戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

文字の大きさ
53 / 168
第二章 〜水晶使いの成長〜

第52話  最強決定祭②

しおりを挟む

 へラリア冒険者学校最強決定戦。通称、最強祭。
 王都を含め、16の領からなるここ、へラリア王国。
 各領に1つある冒険者学校の各学年から上位2名を選び、行われるトーナメント戦だ。



 ハーマル領(ここ)
 シクレス領
 イービス領
 シヴィル領
 シャーラ領
   :
   :
   :



 各領、名前は4文字からなる。理由は不明。
 ただ、領名は領主の家名となっている。家名が先か、領名が先か。

 領名は三賢者によって統一されたらしい。
 あれか? 上位者から貰う名前が名誉の証って考えか?
 中臣鎌足が中大兄皇子から藤原の姓を貰ったみたいな。それと同じか?



 馬車に乗って旅を続け、6日が過ぎた。
 そして、7日目の今日。オレたちは、ようやく目的地に到着した。

「ここが王都だ。君たち3人は初めてか? 私とリュース、ピュウは去年も来たからね」
「へー、そうなんですね!」

 めっちゃどうでもいい情報。

「結果はどうだったんですか?」
「1年のときは、準々決勝まで残ったな。2年のときは初戦敗退さ」
「俺はどっちも準々決勝まで残ったぞ」
「私と戦っていれば、私が勝つがね。だからこそ、生徒会長をやっているのだけど」

 だからこの人が生徒会長なのね。
 にしても、強さで生徒会役員を決めてるのか? いつか問題が起こるぞ。

「私は……決勝まで行ったなぁ」
「「…………」」
「……何、その間!?」

 いや、この流れでそんなこと――

「いや、この流れでそんなこと言われ――」
「――この流れ・・・・だと?」

 あーーあ。エイリュース先輩が生徒会の2トップの地雷を踏んじゃった。
 覚醒者ともなると、圧がすげぇな。
 鬼神みてぇだ。鬼神を見たことないからなんとも言えんが。

「――はいはい!」

 パンパンと乾いた音が響いた。
 教頭先生の(しわしわの)手だ。

「ここから先はいろんな人たちに見られることになります。貴族の方、冒険者の方、近衛騎士の方などなど。大会にいたっては、王族の方々や大臣、近衛騎士団長、副団長まで観戦なされます」

 あー。前世でよく言われたやつだ。「貴方たちは学校の代表です」だろ?
 あんま好きじゃないんだよね、この言葉。

「悔いの残らないような行動をしてくださいね。昔、騒ぎを引き起こした冒険者がいましてね……。その方々は王都から追い出されましたよ? 他にもいろいろ……」

 ん? 騒ぎを起こして追い出された冒険者?
 それ、カグナって名前なんじゃ……? 

 

 カグナってのは、白金Ⅲの冒険者チーム、『岩壁の盾』のリーダーだ。
 『岩壁の盾』は、オレの故郷の村に派遣されたチームだ。
 つまり、知り合い。

 予想以上に語られてるんだな……。一体全体、どんな騒ぎを起こしたんだか……。





 オレたちは門の前で馬車から降り、検査を受け、王都の地に足を着けた。

 王都は……領都とは比べ物にならなかった。
 その理由は、おそらく人。とにかく多い。

 それでいて、いるのは『人』。
 人間の他に、鬼、エルフ、リザードマン、etc……。大多数は人間だが。

「さて、さっそく宿に向かいましょうか」


 
 オレたちが通されたのは、ホテルだった。
 そう、ホテル。
 大理石の床に、カーペットの。前世でよく見たホテル。

 そこの3階に、部屋があった。

「204号室から208号室が、お客様方のお部屋となります。では……」

 スタッフは、そう言うと恭しく一礼し、去って行った。

「デミラス、リュース、エイリュースは204号室。ライン、ターバは205号室。クェイサー先生、キルサー先生は206号室に。ピュウは207号室。私は208号室にいます」

 おいおい。女は1人部屋かよ……。
 教頭と寝なさいよ。先輩と教頭が相手だからそんなこと言えないけど!

