戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

文字の大きさ
50 / 168
第二章 〜水晶使いの成長〜

第49話  夏休みも休まず②

しおりを挟む

 海。
 数多の生物が生息し、陸より広く……そして深い。

 ここまで聞けば、海に来ているようにも感じるだろう。
 でも、オレの目の前にあるのは……焼き魚。そしてここは、学校の食堂。

「海……行きてぇなぁ……」

 魚を見て抱いた感想がこれだ。
 この世界にも海は存在している。でも、めっちゃ遠いんだよなぁ。
 日本とは違い、ここは内陸国だ。北の方に湖があるだけだ。

「ははは……。海に行くには、金が多くかかるし、日帰りで行けるような距離でもないからね」
「ミルの言う通りです。行きだけで一日が消えます。それなら、川で水遊びをしている方がいいです」
「……プールがある」

 ロイズの言う通り、プールはある。
 でも、遊戯用プールではない。鍛錬用だ。

 かく言うオレも、ミルに選んでもらった水着で利用している。





 一週間前。

「ライン、いる?」

 水晶を使って、独りで遊んでいたところに、聞き覚えのある声がやって来た。
 ヤマルだ。
 表札は裏返しにしていないから、いることはわかってるだろうに……。

 何はともあれ、出るとしよう。

「ああ、どうした?」

 ヤマルは一枚の紙を持っていた。

「これなんだけど……」
「あぁ、とりあえず、上がってくか? 菓子はないが、飲み物ぐらいはある」

 とりあえず、礼儀だ。
 それに、話が長くなりそうだったし、なにより、目が「入れろ」と言っていた。

「それじゃ、ありがたく……」

 2人分のコップに冷えた茶を入れ、持っていく。ジュース? 買うのを忘れてたんだ。

「ジュースじゃなくて悪いな」
「いや、そんなことないよ」
「さて、本題は?」

 検討はついているがな。内容は知らないけど。

「これ!」

 そう言ってヤマルが差し出した紙には、こう書かれていた。


────────────────────
鍛練用プール解放

 水深 150センチ~300センチ
 長さ 50メートル

 使用時間 10:00~17:00

 水着は各自用意
 魔法、身体強化、武器の使用は自由
 各学年、プールは原則別とする
────────────────────


 余白部分は全部絵だった。
 紙の無駄遣いだと思った。

「なるほどなるほど。で、これがどうかしたか?」
「これ、一緒にやろ? これをすると、槍を突き出すときに勢いがつくらしいし」

 なるほど。
 オレの武器も突くものだからな。

 それで誘ってきたってわけか。
 ヤマルに槍を教えているのはオレだしな。筋トレにも最適だし、いいかもな。

「たしかに良さそうだな。ただ、行くなら来週からだな。水着持ってないし」
「わかった! じゃーね。帰る。お茶ごちそうさま!」
「おう!」

 颯爽と帰ってった。

「――あ! 他に誰か誘った?」
「リーインを……」

 あーー、あのレイピア使いか。

「で、3人か?」
「いや、断られた……。で、ラインにはターバを誘ってほしい。ターバの部屋がどこか知らないし」
「あー、わかった。ちょっと待ってな。今聞いてみるから」

 『通話トーク』でターバに連絡する。バイト先同じだし、暇だろ……どうせ。
 やはり、ものの数秒で繋がった。

『あーー、ターバ。唐突で悪いけど――』
『プールの話、か?』
『大正解! で、返事は? ヤマルもいるが』
『あぁ、行く。水着はあるし』
『それじゃあな』

 いいねぇ、話が早くて。
 『通話トーク』だと心の中まで突き抜けるんじゃないかと思ってしまうぐらいだ。
 普通に話すときも話は早いがな。

「その反応だと、大丈夫そうだね」
「ああ。とりあえず、水着は持ってるか?」
「え、うん。前に領都に行ったときにね」

 ちゃっかり買ってたか。
 水遊びできるスポットは近くにないのにな。なぜ買おうと思ったんだか。

「じゃ、ターバと先にやってるか?」
「いや、来週から、3人で――」
「ん? どうした?」
「リーインから『通話トーク』。出るね」

 このタイミングでリーインから? プールのことか?



