戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

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第三章 ~戦闘狂の水晶使い~

第91話  クラーク村②

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「ところでリアナス、なんの用なのですか? 盗み聞きはお行儀が悪いですよ?」
「あ、はい。お風呂はいかがかと思い…………」
「今の時間は子供たちが入るのでは?」
「ええ、ですが、子供たちの希望でして……」
「そうですか。ルルクス様、どうされますか?」

 えーーと。今の時間はあの騒がしい子供たちがいる。
 あとで入るのも面倒。

 しかも、オレにはこれ――聖火の指輪リングオブクリーンフレイムがある。

「ああ、オレにはこの指輪がある。こんな風に。――『起動』」

 ちなみに、「起動」と口に出す必要はまったくない。演出だ。

 それに合わせ、オレの体を炎が包む。
 そして、体に付着したあらゆる汚れを燃やし尽くした。…………多分。

 燃やされている感触はないし。
 あったら、オレが燃やされているわけだし。そもそも、オレは汚れじゃないし。

「その指輪は……一体……なんですか?」
聖火の指輪リングオブクリーンフレイムですね。この目で見るのは初めてですね…………かなり高価な魔法具です!」
「ふっふっふ…………その通り! これは体中の汚れを燃やし尽くす炎を出す魔法具だ。これさえあれば、風呂も歯磨き要らず!」

