戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

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第三章 ~戦闘狂の水晶使い~

第108話  鎌鼬

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 翌朝
 この日は嬉しいニュースが入った。

 朝起きたばかりのオレのもとへ、『通話トーク』が入った。

『――どうだった!?』
『……成功です!』

 成功。
 この言葉が表すのは、人斬りに関する情報を入手できた、ということだ。

『そして、犠牲者は0です! 数人は重傷を負いましたが、すでに回復術師により、治療済みです。目覚めるのも時間の問題かと』
『そうか! なら、今夜はオレ1人で出るとしよう』
『……1人で、ですか?』

 こいつの言いたいことはわかる。
 逆の立場でもオレは同じ不安を抱くだろう。

『1人の方が動きやすいんだ』
『そういうことでしたら……ですが、何かあれば必ず合図を送ってください』
『ああ』

 その後、綿密な打ち合わせを済ませ、『通話トーク』を切る。
 相手の騎士は、騎士団長にも一目置かれている策士だそう。だから『通話トーク』の受け取り係なんだろうな。
 
「さて、今日も夜までこれで過ごすか」

 そのとき、

 ぐぅぅ……

 と腹の虫が鳴いた。

「そういや、朝飯がまだだったな」

 時計を見ると、時刻はすでに朝の8時。
 起きたのは7時前だったと思うんだが……。1時間も打ち合わせをしていたのか?

 1階に降り、朝ごはんを食べる。
 夜ごはんは少なめにするから、昼はたっぷり食べないとな。
 


 そして宣言通りに昼ご飯をたらふく食べ、就寝。
 真昼間で、5時間前に寝覚めたということもあり、なかなか寝付けなかった。
 しかし今度は、寝付けたと思ったら、眠りが浅いし短かった。
 目覚めたのは午後4時だ。

 まあ、ちょうどいい時間か。





 その頃、とある場所。
 そこにいる魔物連合盟主に、側近のボロボロマントが質問を投げかけた。

『あの……盟主様』
「なんだ?」
『……この頃、鎌鼬かまいたちの姿が見えないのですが……』

 【六道】と名付けられた魔物たちは外に出ることを禁じられている。
 この場所もそこそこ広いとはいえ、1日も姿を合わさないなんてことはない。
 にも関わらず、鎌鼬《かまいたち》はここ数日、姿を眩ませていた。

「ああ、ちょっと実験をな。大丈夫だ、心配はいらない」
『ならいいのですが……』
「さてと、我らもやることをやろうではないか」
『は!』

 こうして、魔物連合は着々と、人類を滅ぼす計画を進めていた。





 そして再び、都市ライサン。
 時刻はすでに18時を経過し、辺りは夕闇に包まれつつあった。

「【水晶使い】様、くれぐれもお気を付けください。この魔法具を使用すれば、援軍が向かいます」
 
 見回り前に騎士団駐屯地に寄り、騎士から魔法具を預かった。
 これを投げれば……早い話、信号が上がる。
 二重の構えとして、花火と警報の信号だ。

「ああ、勝機が見込めなかった場合、撤退しつつ、援軍を頼るとする」
「では、お気を付けて」
「ああ」

 同伴は断った。
 隊長級ともなれば、一介の騎士や冒険者では相手にならないからな。
 騎士隊長や【放浪者】、騎士団長、副団長じゃないと。



 念の為、敵に関する情報を整理しよう。
 敵の姿は不明。と言うのも、外套を被っているらしい。
 武器はおそらく、爪。犠牲者の傷口はスッパリと綺麗に斬り裂かれていた。
 突然現れ、突然消える。

 正直、大した情報はない。ないよりマシではあるか。

 オレは見回りを開始した。
 昨日見回り班が遭遇したのは、商店街近辺。だが、人斬りは神出鬼没。
 
 オレは魔力探知と『透視』を発動させる。
 これさえあれば、大抵の魔物は発見できる。
 そして覚醒状態にしておく。

 正直、今回の犯人――人斬りは、魔物連合第十隊隊長ではないかと睨んでいる。
 というのも、その隊長は人狼。人狼は暗殺に優れた魔物。
 おまけに、人狼は鼻が利く。標的を即座に発見できるだろう。

 念には念を入れ、『晶装・剣』を3本、背後に待機させておこう。見た目も重視だ。
 これで、背後からの奇襲は防げるはずだ。
 維持魔力はかかるが、微々たるものだ。





 2時間ほど歩いた。そのとき、

「雨か……」

 雨が降り出した。
 日はすでに落ちており、辺りは真っ暗だ。

 だが、オレには真昼の如く見える。
 この仮面の常時発動《バッシブ》効果のおかげでな。

 雨足はどんどん激しくなってきた。
 傘なんか持っていないからな。びしょ濡れだ。
 服に水が染み込むことはない。靴は濡れるが。

 このコートも、その下の服もズボンも魔法的効果により、完全な撥水性を持っている。
 靴は……丈夫だが、撥水性はない。ある程度の撥水性はあるんだが、水たまりもあるし。

 最初は水たまりも避けていたが、雨で濡れてくると、もういいやとなった。
 幸い、雨水をたっぷり吸っても重いとは感じない。……覚醒のせいか?

