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第二章 〜水晶使いの成長〜
第54話 最強決定祭④
しおりを挟むエド・ステイホウ……この、目の前の長髪のイケメンが……か?
「僕はエド」
「ラインだ」
「「よろしく」」
さっきの野郎とのギャップで……すんごいまともな人間に見える!!
『では、第2戦を初めていきましょう! ハーマル領、ライン・ルルクス。シクラス領、エド・ステイホウ』
シクラス冒険者学校。
一応、男子校だ。ただ、隣に女子高のイービス冒険者学校が存在する。
2校は繋がりが強く、週一で交流があるそうだ。現に、代表同士だけでなく、生徒同士で親しそうだ。
うーむ……。さくっと倒すべき、か?
できればそうしたい。が――
――こいつ、そこそこ強い。
ターバでも、勝率は半分以上あるが、100ではない。
まだ戦っていないからなんとも言えないが。
雰囲気、佇まい、視線、注意力。
それら諸々を無意識のうちに感じ、判断しているのかもな。
『……開始!!』
武器は長剣。隠し武器は……見た感じなし、か。
短杖があれば、魔力探知でわかるんだが、引っかからない。魔法適性もない。
武器の構えは……あれ、構えと言えるのか?
剣を持った右手はだらんと垂らしている。
長髪、垂れ目。全部斜め下向きだ。
だが、芯は真っすぐだ。
オレの武器は棍。
本番前は刀も所持しようと考えていたが、まぁなんと持ちにくいこと。
持つならどっちか1つだな。
で、どちらを選ぶかと問われれば、答は棍だ。
彼我の距離、およそ40メートル。魔力範囲外だ。さて、どうしようかね。
初手は定番のこれ――『晶弾』で行こうか。
とりあえず、3つでいいかな。
『晶弾』を3発生成し、飛ばす。
身体強化は発動させていない。これが普通だと思わせるため、次に放つ『晶弾』に対し、油断させるため。
だからいつもと違い、距離は詰めない。
エドは一振りで『晶弾』を破壊した。その一振りはとても速かった。
身体強化を発動し、距離を詰める。
そして、互いの武器が届く距離になった。
棍と長剣が交差する。互いに、突きを繰り出した。
その結果、武器の先端同士がぶつかり、拮抗している。
ただ、本来の使用用途の関係で、オレに分がある。
「へぇ! さっきの試合でも使ってたけど、これが君の魔法か。近接戦闘術も同時に修めるだなんて……。属性特化でも、かなり難しいって聞いていたけど」
「そこは、天性の才と納得しといてくれ」
「いや、魔法はかなり疎かだ。無駄な手数だろう。悪いが、ここで君は退場だ」
「いや。……勝つのはオレ。お前は……そうだな……10秒後には倒れ伏す」
「なんだい? 予言者だったのかい?」
「今にわかるさ」
エド。ちゃんと引っかっかてくれて助かったよ。
そして、次の攻撃が丸見え。予備動作を隠すつもりがないように見える。
忠告は……これが終わったあとにするとしよう。
敵に塩は送りません。
回復術師が待機している。
傷跡が残ったときのために、服で隠れ、かつ、かっこよく見えるところに傷はつけるからな。
許せ、エド。
「じゃあな、ライン」
「ん? おう」
すべて受けてやる。10秒間、オレはここから動かない!
そうと決まれば早速、『晶装』で全身鎧を生成だ。
エドは長剣《ロングソード》を握りしめ、踏み込む。
ターバに匹敵しそうな連撃だな。ターバにも成長の余地があるということか。
……10
だが、オレの鉄壁の防御は抜けない。
衝撃は伝わってくるのか……。
密着させるのはよくないのか。次回から気を付けよう。
……7
「なんで壊せない!?」
「水晶ってのは――固いんだよ」
それに、魔力で武器をコーティングしていない。
つまるところ、破壊力が足りないんだ。これは言わないでいいかな。
さっきの忠告も言わないでおこう。
敵に塩は送らない主義だから、な。
……3……2……1
「……0――」
「――っ!?」
その瞬間、エドの体は九の字に折れ曲がった。そこに意識はなかった。
『晶装』で生成した全身鎧を――右手の手甲《ガントレット》を除き――エドが剣を振り上げるタイミングで消し、右拳をエドの腹に食らわせた。
水晶は固いから、かなり痛かっただろうな。
その寸前まで剣を振り続けていたんだし、体力的にもしんどかっただろう。
だからこそ、失神したんだろうけど。
『エド・ステイホウの気絶を確認! よって、勝者、ハーマル領、ライン・ルルクス!! 強い! まさに瞬殺だぁ!!』
あーー。確かに、全然時間かけてないな。ターバも同じだけど。
エドは、すでに意識を取り戻している。
回復術って、すごいんだな。
「ライン、ありがとう」
「こちらこそ」
「いや、そうじゃない」
ん? 何かしたっけか?