 村長の目が輝いている。…………あげないぞ? それなりに高いし。

「では、お風呂は大丈夫ですね? では、私はこれにて…………おやすみなさいませ」
「おやすみなさいませ」
「ああ、ありがとう」

 そう言うと、2人は出ていった。
 その後、オレは寝た。時間はまだ20時だったが。
 




「ライン、これ運ぶの手伝って!」
「あいあ~~い!」

 クラーク村に来て一週間が経過し、リアナスや、孤児たちとの距離はかなり縮まった。
 いや、リアナスは微妙か。
 食事はみんなと一緒に摂っている。

 そして今、リアナスにいろいろと手伝わされている。
 空き時間には、上空から森の観察。
 そして、狩りをして、その肉は孤児院の飯の種となる。

「ライン、何してんの!?」
「あーー、はいはい、今すぐ!」

 リアナスは今でも若干冷たい。……若干どころじゃないな。
 オレは雑用係とでも思われてんのか?
 だとしたら不服だ。



 荷運びが終わり、弁当を持って出かける。
 子供たちが引っ付いてくるが、振り払い、逃げるように村を出た。

 村から少し進み、門が見えなくなった辺りで空を飛ぶ。
 仮面を着用し、魔力探知と『千里眼』を起動させる。

 ここ二週間、魔物たちに大きな動きは見られなかった。
 だが、数が多いのはやはり見過ごせない。
   
「まだ滞在する必要があるな。あいつらの目的がわからない以上、こちらから下手に手を出すのは避けたい……」

 理由がわからないと、また同じことが起きる可能性がある。
 いや、今度は速攻で村を攻撃される可能性がある。

 そうなれば、知り合い全員お陀仏という、夢見の悪い結果になる。

 近衛騎士はいるが、隊長級が出て来たら瞬殺だ。ミスリル程度の実力しかない。

「それに、連合だけじゃなく、ここいら周辺に生息するという、人喰い魔物もついでに討伐して、と……」

 孤児が生まれる原因となる、人喰いの魔物がこの森に生息しているらしい。
 すでに、複数の村が壊滅に追い込まれている。
 その副産物があの孤児たちだ。

 見た目は、大柄。
 狙う対象は大人のみ。

 情報はそれのみ。

 最悪のパターンは、連合とその人喰い魔物が同時に村を襲うこと。
 片方でも、村の騎士や冒険者パーティーに任せることはできない。

「さて、そろそろ帰るか……」

 今日も異常がないことを確認し、村に帰る。
 ついでにバモを見つけ、仕留めて帰った。帰ったら速攻解体だ。



 村に帰り、バモを解体し、弁当箱を洗う。
 そして、夕飯の準備を手伝い(料理をしたわけではない)、寝る。

 ここ一週間、リアナス含む孤児たちの要望で、男児たちと風呂に入っている。
 指輪があるから必要ないのに。

「ほれお前たち、さっさと風呂入るぞ!」
「「はーーい」」
「……お前たちは違うだろ。リアナスに入れてもらえ」

 なんで女の子たちも返事したんだ? まったく。
 子供たちを風呂に入れ、今度こそ寝る。





 そして翌朝。

 朝食の片づけを手伝っている最中に、騎士がやってきた。

「ごめんください」
「はい」

 洗濯のため外に出ていたリアナスが対応した。

 つまり、食事の後片付けはオレ一人でやっている。
 オレは孤児院の職員じゃないっての!
 ……まあ、人手不足ならしょうがないか。

「帰ったら国に申請して、人手不足を解消してやる! ついでにその魔物も討伐してやる!」

 オレは決意を固めた。

「ライン! お客!」

 リアナスに呼ばれたが、オレは今皿洗い中だ。

「ああ、これが終わったら――」
「――今すぐ!」
「……へ~~い……」

 頭が上がらねぇぜ……。
 逆らったら追い出されそうだし。村長に拾われるだろうケド。



「はいはい、どちら様で……?」

 皿洗いを放り出して出る。

「ルルクス様、おはようございます」

 そこにいたのは、この村の騎士、シーヨーだった。

「ああ、なんのようだ?」
「実は、稽古をつけていただきたく…………」
「ああ、わかった。ただし、今、皿洗いが残っているから、それが終わるまで待っていてくれ」

 シーヨーは礼儀正しく、強さを重んじる性格だ。そして真面目。 

 毎日、自主練は欠かしていない。
 素振りや筋トレ。オリハルコン級も――才能があれば――夢じゃない。



 皿洗いを終わらせ、リアナスに稽古の旨を伝える。

「なら、昼ごはんはここで食べるのね?」
「ああ」

 それだけ済ませると、村の広場に行く。

「なんで広場なんだ?」
「村の方たちも見学したいって言うので、村長に頼んで広場を使わせてもらいます。許可はすでに取ってあります」
「そうか。なら、問題はない」

 あまり大きな技は使わない方がいいかな。
 本気で戦おうか。手加減しようか。
 …………よし! 攻撃を全部流してしまおう。そう、手加減する方向で!

「一瞬で終わってしまっても構いません。なので……」
「あ、ああ、わかった」

 ……頭の中でも読まれたか!?



 広場に到着し、向かい合う。
 偽装の一環として、オリハルコンは剣にして腰に差している。
 剣で戦うしかないな。

 剣を抜き放ち、鞘は脇に置く。

 シーヨーも武器は剣だ。
 向こうもオリハルコン製。

 ま、勝つのはオレだ。

「このコインが落ちたら開始でいかがでしょう?」
「ああ」

 半銅貨だ。
 まあ、銀貨とか金貨は使えないわな。
 戦いの最中にどこか行ってしまうかもしれないしな。



 シーヨーがコインを弾き、コインが地面に落ちる。
 その瞬間、覚醒し、ぶつかる。

 ぶつかった場所は、シーヨーの立っていた場所から数歩の地点。
 スタートダッシュの時点でシーヨーは劣っていた。

 だが、シーヨーの構えは受けの型。だから、これでよかった。

「――『重撃』!」

 受けの型だとわかったから、『重撃』で吹き飛ばす。
 構えていたが、その体勢のまま吹き飛ばす。

「くっ!」
「――『剛撃』!」

 吹き飛ばしによって体勢が崩れていたから、拳でシーヨーの胸目掛けて(シーヨーは男だから問題ない)『剛撃』を放つ。

「がふっ!」

 『剛撃』の効果は単純シンプルで、それは威力の増加。
 ただの拳でも、その威力はかなりのものだ。

 シーヨーはボールのように地面をバウンドしながら転がっていく。
 そこに追いつき、顔を掴み、地面に叩きつける。



 シーヨーは気を失っていた。

「オレの勝ちだな」

 頬を軽く叩き、目を覚まさせる。

「ん……ごほっがほっ!」

 起きた瞬間、苦しそうにせき込む。

「この村に治癒術師は?」
「いませんよ。この程度であれば、放っておけば数時間で治りますよ。手加減していただき、ありがとうございました」
「ああ、だが、これで稽古になったか?」

 瞬殺してしまったからなぁ……。

「……いえ、申し訳ありませんが…………」
「はっはっは……そうだろうな。お詫びに、この村にいる間、稽古を付けてやる。時間が合えば、だがな」
「ありがとうございます!!」




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