優雅にざまぁ、ごめんあそばせ

おてんば松尾

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うちの夫がやらかしたので、侯爵邸を売り飛ばします

1うちの夫がやらかしたので、侯爵邸を売り飛ばします

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侯爵家の屋敷から見える、王都の空は高く澄み渡り、日が沈むとともに紫とオレンジのグラデーションが広がっていく。
ネイル侯爵家は、建国から続く七柱に数えられる最上級貴族家のひとつだった。
私、ルビー・ネイルは侯爵家を継ぎ、子爵家の次男であるライアンと結婚した。

もうすぐ結婚三周年を迎えようとしていた。
政略結婚ではあったが、ライアンとは誰もが羨むほど仲睦まじい夫婦だった。
彼の腕の中で、私は心からの安らぎを感じ、互いに信頼し合うことの幸せを実感していた。

秋風が庭の紅葉を揺らす中、彼の優しい声が屋敷に響き渡る。

「ルビー、愛しているよ。今日も君は綺麗だ」

彼がそう言って私の手を取り、微笑む姿が日常の光景となっていた。

「私も愛しているわ、ライアン」



艶やかな黒髪にゆるく流した前髪。
どこか気怠げで、それでいてどこまでも澄んだ金色の瞳。
夜会に現れればいつも令嬢たちの視線を独占した。
会場内では、あの方の隣に立てるのが羨ましいという声が聞こえる。

三年前、王家主催の舞踏会で私はライアンに見初められた。
私のことなど視界にすら入らないと思っていたのにその微笑みは、間違いなく私に向けられていた。

私は恋に堕ちた。

まさか、まさかと思っていたら、数日後ライアンとの婚約の話が私のもとに届いた。
嬉しくて、信じられなくて、気がついたら鏡の前で何度も踊っていた。
あの瞬間の私は人生でいちばん幸せだったと思う。



「ルビー、今夜少し話があるんだ。大切な相談なんだけれど時間はあるかな?」

昼食のとき、ライアンにそう告げられた。

「そんなにかしこまって……ちょっと緊張するわ」

私は微笑んで、彼の優しい瞳を見返す。

「そうだね……夜になったらゆっくり話すよ」

彼は私の頬にキスをして食堂を出て行った。

その夜。

ライアンが口にした言葉で、私の幸せな世界は音もなく崩れ去った。

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