 視界も、仮面を着けているから問題なし。
 そろそろ出てきてもおかしくない頃合いか……。



 そしてしばらく進み、住宅街の一角に差し掛かった。
 雨のせいで、足音を捉えることが難しい。そのため、時々後ろを振り返らないといけない。

 それに、ここは住宅街。
 脇道や物陰が溢れており、感覚を研ぎ澄ませる必要がある。
 いつ奇襲を受けてもおかしくない。

 敵は急所を的確に狙ってくる。
 胸はオリハルコン製の胸鎧ブレスプレートがある。胸鎧ブレスプレートにオリハルコンを回す余裕のある人はそうそういない。
 余裕があれば、少しでも攻撃方法を増やすため、武器に回す人が多い。
 オレは両方実現させている。

 その時――後ろに気配を感じた。
 だが、振り返っても何もいない……。

 気のせい……と思い、首をもとに戻す。

 ……気のせい? そんなわけないよな。

 オレは走り出し、再び振り返った。
 そのとき、目の前すれすれを何かが横切った。

「くっ……!」

 そこには外套を纏った何かがいた。
 腰まで届く長い袖。下の方もギリギリ外套に隠れていて見えない。

「……ようやくおでましか」
『その仮面……その服……【水晶使い】か』
「ああ。で? お前は?」
『……さぁな』

 騎士道や武士道精神は持ち合わせてはいない相手か。面倒だな。
 隊長級ともなれば、ちゃんと名乗ってくれ……人狼は名乗らなかったな。

「素顔を見せたらどうだ?」
『……剥ぎ取ればいいだろう?』
「……お前は『人』か魔物か?」
『……魔物に決まっているだろう。はぁ……――』

 次の瞬間、人斬りはこちらに背中を向けた。
 
 ひゅお……

 ……風? 人斬りの方から吹いてくる。
 魔力を帯びている。魔法か。

『――『縦風デミグラビティ』』 
  
 その瞬間、上から凄まじい風が吹き下りてきた。
 正直、立っているのもやっとだ。

「――『晶装・剣』!」

 背中に待機させていた『晶装・剣』は『縦風デミグラビティ』の範囲外にあるようだ。
 この魔法の範囲はオレを中心に半径1メートル弱ほどだ。
 おまけに人斬りは魔法操作範囲内にいる。

 水晶の剣は真っすぐ、人斬りを捉えている。
 人斬りは何もせず突っ立っているだけだ。そこに3本の水晶の剣が今にも当たりそうになったとき――3本とも真っ二つにされた。

「!?」

 魔法の発動は感じられなかった。両腕が一瞬、ぶれて見えた。叩き折ったのか?
 だが、その剣は魔力由来だ。

 『晶弾・剣』は『晶弾』に変化し、人斬りに襲い掛かる。

『――『台風目ストームズアイ』』

 人斬りを中心に風が発生し、『晶弾』がすべて弾き飛ばされる。
 人斬りは落ち着き払ったようすで、再び魔法を唱えた。
 
『――『鎌鼬かまいたち』』

 風の斬撃が迫る。

「――『晶壁』!」
 
 だが、まるで何もなかったかのように、『晶壁』をすり抜けてきた。
 ――いや、すり抜けたかのように見えた。

 その魔法は『晶壁』を綺麗に切り裂いたのだ。
 
 ……やばい。何か対処法は……『晶壁』が破られたんだ。他の魔法も優に突破されるだろう。
 風……風……!

 真上に『晶盾しょうじゅん』を出し、一瞬、『縦風デミグラビティ』を遮る。オレはその隙に脱出した。

 『晶盾』は地面に向け、勢いよく落ちた。その途中で『鎌鼬かまいたち』を食らい、真っ二つに切り裂かれた。
 住宅すら切り裂くのではないかと不安になったが、オレの立っていた場所のすぐ後ろで魔法は消滅した。

 こいつは間違いなくやばい。



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