忠告しなかったことは、胸が若干痛まないこともない。結局しないんだけど。
「戦ってくれて、ありがとう。君ほどの腕前なら、僕を瞬殺することもできた。違うか?」
「違う。お前はオレを買い被り過ぎだな」
「そうか。今はそう、納得しよう。また、お手合わせ願おう」
「ああ」
「──『我と彼を繋げ』。これで、いつでも話せるね」
『通話』の魔法は一度繋げば、次回からは心に思いながら発動させれば、相手に繋がる。
スマホなんかよりよっぽど便利だ。
「それじゃあな」
「うん、また」
そう、気持ちよく別れたのはよかった。
そこまでは。
別れたそのすぐ後、イービス領の女生徒に囲まれてなければな!
羨ましくはないけどさ。
オレ、もしかして、一種の高みにいるのでは……?
その後、オレとターバは危なげなく勝利を掴んできた。
現在オレたちは、準決勝まで駒を進めていた。
『いよいよ大詰め、1年生部門!! ハーマル領、ライン・ルルクス! 同じく、ターバ・カイシ! ディース領、リーリエ・ユウ! 王都、ザイン・ハーバー!』
ザイン・ハーバー?
どっかで……ああ、さっき噂になってた奴か。【奇行種】なんて呼ばれてたな。
『さあ! 現在の時刻は11時40分! 決勝が終わり次第、すぐに2年生部門が始まりますので、2年生の選手はお食事を! さて、では、準決勝を始めましょう!』
オレの番か。相手は、あの奇行種とやらか。
『ライン・ルルクス! ザイン・ハーバー!』
「ライン、よろしく。僕はザイン」
「こちらこそよろしく頼む」
奇行種と呼ばれる所以がわからない限り、大きな動きは避けた方がよさそうだ。
武器は短剣。2本1セットのやつだな。
……にしても……。
イケメンだなぁ。
エメラルドグリーンの髪、同じ色の瞳、整った顔の作り。
一般観客席の女の人たちは、ザインしか眼中になさそうだ。
ぶっ飛ばすけど、ごめんね。
控室からは観戦ができない。
だが、この試合からは観客席が解放されたらしい。
ターバたちがいる。
『それでは……開始!!』
ここは、攻めに出る!
相手の手札を防御に使わせるためだ。
トランプゲームで、強いのはどんな人か。
運のいい人?
イカサマが上手な人?
違う。相手の手札を知っている人が一番強いんだ。
ほぼ確定でパリィされるだろう。
そこを読んでの動きが大事だ。勢いは軽く。
突きは右脇腹をかすった。
が、あらかじめ考えていたパターンの1つだ。当然、対策を立ててある。
左手を添え、右向きへ力を加える。
ほぼ0距離だから加速度とか遠心力が少ないのは心許ないが、吹き飛ばすことは可能だ。
身体強化で身体能力は大幅に上昇するが、見た目はまったく変化しない。
ステータス補正のようなものだ。
大幅に上昇したパワー✕変化しない体重。
「うお!」
5メートルほどしか飛ばせなかった。
が、十分だ。
『晶弾』を複数連続生成――名付けて、『晶弾・機関』!
機関は、機関銃の機関だ。
その名の通り、『晶弾』の連射。
殺傷能力をなくしていなければ、もう少しスピードが出ただろうが、しょうがない。
右手を突き出し、ターゲッティング。
手の先から、無数の『晶弾』が発射される――
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