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最終章 ~最強の更に先へ~
第132話 【水晶使い】ラインVS盟主
しおりを挟む「お前の正体は、神。……違うか?」
「半分当たり、半分外れとでも言っておこ――」
「――神の意志、残留思念」
ぴくっと、盟主の眉が動いた。……図星か。
駿から、神殺しの話は聞いていたが……まさか、こんなことがあり得るとは……。
シドーから聞いた話じゃ、神は【魂】の神器の所持者。
その器の能力に、明確な意志を残すことができるものがあるかもしれない。
しかし、神は死んだ。それは紛れもない事実だ。
死んでも能力は残るのか……? わからない。
いや、死んでいない可能性もまた、ある。前世で読んだ本のボスキャラと同じように、念として生きながらえていたかもしれない。
例え残留思念であっても、神本人であっても、どの仮説も当てはまる。厄介な。
「まあ、いい。お前がシドーと関わりがあるのは確かだ」
「シドー……寺島……駿だったか?」
声が出そうになるのを必死に抑える。なぜならその名は、オレのような転生者でシドーと接触した者のみ。
それで言えば、オレの他に三賢者しか……いや、違う!
シドーから聞いた神殺しの話。
神はシドーを寺島駿、と認識していたらしい。
シドー=寺島駿。駿の話から、これを知っているのはオレ、三賢者、神。この5人。
オレはともかく。三賢者は死亡が確認されている。遺体は丁寧に、そして厳重に埋葬された。
つまり、消去法でこいつは神……の可能性が高い。ほぼ確定だ。
神の残留思念にしては、思念が多い。残留思念ってのは大抵、1つや2つの欲求が残った状態だ。
だが、シドー=寺島駿。これを認識している。ただの残留思念にそれが可能なのか?
「我は残留思念とも言えるし、神本人とも言える」
思考が渦となって脳内を抉る。情報量がオレの情報処理能力を大幅に上回っているんだ。
熱暴走でも起こしそう……いや、一般人なら熱暴走で今頃寝込んでいるかな。
多分、【知】のせいで余計な情報まで入ってきている。しかもオレの意識の外で。
「どうした? まだ器は覚醒しない……叡智の読み込み中か?」
「さあな」
自分の状況がわかっていてもいなくても、答えるはずがないだろう。
まあ、わかっていない状況なんだけどさ。答えようにも答えられない状況ですぅ~~~。誰に言ってんだ、オレ?
「その様子だと、まだ目覚めるまでには至っていないようだな。どれ、我が力を貸そう……」
盟主がまた剣を構え、突進してくる。
剣を振り下ろしてくる。それを半身で躱し、拳を盟主の腹に入れる。『重撃』も入れてある。
だが、盟主は壁のようにまるで吹き飛ばなかった。
「な……!」
魔法が打ち消された。
つまり、オレが放ったのはただの拳。
「――『台風目』」
その瞬間、盟主を中心に、風が……って、鎌鼬の魔法じゃねぇか!