「今日は部屋でゆっくりしていてください。夕食は、6時半に、1階にある食堂の入り口に集合してください」

 現在、15時ちょい過ぎ。3時間後。

 ……おい。馬車から降りて王都に入っても暇なのかよ。

 ……先生に『通話トーク』が入ったようだ。

「全ての選手が到着したので、本番は明日となりました」

 決まってなかったんかい! いつかポロッと口から失言が出てしまいそうだ。




 
 その日、食堂にてトラブルが発生した。トラブルと言えるほどのものではないか。

 オレたちは食堂で優雅に(笑)食事としていたんだ。するとそこに――

「――おやおや、その制服はハーマルの……」

 そんなテンプレ通りのセリフと同時に現れたのは……知らない人だった。
 だが、会長と副会長、ピュウ先輩は知っているようだ。

 ここに先生たちはいない。
 明日が本番となったため、打ち合わせが入ったそうだ。つまり、ここには生徒6人しかいない。

「へ~~ぇ、そいつらがお前らの後輩?」
「ああ、そうだ。うちの可愛い後輩たちだ」

 褒めても何も出ませんよ?

「ふ~~ん。今日のために、俺たちは新年度から限りなく実戦に近いトレーニングを行ってきた」
「それはこちらとて同じこと」
「いやいや、俺が言いたいのはな……」

 あーー。展開は読めたぞ。
 どーせ「去年よりも粘れないぞ」とか「痛みで泣かないようにな?」だろ?

「今年も優勝は俺たちが貰う。今のうちに――」

 チッ! 後ろの取り巻き共のニヤニヤが苛立たしい……! 後ろに5人。これがこの学校の選手か。

「――帰りの荷造りと、負けた時のハンカチを数枚集めておくんだな!」

 ハッハッハと笑いながら去って行った。
 取り巻き共も、バカにした目でオレたちを見て去って行く。

「お前らが1年代表か。先輩方直々に鍛えられた俺たちに、勝てる希望を抱――」
「夢を見るなら、布団の中にしてくれ。……雑魚がよ」

 ついつい心に思ってたことがーー。
 あーー。ふくすいぼんにかえらずだーー。

「なんつったてめぇ……。楽にくたばれると思うなよ?」
「そっとこそ、うちの先輩方を笑って、楽にくたばれると思うなよ?」

 魔力を少し放出品する。
 すると、びびったのか、5人の後を追いかけて行った。

「ターバ、今の奴ろ…どう思った?」
「ん? 雑魚だろ?」
「おいおい……。あそこの学校は規則が無いに等しい代わりに、強いんだぞ?」

 生徒会長がプチトリビアをぶち込んできたが、変わらない。

「いや、だから……」
「「雑魚ですって」」

 2人口を揃えての雑魚宣言。
 まあ、覚醒者には勝てないけど。覚醒者でないあれには勝てそうだ。
 この目で見て、感じて、判断したからな。

「そうか……。まあ、頑張って」
「ところで、なんで目をつけられてたんですか?」
「俺たちのせい……だよな」

 ん? 俺たち……ということは、3年生か?

「あいつら──シヴィル領の冒険者学校は、さっきも言った通り、強い。国内最強の学校なんだ。覚醒者も、年に最低でも10人は排出されてる」
「その対極に位置するのが、ハーマル冒険者学校だ」

 あーー。なるほどなるほど。つまるところ、ただの弱いものイジメね。





 そして、翌朝。

『では、陛下より、開会宣言です』
『うむ。よく集まってくれた、未来の金の卵たちよ。お主たちの勇猛果敢な戦いを期待しておるぞ』

 へー。あれが王様か。
 イメージ通りの年齢だな……。

 ただ、唯一イメージと違っていたこと。
 それは――ファンキーな点。

 まず、肉体。引き締まっている。腹から上しか見えないが、それだけでも引き締まっているだろうってのはわかる。

 長生きしそうだな。余計なお世話か。

 で、左右に控えているのが王子、王女かな。

 王様の、向かって右側に男が2人。左側に女が1人。

 王子は、2人とも20歳辺りだろう。王女もそれぐらいか、もう少し若いか。

 まあ、美男美女で羨ましいことで。後ろに王妃らしき影があるけど、見えねぇな。
 魔力探知の一歩手前──視力強化を使えば見えるかもしれないけど、禁止されてんだよな。
 使ったらバレるし。 


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...