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第二章 〜水晶使いの成長〜
第50話 夏休みも休まず③
しおりを挟む「これ、使ってみてくれ」
オレが手にしたのは、双頭槍。
両端に穂が付いた槍だ。
「双頭槍……?」
「ヤマルは、よく槍を回すだろ? 双頭槍だと、今までの半分回すだけでいい」
「なるほど……。この武器、聞いたことしかなかったから……」
「まぁ、今日は突きの練習だから、必要はないか」
「そうだね」
そして、双頭槍の片端を消した。
「消えっ……え?」
「水晶で作ってただけだ」
槍の片端――何も付いていない方――に水晶で穂先を作ってくっつけただけだ。
「さ、もういっちょ行くか?」
「うん」
こうして、またプールに潜り、突きの練習を再開した。
水の抵抗がいい。気に入った!
ターバたちも剣を振り続けている。
ただ、ホースが邪魔になるせいか、息を止めて潜っている。
体力も付きそうだな……。やらないけど。
……そろそろいろんな動きをやってみようか。
『ヤマル、オレは突き以外の動きをやってくる』
『わかった』
『1つ。突くときに、体重を乗せきれていない。普段はそれでいいかもしれないが、体重を乗せるとより重くなる』
『うん、わかった』
それだけ言って、とりあえず上がった。
そしてホースとかを全部外に出し、再び潜った。もちろん、水中ゴーグルは着用している。
さて、始めるか。
身体強化、水晶なしで。
薙いだり、突いたり、振り回したり、回転させたり。
蹴ったり、殴ったり、前後左右に跳んでみたり。
時たま水上に顔を出し、酸素を補給したり。
やっぱり、水中だと大きく動くことができないな。
脳が考えている動きと、現実の動きに大きな差が生まれる。
それに、時々気を抜くと、底から足が離れてしまう。
さて、だいぶ慣れてきた。そろそろターバが、「ライン、ちょっと戦おうぜ」とでも言ってきそうな頃合いだ。
『ライン、ちょっと戦おう!』
……ヤマルだったか。
『ああ、いいぞ』
『戦うって言っても、その場で突き合うだけでいい? 時間内にどれだけ相手に当てられたかで競う……』
『ああ、とりあえず、上がって話そうか』
プールから出ると、なぜかヤマルが槍を持って構えていた。
「――で、この距離で立って、互いに突き合う。ほら、構えて」
とりあえず、ヤマルの指示通り構える。ルールは理解できた。
「……わかった? よくお兄ちゃんとやってたんだけど……」
「ああ。大丈夫だ」
ヤマルには兄がいるのか……どうでもいいけど。
「それじゃ、潜ろうか」
「あ! カウント、どうしよう?」
考えてなかったんかい!
「どっちかがしんどくなったらでいいんじゃないか? しんどくなったら浮上すれば」
「浮上中は攻撃禁止ね」
「わかってるて」
みなさんご存じの通り、オレは常識のある人間なのだ。
プールの中心まで泳いだ。
人、全然来ないな……。オレたち4人に、隅っこに5人。
ありゃ、涼みに来ただけだな、絶対。
武器を持つ手より、口がよく動いている。
「3……2……1……0!」
息を大きく吸い、潜り、足をつける。筋肉が多いから、簡単に沈む。
『3……2……1……GO!』
言ったのは、もちろんオレだ。GOが開始の合図だってのは、理解できるだろう。
カウントしたんだし。
合図と同時に腰を落とし、突きをひたすら行う。もちろん、防御もありだ。
やっぱり、水の中だから重いな……。水晶で生成すればもう少し軽くなるんだが……。
槍の材質は、穂先以外は木製。
コーティングされているのか、水に漬けても大丈夫らしい。
どんな技術なのか知らないが、それが普通らしい。
それに対し、棍は鉄製。これも、謎の技術で木製とほとんど同じ重さだ。
仕組みはまるで謎。調べたこともなかった。
突く。太ももに当たる。
突かれる。寸でのところで防ぐ。
突く。防がれる。
すぐさま2撃目を放つ。右肩に当たる。勢いを少し流される。
突かれる。
防ぐ。
2撃目。突きで返し、防ぐ。
3撃目。流し、横向きに弾く。重い。