まずいな……鎌鼬は風魔法だけだったからよかったけど、それクラスの魔法が全属性で、と考えたら……。
とんでもないな。そりゃあ、魔物連合の盟主やってるわけだ。味方だったら、尚良しだったのに。
「見覚えがあるだろう? これに苦戦している様は見ものだったぞ。――『竜巻槍』」
盟主の指先から、細い竜巻が伸びた。鎌鼬のパクリじゃん。
――ズグン
「――ッ!」
一際大きい頭痛の波がオレを襲った。一瞬の痛みだったけど……。脳が破裂するかと思った。
「はぁ! ――『炎斬』」
オレの右腕目掛け、一字状に炎が迫る。
周囲に漏れ出る熱もかなり熱い。
駿が使っていた。『晶壁』が真っ二つにされたが、こいつが相手なら……
「――『晶壁』」
……やっぱりか。
こいつの『炎斬』に、オレの『晶壁』を突破する火力はない。
にしても、やはり厄介だ。
駿と1年ほど、あの謎空間で修業したかいがある。
レベル10をクリアしたあとにレベル7に挑んでいるようなものだ。気持ちは楽だ。
厄介なのは、魔法干渉だ。
魔法を打ち消される。手数で押し込むか、干渉する隙も無いほどの練度で魔法を放つか。
いや、それほどの練度はできない。
オレは【魔】の器の所持者じゃないし、敵が【緻密な魔力操作】を持っている以上、排除こそされないだろうが、ぐにゃぐにゃになるだろうな。
「お前、その力がありながら近接戦闘なのか?」
再び剣を構えて襲ってきた盟主に向かって、気になった疑問を投げかける。
疑問が頭に浮かぶ度に、頭の痛みが増すから、すぐに答えを得ないと。【思考加速】で体感時間がただでさえ長いんだ。
「言ったはずだ。加減してやると!」
なんか腹立つわ。大して強くないのに。
近接戦闘において、オレに分がある。魔法もあまり強くない。駿を基準に使っているのがおかしいのはわかってる。
今、駿と戦っても、紙のようにオレの防御は破られるだろう。
頂を見ただけで知った気になっているのはわかっている。
でも、目の前の壁は乗り来られる壁だ。比べて何が悪い。
器の能力があと1つ目覚めれば、この頭痛は治まり、オレは終着点を見る。
問題は、その1つをどうやって獲得するかだ。
ゲームだと、スキルポイントを一定数振り分けたときに獲得する。もしくは、クエスト報酬でのアンロックだな。
すべてにおいて共通なのは、条件のクリアだ。
その条件がなんなのか、が重要だ。
駿は、前の器の持ち主――魔王が死に際に、神器に直談判し、強制解放したらしいが。
オレの場合、【知】のわりに、条件がわからない。
仮説だが、【思考加速】は戦闘という酷な環境での極度の集中力を繰り返したこと。
【理解】は、相手を理解しようとする観察眼。
【感覚強化】は、相手の攻撃を理解しようとする感覚かな?
いずれも、熟練度の積み重ねとみていいか。
どれも、オレが無意識のうちに意識していたことだ。……と、いうことは。
1つの可能性が見えた。残りの能力は――【冷静】。
名称はともかく、効果はこんなものだろう。感情の起伏を強制的に一定に保つ、とかな。
感情的になるのを防ぐ効果があるとみていいか。
問題があるとすれば、感情的になる機会が少なかったこと。
精々、リーインが死んだときぐらいか? 思い返せば、今でも怒りが軽く湧き上がってくる。
ミル……は目の前にいるとして。ゴースたちが死んだときは、死んだという実感が湧かないほどひどい遺体だったからな。
感情的になるような経験が少ない。
オレは【放浪者】として、あまり人と関わらなかった。
「どうすればお前は……お前の器は目覚める?」
「仮説では……お前には無理だ」
「ふむ……となると、アレを使うか」
そう呟くと、盟主はその場で目を閉じ、オレを意識の外へ追いやり、何かに集中し始めた。
オレが攻撃を仕掛けようとすると、目を開けた。
もう終わりか。速いな。
特段、何も変わった様子はない。
「――『遠視鏡』」
盟主の前に、1枚の鏡が現れた。
その中に映る景色……どこか、見覚えが……。
村全体がいい緑色に染まって……。
「――!」
「そうだ、お前の故郷だ。いつか、お前が話したよな?」
そう、映し出された景色はオレの故郷だった。
長い間帰っていなかった。帰ったら未練が生まれて、死ぬ気で戦えないから……。
こいつの目的はオレの戦意を削ぐことか?
故郷に帰りはしなかったが、故郷のことはいつも考えていた。だとしたら、その目論見は失敗だ。
鏡の中には、冒険者たちや近衛騎士もいた。
『岩壁の盾』。人型スライムを討伐したっけな。あれは、今思い返すと、かなりやばかった。
近衛騎士ラーファー。今じゃ、オレが命令できてしまう。だが、身体強化を教えてくれた恩師だ。
父さん、クロウ。母さん、クルリア。兄さん、ヤハは村にはいないのかな。
「未練が生まれたか?」
その一言で、オレは現実に引き戻された。いつの間にか、鏡の映す光景に入り込んでしまっていたようだ。
情けないな……。
……もう、十分だ。
オレは覚悟を決め、オリハルコンを刀に変え、居合の構えを取った。そして
――抜刀
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