向にあるのは、使えない組がひたすら魔力による攻撃を避け続けている光景だった。
「あれは……『風弾』? いや、それよりも軽い……」
「そうです、ラインくん。軽い『風弾』です」
「え、そのまま?」
「ライン、軽いって?」
「威力が全然大したことないってこと。ほら、重い拳とか言うだろ?」
「……なるほど」
「今は、5人1組になってもらって、一人があの装置に魔力を注ぎでいるんです」
へぇー。シューティングゲームみたいだな。
「狙いはどうしてるのですか?」
おい、スゥさんや。そんなの、魔力の供給源が定めてるに決まって……
「ランダムです」
この瞬間、オレの中のあの装置に対する好奇心が、最初からなかったかのように消え失せた。
狙いを自分で決めることができないなんて……そんなのただの供給源じゃないか!!
「はい! ではこれで、今日の魔術基礎の授業は終わりです。あと、お知らせです。4、5時間目に予定されていた薬学なんですが、自主になります。……というより、薬学は本来、2年生からやるものです。時間割表のミスでした」
うぇ~~~い!!
────────────────────
変更前
金 1魔基 2魔基 3獣学 4薬学 5薬学
変更後
金 1魔基 2魔基 3獣学 4自主 5自主
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