そんな攻防が1分ほど繰り返された。そろそろ息が……。
一回、何秒耐えられるかやってみたが、2分半だった。
もちろん、水の中に顔を漬けただけの状態だ。
そして、およそ10秒後。遂に、ヤマルが浮上した。
オレも上がろ……。さすがに無理だ。
「ぷはっ!」
と、可愛らしい声を出したヤマルに対し、オレは
「ふーーーー…………はーー」
無言。「ぜはっ!」とか言える雰囲気じゃないし、必要なかったし。
酸素は美味しく頂いたけども。
さっきの結果は、当たった数、13。当てた数、21。よって、勝者はオレ。
「身体強化なしで、水中なら勝てると思ったんだけどなぁ……」
「でも、そこそこいい勝負だったんじゃないか? 攻撃の数はヤマルの方が多かっただろ?」
「カウンターを食らうんじゃ、わけないよ」
「今はそれでいいと思う。手数は大いにこしたことはないからな」
クリティカルヒットか、ミスか。
つまり、ダメージ数が0か10の技があるとする。そして、一律に2の技がある。これは連撃タイプ。
どちらを使うかと言われれば、オレは後者だ。
理由としては、まず、連撃だと、相手が攻撃できなくなる。
相手に攻撃されることは、連撃が途切れることとほぼ同じだ。関係は、ニアリーイコールで結ぶことができる。
そして2つ目。
前者は、ミスをした場合、大きな隙が生まれる。大抵、大振りな攻撃だからだ。
結果、技を出す前に攻撃され、技そのものが出せなくなる可能性がある。
もちろん、前者を使うべき場面もある。
例えば、相手が身動きができない場合。
これは、例えミスしても、反撃を受けることはないし、相手に恐怖を与えることができる。
じわりじわりと長引く生。……オレはサクッと殺すがな。多分。
「ライン、明日は空いてる?」
「いや、バイトだな。休みは日曜日と木曜日だからな」
今日は木曜だから、明々後日が次の休みということになる。
案外楽なんだよな。魔物も野盗も現れないし。
魔物は……なぜか襲ってこない。普通なら襲ってくるらしいが……。
「じゃあ、日曜日、ちょっと付き合ってよ」
「いいけど……何をする気だ?」
ま、話の流れからなんとなくわかる。きっと――
「槍の使い方、重い突きの練習」
――やっぱりな。
「ん、いいだろう。ただ、武器は普通の槍と双頭槍の2つを借りておけよ」
「わかった。ラインのも借りておくね」
「……いや、大丈夫だ。時間はほぼ同じだろうしな」
「わかった。また細かいところは『通話』で話そうか」
「ああ、そうしよう」
この夏休み、ヤマルの練習にずっと付き合わされるんじゃ……。
でも、断れないし、断る理由がない。
それに、嫌じゃない。
オレの鍛錬にもなる。一石二鳥と思うことで納得しよう。
ターバとリーインは……ちょうど上がるところか。
「ヤマル、ライン聞いて~~。ターバが異常~~」
そんなこと、今に始まったことじゃないだろ……。
「大丈夫、ターバだけじゃない。それに張り合うラインも異常だから。なんなら、魔法があることを考えるとラインの方が異常だから」
「つまり……?」
「世界は広いねってこと」
「……なるほど……?」
なんでオレとターバを見て世界は広いという結論に至るのか、学会でも開いて議論したいところだ。
別に異常ではないと思うんだが……。
だって、オレだけ、もしくはターバだけだったら、異常かもしれない。
でも、実例が2つ、ここにある。
それに、身体強化では覚醒に及ばないという理は破ることができていないんだし。
それができてたら異常かもしれない。
だが、その理の中にいる以上、異常ではないと言える。
はい、証明完了!
「さて、そろそろいい時間だ。帰るか」
「「そうしよう」」
更衣室で制服に――学校の施設を使うときは、制服を着ないといけない。はっきり、面倒くさい――着替え、武器を片付け、各々の部屋へ帰った。
ちなみに、更衣室は試着室みたいな作りだ。
プライバシーへの配慮……素晴らしい。
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