 話は終わったようだ。あの顔だと、いい知らせだったようだ。

「リーインも来れるようになったってさ!」
「そうか」

 日曜日にでも領都に行こうかな。
ミルがいることだし、コーディネートしてもらおう。





 そして日曜日。

「いらっしゃー……なんだ、ラインか」
「よ、ミル。水着を選んでくれ」
「あー、はいはい。それでは、ご案内しますよ」

 案内された先には、水着が大量に並べられていた。って、水着コーナーなんだから当たり前か。

「さて、所望の水着はどのようなものでしょうか?」
「そうだな……上下とも欲しい」

 ラッシュガードだったか。
 あれがあった方がいい。なんとなく、だけど。

「では、少々お待ちを…………。はい、ではまずこちらへ」

 オレにどんなのが似合うか考えていたのだろう。さすがはミルだ。
 コーディネーターの才能あるな。なんで冒険者学校に来たんだろうな。聞かないけど。

 にしても、制服が似合うな……。
 こっちでは、服屋の店員は制服なんだな。BARみたいだ。

「まず、こちらから少しでも気になったものをお選びください。何着でも大丈夫です」
「ああ……。敬語を使われるのは慣れねぇな……」
「今は仕事中ですので」
「わかってるって」

 先生を相手にするときの敬語と同じか。
 敬語は使うが、敬意を払っているかと言われればう~~んとなるような。
 ノヨの喋り方もこんなだがな。



 さて、とりあえず数着選んでみたが……デザインに微妙な違いがあるだけだからな。
 ほとんど変わらない。

 オレが選んだのは、黒を基調としたラッシュガードを3つ。それぞれ、白、緑、青のアクセントが入っている。
 そして、白を基調として、金のアクセントが入ったもの。

「そうだ、予算はいくらぐらいでしょうか?」
「そうだな……」

 バイトで月に銀貨と半銀貨が1枚ずつ。
 半銀貨は家に送るように保管しているから、実質銀貨1枚。

 今は7月だから、もともと持っていたのと合わせて銀貨5枚と半銀貨2枚。前世での価値観だと、5万2千円。

「1着あたり、大体いくらぐらいになる?」
「半銀貨1枚前後ですね」

 ふむ……。服となんら変わりはない、か。
 ……あれ、水着の撥水性はどうやって再現してるんだ? ま、難しいことは考えない!

「そうだな……。水着を上下合わせて2着。そして、夏用の服を上下3着ずつ選んでもらおうか」
「かしこまりました。それでは、水着の下を選びに行きますか?」
「ああ、そうしよう。これは、持っておいた方がいいのか?」
「そう……ですね。万が一に備えて持っておいた方がよろしいかと」

 万が一ってのは、他の客に取られることだ。同じ見た目、サイズのは2着ほどしかないからな。




「ありがとうございました」

 もう昼を回ってしまったのか。

 だが、ミルのおかげでいい買い物ができた。
 選んだのは、白に金のラッシュガードと、黒を基調に赤のアクセントがある水着。
 そして、夏用の服を上下3着ずつ。

 残金、銀貨4枚と少し。

「さて、何か美味いものでも食べて帰ろうかな」



 ここにしよう。 
 オレが入ったのは、軽食屋だ。
 喫茶店と言った方がいいかな。中に入り、サンドイッチを注文した。
 この世界に伝わっているようだ。

 この店に入って、わかったことは2つある。
 あまり繁盛していないこと。時間がすでに1時を上回っている、時間の問題だろう。
 そして、ここから見える範囲の店員が全員、エルフであること。



 エルフと人間の区別は難しい。
 耳が尖っているのがエルフ。そうでないのが人間。
 だが、尖っているとは言え、髪に隠れてしまうほどでしかない。
 身体強化、覚醒したときに、誰の目にもわかるように伸びるらしい。

 人間と鬼の区別もわかりにくいが。
 だからこそ、『人』と、一括りにされている。 



「お待たせいたしました」

 そして、サンドイッチが運ばれてきた。
 パンは焼けている。飲み物はコーヒー。





 馬車乗り場に行くと、ちょうど馬車が出るところで、滑り込みセーフだった。





 そしてその翌日――月曜日

「やっほい!」

 更衣を済ませ、プールに行くと、プールサイドにはハイテンションのヤマルと、リーインの姿があった。
 そして、その傍らには、槍、棍、レイピア、双剣が用意されていた。プール使用者用のものだ。

「待たせたか?」
「ちょっとね」

 普通そこは、「ううん、全然」とか「今来たとこ」と言う場面では?
 正直でよろしい……のか?

「悪かったな。さて、早速――」
「待って! 準備運動を!」

 プールに飛び込もうとしていたところを、ヤマルに止められた。別にいいじゃねぇか。

「……はい」

 逆らえなかった。


 
 軽い準備運動を終わらせ、プールに飛び込む。
 他に人はいないからこそできる。そして、真ん中まで武器を持って泳ぐ。

「それじゃ、ライン。よろしく」
「おう!」

 プールの底に潜り、槍を構える。『通話トーク』を発動させているため、会話は問題ない。念話ができるからな。

 

 ヤマルの槍さばきを見たが……。
 水中で見て、ようやく違和感に気付いた。

『ヤマル、ちょっと出ようか。気付いたことがある』
『わかった!』

 呼吸はできるようにシュノーケルみたいなのを着けている。

 プールから出て、ヤマルから槍を預かり、代わりのものを渡した。

「ヤマル、これを使ってみてくれ。使い方は今までとは変えなくていい」

 

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

処理中です...